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説明会だよ♪

 老人はカルトバウスと名乗った。

 カルトバウスの話を聞きまとめると国の王が死にそうだと。

 そして太子もなく近親者もいない王が決めたことは〝異世界から召喚した者を王〟とするとなったらしい。


 その理由としてあるものが、


 まず、この国の情勢があまりよくない。

 近隣国のいくつかは聖魔光王国を完全に敵視し領土に攻め来たり、王や重臣らに刺客を差し向けてくることもある。

 とくに皇帝自らを天聖人君と号する神蒼帝国は聖魔光王国を目の敵にしている。


 異世界から召喚されたものは特殊な力を持つらしく、その力と何より異世界の知識という武器も期待されるから。特殊な力というのはおそらくチートスキルみたいなものなのだろう。


 そしてもう1つあったのだがこの時点では俺には伝えられなかった。


 そしてこの日から俺には教師がつき、この国や近隣国の情勢、魔法について学ぶことになった。


-----


 ここはアンハイルトンにあるフェドナド大陸北東部に位置する聖魔光王国。

 総人口150万程度の王国で人民7割が魔妖人と呼ばれる種属であり、残りをエルフや獣人、ドワーフなどの亜人が占める。そしてこの国には人間は1人しかいない、俺だ。


 北部は農耕と畜産が豊かで小麦や乳牛、肉牛など素朴な田舎暮らしが満喫できる肥沃な地帯がある。


 東部は海に面しており、海産物が豊富に取れて国内に出荷される。他国からの侵略に備えて軍港もあるが建国から今まで海からの攻撃は受けたことがない。


 南部は森林が多く、果実などが多く栽培されワインやジャムなどの一流品の生産地帯もある。

 さらに南に行けば大山脈があり、鉱石や貴石がとれる。


 最大の難点は西部にある。神蒼帝国と面しており、諍いが絶えない。数月に一度、多ければ毎月のように神蒼帝国が軍を送り込み、国境を危ぶませる。おかげで大型の砦を多く配され、聖魔光王国の軍隊の半数近くが西部の前線基地へと送られている。


 一応、国内での自給自足は事足りているらしいが、貿易による収入や国内で採れない資源の輸入ができればより高い技術や文化を創れると思う。


 国境の向こうを覗けば、


 北にはフォルドゲイタス帝国があり、ここは獣人の国とも呼ばれ人口80万の8割近くが獣人だそうだ。

 聖魔光王国とは冷戦関係で攻め込みも攻め込まれもしないが、国交もなく貿易もない。この背景にはフォルドゲイタス帝国と神蒼帝国との関係がある。


 世界の人口比率として人間6獣人1.5エルフやドワーフ1龍人0.5魔妖人0.2その他0.8と圧倒的に人間が多い。

 大国のほとんどに人間が多く、獣人国やエルフ公国、龍人の天里などの種属固有の国でない限り人間が大勢を占めている。


 結果として神蒼帝国と関係が悪くなれば最悪戦争により国を滅ぼされ、人民全てが死ぬか奴隷とされる可能性がある。従って表立っては国交を持つことはかなり難しい。


 南には白峰連山と呼ばれる6000m級の山脈があり、その向こうにあるベステラ公国は中立国らしい。

 国内の8割以上が森林で、争わず競わず陽光と大地と共に生き、自然と調和した生き方をする真生エルフと呼ばれる者たちが暮らすエルフの単一小国家である。


 西には大敵、神蒼帝国がある。

 大都市1つで小さい国ほどの軍隊と同じほどの戦力を持ち、総人口は推定2200万人を超える。

 その7割ほどが人間で国の重役もほぼ全てが人間で構成されている。

 しかも奴隷制を認める国家で奴隷は人口に含まれていない。

 兵の数による物量戦も驚異だが、最も警戒すべきは1人の男『勇者』と呼ばれる最強の人間がいる。


 その存在は半年ほど前から数回だけとは言え、勇者とその仲間だけでこちら側の陣を壊滅させ防衛に当たっていた将兵を蹴散らされている。勇者とその一団については何らかの対処が必要なことは明白だ。


