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対・切裂骸骨王

 五日後には山麓にある樹海のような森に来ていた。

 ここに発生した切裂骸骨王(ダズキングボーン)は獣やモンスターの骨に魔素が集まって動き出したモンスターでゾンビ系と言える。

 戦って負傷した兵の話では五メートルほどの四足歩行、腕が六本、高い魔力を持つ者を襲って食らうことで更に強くなる、そうだ。


「骨、か。うむ、消し炭になるまで燃やしてやればよかろうか?」

 俺は名案とばかりに笑って見せたのだが、それを聞いた兵達はドン引きで恐らく疫病川獺のときの俺の戦い方が規格外だったのだろう。

 ……安心しろ、規格外なのは知っている。


 森の手前にある村に着くと、

「では、高い魔力に寄ってくるのであれば私一人で行こう。皆が来ると巻き込みそうでな。……そのような顔をするな。何かあらば飛んで逃げることも出来る」

 ……というのは建前だ。実験的に出力を上げて魔法を放ったことはある。どの程度の魔力でどの程度の威力になるのか、自身の力がどこまでのものか、知っておきたかった。


-----


 森に入ると高い木々と腰程までの藪だらけで鬱蒼としていて足元も植物の露か泥濘んでいるところもある。

 羽虫のようなものも飛んでいるし、鶏かモンスターかわからないが、妙な鳴き声もずーっとしている。


「早く出てこないかな……」

 飛びかかってきた一メートルほどのトカゲのような生物を裏拳で殴り、飛んできた数十センチのカブトムシのようなものを蹴って、たぶん死んでるので片っ端から亜空間倉庫に投げ込んでいく。そもそも亜空間倉庫には生物は入らないように創造つくった魔法だから入らなければトドメを刺してから放り込む。

 こうしていれば魔力に気がついた切裂骸骨王とやらは寄ってくるはずだ。


 ……来る、はずだ。

 数時間が過ぎる。適当に間を開けて安否確認の魔法弾はあげているが一向に切裂骸骨王(目標)は現れない。

 かれこれ数十頭のモンスターを殴り殺したし、その中には三メートルほどの青い体毛をした四腕のクマもいる。

 毛皮がモフモフしていて気に入った。冬の掛け布団用に少しもらって帰ろう。


 腹が減ってきてアゼリアが作ってくれたお弁当の入った袋を取り出す。袋を覗くとハンドタオルに水の入った水筒と紅茶の入った水筒まで一緒に入っている。

 何が入っているだろうと楽しみに開けるとサンドイッチに骨付きのチキン、野菜スティックとブドウのような実もある。

「……ふむ。さすがアゼリアだな」

 一口食べただけでアゼリアの腕前がわかる。味付けは少し濃いめであるが栄養バランスがよく、いつの間に憶えたのかサンドイッチはカツサンドでボリュームもある。


 何より美味しい。

 と、視線を感じて目をやると狼か何かの子供がこちらを見ている。

 視線の先は俺ではなく、弁当。腹でも空かせているのかとカツサンドの肉だけを少しちぎりポイッと投げる。


 小狼は落ちた先の匂いを嗅いで、俺と肉を交互に見ながら少しずつ寄ってくる。そして肉を咥えると速攻逃げていった。

 さすが野生動物だ。

 そして食べ終わるとまた徘徊を初めて襲ってくる小型や中型のモンスターを始末していくと森の木をへし折りながら何かが寄ってくる。


 木の幹を掴むその手が見える。白い、黒い、茶色い、骨だけの手と指。

 そして気の間から姿を見せたのは異形のモンスターだった。


 頭部はクマか何か肉食性の牙を持つ、胴や腕、脚は明らかに複数の生物の骨が複雑に絡み合い構成している。

 六腕のうち一対は手首から手が三本に別れて生えていて、四足の脚はまるで機械のように歩いてくる。


創造・球障壁メイク・シールドボール

 疫病川獺と同じようにシールドで捕獲すると俺はニヤリと笑って、障壁内に糸状魔力を構成して、

制御・爆炎連鎖コントロール・チェインエクスプロード!」

 障壁内で構成した魔力の糸が端から連続した爆発が起きる。制御ミスかバランスが悪いのか、球体の障壁が歪んでまるで遊んでいるヨーヨーのようになる。


 爆発が収まり、中の煙が晴れてくる。そして見えたのは再生していく骨だった。バラバラになっていたのに砕けた骨も元の形に戻っていく。

 しかし元には戻らず、異形は新しい異形になり、違う形となって四腕四足の骨のモンスターとなった。

「おいおい……制御・紅炎(コントロール・フレア)!」

 次は球体の中全体に魔力を込めて焼き払う。障壁内が炎で真っ赤に染まり、骨を焼き尽くすほどに熱が暴れる。


「どーだ?」

 黒い煙が障壁から吹き出て障壁の中が見える。

「……しつこい」

 灰になったものは再生しないが燃え残りがまた再生する。

 今回は残骸が少ないおかげか小さな異形が出来上がる。


 二足歩行の犬程度の大きさ。

 再生力の強さにイラッとする。そして再度魔力を練り上げて、今度はピンポイントで魔力の狙いを定める。

制御・煉獄コントロール・ヘルファイア

 青い炎が骨を包み、焼き尽くす。障壁内で青い炎が白い骨を炭化させていく。

 そして消し炭が動かなくなるまで焼いてやった。

「ふぅ」

 やり遂げた感と試したエクスプロードやデスファイアの威力も楽しめた。

 そして障壁を解くと落ちてきた灰の中から青白い水晶のようなものが出てきた。

「まぁ、いいか?もらっておくか」

 わからないが亜空間倉庫に押し込んで森から飛び立とうとしたときにどこからか声が聞こえた。


 声はこだましてどの方向かはわからない。

「誰かいるのか!?」

 破裂音と破壊音がした。周りを見渡す。

 木々の隙間から何かが飛び散るのが遠くに見えた。

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