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274話 ケラリス神国

【遅い……】


 皆に見送られながら大社へと入ると停止空間でクロノスが不愉快そうにふわふわと横になって浮いていた。


【アルテスがたぶんすぐ来るわよーって言うから待ってたら、寝ても覚めても来ない。

 ソーカ。お菓子頂戴。話は聞いている。アレは美味しかった】


「あ、はい……なんかすみませんでした」


 ソーカのつくった和菓子は神々の間でも評判がいいらしい。

 どっさりのお土産を受け取ってちょっとはにかんだクロノスは可愛かった。


【最後の大陸ケラリス。宗教国家。準備はいい?】


「あ、クロノス様。お願いと言っては何ですが、アルテス様に何か女神の使徒である証拠みたいな物いただけないか聞いていただいてもいいですか?

 もしよろしければでいいので、なければ無いでなんとかします」


 ユキムラは当てもなく聞いているわけではない。

 VOにおいてケラリス国でそういうアイテムが有るのだ。

 ボソボソとアルテスとクロノスが話しているようだ。


【……わかった。渡しとく】


 クロノスが空間に手を突っ込むとキュポンと腕輪が現れる。

 銀色で落ち着いたデザインに神聖文字で女神アルテスの名が刻まれている。


【女神の腕輪だって。これで平気なはず】


「ありがとうございます!」


【テンゲンでこっちもだいぶ楽になった。皆お疲れ様。

 国巡りは取り敢えず次で最後だから、頑張ってね】


 クロノスが空中に両手をかざすと光の円盤が現れる。

 ユキムラ達白狼隊に円盤が降ってくる。


【いってらっしゃい】


 ストンと円盤が降りると、ユキムラ達の姿はすでにそこには無かった……

 大福を口いっぱいにほうばってハムスターみたいになっているクロノスだけが残される。


【うまい】




----------------------------------


 いくつものモニターが並ぶ部屋で何人かの人々が何か話しているようだ。


「そっかー、過去から入り込まれたかぁ……

 やっぱしつこいねアイツ……」


 コップにはいったブラックコーヒーを飲みながらユキムラが去った世界のログをあさっている。


「妙なとこで用意周到にやってくるな、ほとんど痕跡も残さず綺麗に入って、全てぶち壊して出て行かれた。情けない……」


 どこから手を出してきてどこに帰るのかを追おうと思っていたが、見事にデータはクラッシュされている。


「ま、一応才能はあるのよね、プライドが異様なほど高いから生かせなかっただけで」


「さてと、次はイザナミちゃんいるから大丈夫でしょ」


 ふくよかな女性の肩をもみながらそーっと机に置かれた和菓子に手を伸ばす女性。


「えー、あんまり期待しすぎないでよー。あ、ちょっとその団子私のよ~」


「イザナミと私で組み上げれば時間稼ぎは出来るでしょうね。

 その後の準備は皆がしてくれている。

 私たちは出来ることをしっかりとやりましょ」


 頷きあい、再びモニターに向かい合う人々。

 彼らの期待を背に、ユキムラ達は最後の大陸へと向かう。


-------------------------------------------


 ケラリス神国。

 5大大陸東に位置する大陸に存在する。

 月と銀の女神アルテスを崇めるアルテス教を国教としている宗教国家。

 大陸の中央に霊峰ラグナがあり、アルテス教の総本山とされている。

 その麓に聖都ケラリスが存在する。

 大陸は6本の足のあるヒトデのような形をしており。

 その岬のそばに街があり、外の国から入る人間は各町から巡礼として中央の聖都、そして霊峰へ向かう人間が多い。

 なぜこのような宗教国家になったのかは諸説あるが、アルテスの加護を受けた人間が初代国王であり永代教皇ケラリス・マクシミリアンであるためというのが定説だ。

 また、この国のダンジョンは死霊系、悪魔系、不浄系といった神聖攻撃や魔法が有効な敵が多いのもそういった方向に進化した理由と言われている。

 6本の岬にある街は1~6の数字が付けられている。

 北東の街 1 ウーノ

 東の街  2 ドーズ

 南東の街 3 トレイス

 南の街  4 クワタラ

 南西の街 5 フィンゴ

 北西の街 6 セイリス

 巡礼の旅はこの各街にある聖堂で割符をもらって全て集めて聖都へ行くのが通例となっている。

 かなり大きな国土を持つために、北の街は比較的涼しく、中央部は四季があり、南は熱帯となっている。

 そのため巡礼も負担が大きく信仰心が試される。

 ユキムラ達はその第一の街ウーノの南、小さな村リッポン側の草原に転送された。


「さてと、周囲の地図はドローンで手にはいった。

 北に行けばウーノの街だね。少し西へ行けばリッポンだ」


 スパイ衛星じゃないが、すでに郊外のマップづくりは魔道具によって半自動で作成するようになっている。

 すでに新しい大陸へのアイテム制限も無いため、転移されたら効率よくマップ埋めが可能だ。

 旅道から外れた草原に出たため、まずは大通りへと出る予定でリッポンへ向かう。

 

「ケラリスでは目立つ派手な魔道具の使用はいい顔されないからまずは馬を手に入れよう。

 腕輪の力がどのくらいか知りたいからウーノの街の大聖堂にも行きたいしね」


 巡礼の旅を魔道具で楽するのはあまりいい顔されないわけだ。

 人目につかないところでは自重せずに魔道具で移動するが、砂煙を立てて車で移動は控えて久々のホバーボードだ。

 全員が装備の分配や荷物などをタロの箱から済ませて出発する。

 ユキムラ達の自重しないケラリス攻略はこうして静かに始まった。  








明日も17時に投稿を目指します。

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