 隣接する大国はこの3つで小国もいくつかあるがどれも神蒼帝国に属国化されていて言われるままにされている。


 まぁどの国も対外的な戦争以外にも国内にいるモンスターと呼ばれる魔法を使う生物の討伐もあって戦争のほとんどは神蒼帝国がどこかの国、おもに慎重派が聖魔光王国に攻め入り、国境を侵略したパターンが多いらしい。


-----


 そもそもなぜ人間は魔妖人を毛嫌いするには訳があった。ひどく単純で明解、見た目である。


 魔妖人と人間や獣人、エルフやドワーフなどと見た目に大きな差異はない。人間か亜人のどれかに似た外見を持つ。

 魔力はやや高い者が多いし、身体能力に長けた者も多い。

 だがこの程度なら然したる問題ではない。


 魔妖人には戦闘形態バトルフォルムと呼ばれる全力で戦うときの姿がある。

 あるものは腕や足などが獣や刃物、炎などに化したり、肌の色が変色したり、翼や角を生やす者がいたり、と異端な力を持つ。

 その姿が魔法を使う生物、モンスターに近いことで「魔妖人はモンスターと人間が交わった化け物で世界の異端、排除するべき存在だ」と人間が言い出した。


 人間が多いアンハイルトンではこの論が正しいとされ魔妖人は異端であり殺す者として虐げられた。

 それが数百年前である。


-----


 そして座学だけでなく、俺は魔法についても学んでいた。


「『プレート』という魔法がございます。これは己が力がわかる魔法です。他人には名前と使える属性と魔力がわかるだけですがご自身にのみ、強さを示すものが映ります」

 王城の一室で魔法を教えてくれる白衣にメガネ、金髪の女性。

 シュレリア・ファン・グリエス、彼女は王城魔導師であり、若手でありながら国内でも屈指の魔導師である。


 キラキラと灯りを反射する長い髪、整った顔立ちに翡翠色の瞳、白く細い指。どこをとっても美女と呼べる存在で、1つ欠けているところがあるとすれば存在しない双丘のみ。


「手のひらを上にして唱えるだけでございます」

 言われるままに『プレート』と唱えると手のひらから一枚の板が出てきた。


 金属っぽい輝きを持ち多彩な色を放つ枠が浮いていて、支える物もないのに枠の中央にはシュウイチと黒い文字が浮かんでいた。

 そして枠の下にはステータスらしきものがあった。

『体力A+・魔力C-・力A・精神B+・速さA-

 スキル 異世界体術・創造魔法・言語理解・好魔素体質』


「シュレリア、創造魔法と好魔素体質って何?」


 俺がプレートから目を離してシュレリアの方を見ると彼女は絶句していた。視線は俺のプレートを見ていて、俺の質問は聞こえてなかったようだ。


「シュレリア?」

 もう一度呼びかけると彼女はようやく返事をして、

「え、も、もう一度お願いいたします」

「好魔素体質と創造魔法って何?」

「こ、好魔素体質とは空気や大地に存在する魔法の源、魔素に好かれる体質をお持ちだと言うことです」


 彼女の説明によるとこの世界の魔法は詠唱により魔素に呼びかけてイメージを伝えて自身の魔力をエネルギーに魔法を放つものらしい。

 好魔素体質の場合、魔素が短い言葉どころか頭の中にあるイメージまで読み取ってくれる。詠唱を短くする簡易詠唱やキー詠唱よりも更に早い無詠唱で魔法を放てる。魔導師にとってはあこがる夢の体質であるそうだ。


 そして創造魔法とは九代前の王が使えた伝説級の魔法で既存の詠唱で使う魔法ではなくイメージを伝えるとその通りの魔法が使える、複合属性の魔法や既存しない属性や形態の方を使うことができるらしい。


 これが召喚された俺に与えられた力だった。

誤字脱字がありましたらご指摘の程お願いいたします

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