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340話 女神からのプレゼント

 アルテリーナは優雅に紅茶を楽しんでいた。

 女神や神の間では人の姿に変わってこの世界を楽しむことが流行っていた。


「さっき挨拶してきたわ」


「魔神ですか? あってくれたんですか?」


「なんか私達のことなんてどうでもいいみたい。ユキムラちゃん惚れられてるわよーふふふ……」


「まぁ、来たら来たで返り討ちですよ!」


「冗談はさておき、ありがとうユキムラ。

 正直、あの子は倒すしか無いと思っていたけど……

 ユキムラは想像もしないことをやるのね」


「なんか、途中からよく覚えてないんですよね……結構強くて……」


「ふふ……なるほど、そんな貴方だからあの子も変われたのね」


 アルテスは美味しそうにお茶菓子と紅茶に口をつける。


「私達がこれほど長い時間をかけて抵抗してきたことが、あんなことで解決するんだもん。 

 こっちだって、なによそれって感じでね。

 モニターしてて途中で馬鹿らしくなっちゃった。

 結構苦労したよの、それこそ最初の頃なんて私一人しか居ないし、アイツも嫌らしく攻めてきて、それに対抗するために何日も眠らずに抵抗したりとか、その間でもユキムラは好き勝手するからその穴埋めにさらに眠れない日々が続いて、解放してくれる仲間は皆脳き……あまりデスクワーク得意な人がいなかったし……やっと楽になったと思ったら魔神さん達はこっちの都合お構い無しでどんどん攻撃の手をつよめてくるし……それが、なに? 戦闘してたら熱くなったからもういいやって? はぁ!? 大体ねぇさいしょっからあんたのせいじゃないから気にするなっって言ってるのにいつまでもぐじぐじ勝手に思い込んでここまでこじらして、ただの八つ当たりの対策を私達がしなくちゃいけないの!? それをあっさり勝手にスッキリして、今回のことで私の白髪が何本増えたと思ってるのよ!」


「あ、アルテリーナさん、お団子食べます? 緑茶もありますよ」


「あら、ソーカいつの間に。やだわぁ少し熱くなっちゃった……」


「な、なんだかすみません……」


「ユキムラは悪くないから良いのよー。

 ふぅ、やっぱりソーカの和菓子は最高ね」


「ところでアルテス様、本日は……」


「ああ、ぐちをいいに来たわけじゃないんだった」


(愚痴って自覚はあったんだ……)


「今回の戦いが終わったことで、内部からの干渉はなくなったと見ていいわ。

 これで、私達が準備していた本当の世界をユキムラに見せてあげられるわ」


「……新しい世界?」


「ええ、ユキムラの知っている世界のさらに外。貴方流に言えば大型アップデートね。

 ヴェルフェリアの大地、この舞台の外に広がる未知なる新大陸の実装よ」




 魔王の島を中心に広がる死の海が、異世界との門を開いた事により穏やかな海に変わった。


 死の海によって遮られていた外界の外側には、6カ国を遥かに超える巨大な大陸が待っていた。


 世界のすべてと思われていた5国、魔王の島は巨大な世界の一部分に過ぎなかったのだ。


 さぁ、誰も知らない新しい冒険の旅が今、始まる。




 まるで映画のように新MAP実装のPVがユキムラのいる部屋の壁に映し出された。


「……これが、ユキムラにあげる、まぁ、お礼よ」


 ユキムラは握りしめた拳が震えることを抑えられなかった。

 望んでも叶うことはないと思っていた未知への挑戦……

 終わりなき世界への旅が今目の前に開かれたのだ。


「……最高です! こんなに素晴らしいプレゼント!

 燃えてきたぞー!!」


「師匠。すぐには駄目ですよ。

 やるべきことはたっぷり溜まってますからね……」


「え……レン、そこをなんとか……」


「駄目です。それに、僕達だって、一緒にいきたいんですから、その準備もしなければいけませんよ!」


 レンの目にもユキムラと同じ火がついていた。

 冒険に心を焦がす火が……



 ユキムラの旅への準備はなかなか進まなかった。

 理由は単純だ。


「ユキムラー! 今日こそ決着をつけてやる!」


「お! 来たなー! 待ってろすぐ行く!」


 周囲への影響があるために、異世界は二人のバトルステージと化していた。

 コロシアムのような作りになっており、周囲の席は一般への販売もされている。

 ゲート式魔道具の実装も相まって、世界中から観戦者が押し寄せ、周囲は常にお祭り騒ぎだ。


 週に二、三度はヴェルがやってきてユキムラに喧嘩を売りに来る。

 ユキムラはユキムラで、溜まった公務を放り出してすぐに戦いに行ってしまう。

 魔神達は魔王たちと和解して一緒に生活をしている。

 異世界のバトルステージでいろんな奴らと戦いながら楽しそうに過ごしている。


 外の世界に挑んだ冒険者も多かった。

 上陸して拠点も作ったり、少しづつ新大陸開拓は開始されているが、強大な野生の獣や魔獣のせいで遅々として進んでいなかった。

 ユキムラもヴェルも新大陸には興味津々だったが、お互いの意地をいつまでも張り合っている。


「くそ! 今日は……引いてやる! 次は勝つからな!」


「はぁはぁ……お、おととい来やがれ!」


「師匠もヴェルさんも、いい加減諦めません?

 新大陸にはいつになったら行くんですか?」


 レンは既に自身の執政を任せられる人員を育て、いつでも新たな冒険に行く準備は出来ている。

 ヴァリィやソーカもその準備はできている。

 

「い、いや……しかし、まだ白黒ついていないし……」


「新大陸の開拓でも競ったらーユキムラちゃん。

 いい加減ソーカちゃん待たせ過ぎだと思うのよねー……」


「ぬぐ……」


「い、いいだろう! 新大陸、我らが先に開拓してユキムラの仕事を無くしてやる!」


「師匠、ついでに、溜まりに溜まった仕事、ソーカねーちゃんとの式を考えると、いくら手伝っても半年はかかりますよ……」


「ぐぬぬ……」


「はーっはっは! よし、魔人共! 冒険だ冒険の旅に出るぞ!」


「はいよ、旦那!」


「諦めてしっかりお仕事しましょうねユキムラちゃん!」


 その後、ユキムラは政務に取り掛かり、4ヶ月で冒険に向けての引き継ぎを終えるのであった。




「き、緊張してきた……」


「師匠……しっかりしてください!」


「大丈夫、かっこいいわよユキムラちゃん!」


 ユキムラの前の扉が開かれる。

 大勢の人々が本日の主役を待っていた。

 主役の一人の登場に場の盛り上がりは最高潮に達する。


「おめでとー!」「おめでとうございます!!」「おめでとー!!」


 沢山の人に祝われながら、ユキムラとソーカは盛大な結婚式を執り行った。


 真っ赤なレッドカーペットの先に、純白のドレスに身を包んだ燃えるような赤い髪の女性、ソーカが待っている。

 自身も純白のタキシードを身に着けゆっくりとソーカの隣に並ぶ。


「ユキムラさん……」


「ソーカ、綺麗だよ」


 こうして、長いこと待たされていたソーカもユキムラと夫婦となる。

 


 こうして、ユキムラは新大陸へと挑む準備が整うであった。




22時に投稿いたします。


最後までお付き合いください。

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