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61話 旅立ち

今日は気が向いたので3話投稿します。

今 2/3

「いいよ、ただ旅するだけだからレンだけで……」


「駄目です、サナダ隊の精鋭をお連れください」


 バンと机を叩いてソーカが譲らない。

 ユキムラが旅に出ると言い出してその随伴員についてユキムラが二人で旅に出ると言い出したのだ。

 もちろん警備隊隊長であるソーカが許すわけがない。


「ほんとに各地を回りながら王都へ行こうかなーって程度だからそんな大げさな、おみやげなら買ってくるよ?」


「この街より優れたものが売ってるとは思えませんし、そういうことではないんです!」


 またもバンと叩かれる机、何の罪もないのに……


「まぁまぁソーカねーちゃんも落ち着いて。

 師匠が僕と行きたいって言ってるんだから、ぼくとね」


 さっきからこの煽りのせいで話が進んでいない。

 よっぽどレンは嬉しかったんだろう。

 そして、ソーカはよほど悔しかったんだろう。


「なら私も行きます!」


「いや、ソーカはサナダ隊の教育とかあるだろ……」


「それでしたらファルがその任に堪えます!」


 ここまで意固地になったソーカはそうそう意見を曲げてはくれない、ユキムラはやれやれと言った感じで深くため息をつく。


「わかったよ、ただしソーカ一人。それ以上は認めない」


「まったく、ソーカねーちゃんも必死なんだから」


「ぐぬぬ」


「わん!」


 足元でタロが元気に吠える。


「おお、タロももちろん一緒だよな~」


 ユキムラがタロを持ち上げてよしよししてあげる。

 タロは目を細めて気持ちよさそうにユキムラの膝の上で丸くなる。猫のようだ。

 実際にはすでに4キロを超えてきてだいぶ大きくなっている。

 出立は一週間後、それまでに引き継ぎを含め準備を終わらせるようにソーカに指示を出す。


 部屋を出ると言葉は出さないがソーカは全力のガッツポーズだ。

 もともと自分一人の同行を狙っていたのであまりにもうまく行った結果に思わず弾けた。

 キョロキョロと周囲を見渡し、コホンと咳払いをしていつも通り気高く去っていくのであった。


 ユキムラ自身の準備は殆ど終わっている。

 食事のストックや快適な旅の準備は万端だ。

 そもそもあの特製馬車があるだけで高級ホテルが移動しているようなもんだ。

 今回の旅の目的は王国内の散策と、王都での女神の復活クエストの開始だ。

 ジュナーの街の北のアイスフロントの街、南のペイトンの街、そして王都の順番でめぐるつもりだ。


 プラネテル王国は東西に広い台形に近い形をしている。

 西側は海岸線に切り立った山脈があり、北側は大山脈と呼ばれている。

 その麓には広大な大森林が広がっており、その端から少ししたところにサナダ街がある。

 ジュナーの街はそこから東へ行ったところにある。

 大陸の大体中央に位置している。

 そこから北へ行き寒冷地帯に入ってすぐにアイスフロントの街がある。

 厳しい環境ではあるが希少な鉱石を算出する大鉱山街として栄えている。

 ジュナーから南へ進み山脈の切れ目、海岸線にペイトンの街、南のフィリポネア共和国との貿易港で非常に栄えた街だ。

 大陸東側の豊かな平原地帯にこの国の王都であるプラネテルの都がある。

 大体の位置関係はそうなっている。

 ジュナーからアイスフロントは馬で5日ほど、ペイトンへは4日、王都プラネテルへは6日といったところだ。

 

「とりあえずまずはジュナーの街へと向かう、それじゃあ後は頼んだ」


 村長とガッシュに街の全権を委任して旅に出る。

 珍しくこの一週間はきちんと会議を重ねて今後の街の方向性の指標を出していたユキムラであった。

 いくらゲームのイベントのためとはいえ、こんな魔改造した街を作ったことにけじめはつけている。

 ……というわけじゃなくて、俺が考えた最高の街を自分がいない間に進めて欲しい。

 そんな程度なのは他の人は気がついていないから、黙っておいたほうがいいだろう。

 まわりは勝手にプラス方向に考えてくれているからね!

 今も村長とガッシュは自らに課せられたリーダーからの信頼に感動していたりする。

 盛大な送迎パレードに送られてユキムラたちを乗せた馬車は街を旅立つ。


「とは言っても、ジュナーまでは半日もかからないですから、ジュナーの街に寄らずに北上しますか?」


「そうだなぁ、たしかに街へ入るとたぶんレックスさんとかサイレンさんとかに引き止められるよね」


「ええ、絶対に。師匠を引き止めるためにいろんな頼み事されて断れない師匠の姿が目に浮かびます」


「よし、迂回してアイスフロントへ向かおう」


 即決である。


「一応ガッシュさんに連絡しときます、ギルド経由でジュナーへは連絡が行くようにしておきましょう」


 レンもソーカも秘書として優秀だ。

 先回りでするべきことを提案実行していってくれる。

 それゆえユキムラが研究バカになっていってしまうわけだ。

 

「それにしても、うちの街の馬車はほんとうに揺れないですが、この馬車は全くと言っていいほど揺れませんね。整備された道を外れているのにテーブルに置いた紅茶が揺れもしません」


 ソーカの言うとおりテーブルの上で湯気を立てている紅茶の水面に波紋さえも出ない。

 ユキムラ専用馬車の足回りはさらなる進化を遂げていた。

 魔道具をふんだんに使い車輪部分と車体部分の接合をほぼ分離させているのだ。

 つまり、車体が浮いているのだ。

 もちろん巨大な轍などを踏めば多少は振動は来るが、それもふんわりと軽減されて伝わる。

 ホバーボードみたいにタイヤをなくせばいいのだが、この重量でそれをやると周囲への風の排出が馬鹿にならず、走るそばから大量の土煙粉塵を巻き起こしてしまう。

 隠密性にもかけるし、何より停車時に困る。

 まっ平らな部分を探すか土煙を上げながらホバリングする、なんて事になってしまう。


「よーし、今日はこの辺で野営しよう」


 一応前方500メートルぐらいを昼間と同じように照らしながら走行することも可能だけど、付き添って走ってくれる馬のためにも休憩をしっかりと取る。キャンプっぽくてユキムラも楽しみにしている。

 

 野営に関してもさらに発展している。

 ボタン一つで半径50mくらいの簡易結界を作成して外敵の侵入を防ぐ、また結界内は極端な暑さ寒さをコントロールすることも可能だ。

 秋に入りかけた今の時期は少し肌寒いがユキムラはあえて自然のままを楽しんでいる。


「ちょっと肌寒い外で暖かい食事をいただくのも旅の醍醐味」


 ユキムラはそんなことを言っているが、これを旅といったら他の人に怒られてしまうような快適な旅が始まるのだった。

  

 ユキムラがこの世界に降り立って間もなく一年、最初よりもだいぶ鍛えられた肉体になったユキムラ、どうやら成長はしっかりとするようだ。

 美青年系主人公にありがちな細すぎると言っていい腕周りも肉がつき、一部の女性に支持される血管もバッチリだ。

 胸板も男らしく厚くなり、引き締まり高い尻、その動きのベースとなる足もカモシカのように鍛え抜かれている。

 そしてあまぁぁいマスク。

 街を歩いていても女性が口を開けて目でおってしまうほどの完璧超人になっている。


 そりゃソーカも焦るわけだ。

 

 


 

 

 

 

ああ、旅したい。


意味もなく今日は3話投稿。

次は20時

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