side by 勇者1
俺はイライラしていた。まったく、あの騒ぎのせいで恥をさらしてダサいことになってしまった。
あれ以来姫も俺を見る目が変わり、話しかけても素っ気ない。
むかつきが止まらず、机を叩く。
「くそがぁっ!」
バァンと大きな音を立てて、それでも治まらない怒りに任せて座っていた椅子からも立ちあがると蹴飛ばした。
俺が荒れているのを知っていて、話しかける者は少なくなった。
この国に来て事情を話したときは勇者だと呼ばれてチヤホヤしていたというのに一度負けたくらいで和平とかなんなんだ?
俺は異世界から来た勇者なんだぞ?
もっと支援してあの魔王を倒させればいいものを……。
あれから俺は自身の装備も仲間の装備も新しい物が支給されない。
俺が別の椅子に座り机を指先で小突いていると部屋に入ってくる者がいる。
小柄で少しウェーブのかかった茶色の髪をした女、ティア・サンドラッグ。青い法衣と聖職者の帽子をかぶっている。聞いた話だと大教祖の子孫で最近俺の仲間になった女だ。
俺と同じくらいの年頃で姫とは仲がよいらしいので、こいつを使って姫との溝を埋めるか。
それにプレートはアンバーで俺には及ばないが回復や補助が得意で使えないヤツではなさそうだ。
「リュー様、今日は今後の予定についてと伺ったのですが……」
妙におどおどして小動物みたいにしやがって……。
ティアは居場所がないのか、俺が蹴飛ばした椅子を起こして俺から離れたところに座った。
そして俺が黙って机を指先で小突いていると部屋に仲間が集まってくる。
まず入ってきたのは屈強な体つきに黒の鎧。そして城内だというのに背中には槍を背負っている。
クリストフ・ガルドフ、プレートはゴールドでこの国に最強の王直属騎士隊の神兵を除けば最強だ。
赤褐色の肌に白い髪、紅の瞳で俺より少し歳上だが気にせずタメ口でしゃべれる間柄だ。
こいつなら神兵とも渡り合えるし、俺と組めばあの魔王にだって勝てるはずだ。
「リュー、どうするんだ?」
「何を、だよ?」
俺の向かいの椅子に座ると挑発的な笑みを浮かべやがった。
「あの魔王、どうすんだよ?」
「倒すに決まってるだろ!あいつはたぶん強化魔法が得意だ。それと日本の体術もできる。だったらティアが補助魔法で俺とクリスを強化してあいつを押さえてリックの極大魔法をぶち込めば弱るはず。そのあとは俺とクリスが攻撃すれば倒せるはずだ」
俺が体感した魔王の戦闘スタイルを伝えていると魔導師のリック・マゼンタも部屋に来た。
クリスの隣に座ると怪しげに笑うと、
「新しい魔法、仕入れてきた。リューが極大魔法憶えて欲しいっていっただろう?爆炎系のかなり強い魔導書を手に入れたからあの魔王にも効くだろう」
リックは少し細身で赤い魔導師の服を着ている。緑の髪は少し伸ばしていてヴィジアル系バンドにいそうな男だ。
若いながら『烈炎』の称号を持つ才能溢れるゴールドプレートで攻撃魔法だけで言えばこの国でも屈指、いや最強と言っていいだろう。
俺たち三人がいればあのクソ魔王も倒せるはずだ。
クリスとリックがゴールドプレート、そして俺はその上であるトライメタルプレートだ。
魔力増強、全属性適応、のチートを持つ俺が最強のトライメタルプレートなんだ、負けるはずがない。
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