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291話 ロマン装備

 ユキムラは教皇からの手紙が来るイベントまで何をしていたかというと、もちろん人材育成に忙しく働いていたが、それ以上にケラリス国特有のイベントラッシュをこなしていた。


・邪教徒による孤児院誘拐事件

・結婚式を救え! 失われた花嫁のヴェール

・あれれ? 子猫ちゃんはどこだ? 探せ!!


 ……etc.


 ユキムラは、『まるでどこで何をすればいいかわかっているかのように』

 次々と難事件を解決していく。

 ただでさえ天に登るほどの評判なユキムラ達の名声は益々高まることになる。

 サナダ商会もそれに合わせて大賑わいだ。

 ウーノの街を中心に周囲の村や町への交易ルートを着実に作り上げている。

 海路を利用した他の大聖堂を有する大きな町との交易も開始するめどが立っている。


「それではキーミッツさんもデリカさんも聖都にご一緒するんですね」


「はい。それだけではなく6大司教に全聖騎士も集まります」


「え?」


「それだけの価値がユキムラ殿には有るということです」


「……断ろ「よろしくお願いします!!」」


 レンに救いを求めるも、無言で、駄目ですよ。という圧力を感じる。

 こういう覚悟をしたような、してないようなところがユキムラらしいと、ソーカやヴァリィは微笑ましく思っている。

 

 結局この会見は不可避であると諦めたユキムラ。

 ヴァリィは司祭などの服を参考に白を基調とした白狼隊の装いにイメージを膨らませている。

 常識的な移動をすれば一ヶ月はかかるので会見予定の頃には少し肌寒くなっているとのことだった。

 喜んで参加させて頂くという返事を聖都へと送る。

 大聖堂と聖都の本聖堂とは魔法による連絡手段が存在する。

 招待状に関しても通信装置で送られてきた文章を、ウーノの町で文に起こして用意されたものだ。


「キーミッツ様、教会の文官の方を手配していただきありがとうございます。

 本当に助かりました!」


「おお、レン殿。どうか顔をお上げください。

 困っている者を救うのは教会の使命です。聞けば逆に様々な経験ができたと喜んでおりました」


「それはうれしいですね。これからこの街で活動をしていくので、末永くよろしくお願いします」


 ビジネスな会話もきっちりとこなすレンでありました。


 キーミッツ達が帰ると、コウとナオは専属の家庭教師でもあるバルドーから色々と改善点などの指導を受けている。レンとソーカも一緒にバルドーの指導を観察してそのノウハウを学ぼうと積極的に参加している。

 

「コウ君もナオ君も覚えがよくて教え甲斐がありますね」


 バルドー先生の言葉通り、二人はスポンジが水を吸うがごとく成長している。

 言葉遣いを始め、所作振る舞いも最初と比べると見違えるほどだ。

 さらに冒険者としても白狼隊のメンバーから直接指導を受けており、当初の予想と反して、コウが魔法適正が高く、ナオが物理適正が高いという意外な結果になっている。


「ユキムラ様、夕食の準備が整いました」


 執事姿もびしっと決まったコウがユキムラを呼びに来る。

 知性は顔に出ると申しますが、はじめにあったときの子供っぽい表情は既に過去のもの、洗練され教育された好青年が出来上がっている。


「コウ、仕事の時間終わったら様付けは止めてくれよ、普通でいいよ普通で……」


「す、すみません。最近なかなか癖が抜けなくて……」


 仕事中はバルドーの厳しい目にさらされ、たくさんの業務にあたる。

 仕事が終われば白狼隊とともに訓練をしたり、非常に忙しい日々を過ごしているが、コウ本人は非常に充実した日々を送れていて満ち足りた日々と思っている。

 それはナオも同様だ。


「でも確かに、ちゃんとしたホテルのボーイさんに呼ばれたのかと思ったよ」


 ビシっと執事姿で決めてピッと背筋を伸ばして立つコウにユキムラも感心する。


「恐縮です」


「だから、硬いってば……」


「す、すみません!」


「ハハハハハ」


 こんな二人の仲睦まじいやり取りを、柱の陰から妬ましく覗く3人の影+1。

 

「お兄様ったら、あんなに親しげに……」


「師匠は僕だけの師匠なんだ……弟弟子なんていらないんだ……」


「最近私との時間が取れないのに、あんなにイチャイチャと……でも、ユキムラさんと執事の美男子が……ハッ! いけないいけない」


「あー、捗るわー!! これは捗るわーーー!!」


 平和な日常はもう少し続きそうだ。


 夕食後にはコウとナオの訓練、白狼隊自身の訓練の時間に当てられる。

 デスクワークで戦いの勘が薄れては困る。

 どうせダンジョンに入れば毎日戦いに追われる日々になるとはいっても、自らの命に直結する鍛練に手を抜いたりはしない。


「コウは面白いね。魔法適正が高いんだけど、近接を捨てるのはもったいない。

 剣技よりは無手があってそうだね。魔法を打撃に乗せる魔法とか相性良さそうだよね」


 組手をしながらユキムラがコウに渡す武器の構想に耽る。

 別のことを考えているユキムラに手も足も出ないのだから、コウからするとより一層ユキムラへの尊敬が高くなる。

 レンの前で師匠と呼ぶと怒られるが、心の中で師匠と呼んで敬愛している。


「ナオは天才ですね。決して腕力に優れているわけではないのに、武器の重量を手足のように使って息つく暇もない重い攻撃を繰り出せる。あんなこと真似できません」


 ソーカも舌を巻くナオの戦闘スタイル。

 フランキスカ、投擲に優れた小型の斧を複数利用するという独特の戦闘スタイルを開眼した。

 どうしてそうなったかは本人がコレを使えと言われたような気がした。と説明している。

 同時に複数の斧を投げて斬りつけてとまるでそこら中に目がついているかのように操る様は、自身の小柄な少女のような見た目とのギャップが激しい。

 初めて彼女の前に立った者が、まさかこのような武器の使い手とは到底思わないだろう。

 ユキムラはピンときた!! と言って彼女の武器を作り上げた。

 投擲した武器を自分の意志で転移させ、手元に戻すマジックウェポンだ。

 これによって間断なく無限の攻撃を可能にしている。

 二人共歴戦の冒険者にも勝るとも劣らない実力を手に入れている。


 魔力を込めて殴って戦う執事と斧を使う少女のようなバトルメイド。


「「ロマンだよなぁ」」


 二人のおっさんは感心していた。誰とは言わないが。

 その後二人に送られた装備は、そんなふたりのおっさんのこだわりの塊のような伝説級の性能を込めた執事服とメイド服だった。

 







明日も17時に投稿いたします。

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