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271話 女神 イザナミ

「はじめに私とオトハの関係を話さないといけませんね。私とオトハは---」


【ちょっと待ったー!!】


 突然の乱入者、気がつくといつもの時間停止状態になっており、白狼隊メンバーとオトハ、それにシリュウだけが動けるようだ。


「な、何が起きたのじゃ!?」


「アルテス様、いきなりですね……」


【ちょっとその話は普通の人に話していい話じゃないので、ホントは奥の部屋で待つつもりでしたが、現れちゃいました。ついでにすでに封印が解けているのでこちらも】


 皆が囲んでいるテーブルに石像が置かれる。

 美しい女神の像だ。


「姉様!」


「イザナミ……なぜ、なぜお主が石になっておるのじゃ……」


【オトハさん。貴方と契約を交わしたイザナミは空に帰った。

 そう聞かされていますよね……。

 しかし、実際には自らの危機を悟ったイザナミが、この不安定な国を守るために貴方に力を譲り渡して、そして敵の手にかかったのです……】


「そんな……嘘じゃ……イザナミは笑顔で天に……」


【大丈夫ですよ、神は死にません。死んでも死にません。イザナミもちゃんと復活できます。

 ただ、貴方に渡した力を戻してやらないといけません。

 イザナミの力を戻せば、貴方は以前の力に戻ってしまうかもしれません……

 それを聞かなければならないので、私が現れました。

 無理強いはしません。こっちは無限の時間がありますから。

 オトハさんが飽きたら返してもらっても全然問題は無いのですから!

 世界はユキムラ達がパパーっと救ってくれますからね!】


「か、軽いですねアルテス様……」


「よかった、姉様は私を捨てたんじゃ無かったのですね……」


【この国と、貴方と、同時には救えなかった。とても悔しがっていましたよ。

 シリュウ、今までよく頑張りましたね】


「ワシは……返すぞ! この国は強くなった!

 民たちは自分の国を守れる力をすでに自分たちの中に育たせておる!

 この国に、ワシはもう必要ない!」


「オトハちゃん……」


「オトハ、姉様に代わって、今までこの国を支えてくれたこと感謝いたします」


【それでは、よろしいですね。オトハさん?】


「ああ、お願いするのじゃ!」


 アルテスがオトハの胸に手をかざすと、オトハの身体から光玉が浮き出してくる。

 美しい玉虫色に輝く玉。

 そのまま石像にその玉をかざすと、するんと石像に吸い込まれていく。


 ビシ……ビシリ……


 石像全体が柔らかな光りに包まれ、表面の石がはらりはらりと剥がれ落ち、美しい女神の肌が現れていく。透き通るような肌、美しい漆黒の髪、慈愛に満ちた穏やかな顔、そしてシリュウとは対象的に豊かさに満ち溢れたボディライン……


 石像時代は詐欺なのではないか……なぜシリュウやオトハはこの石像を見てこの女性だとわかったのだろう?

 表層の石が剥がれる度に、効果音をつけるならドプンって音が聞こえてきそうなほどに、言葉を選んで表現すれば健康的な肉体が弾けだす。


【あら~オトハちゃーん。また会えるなんて嬉しいわー。

 それにシリュウも、本当にひさしぶりねー!】


「姉様!!」


 シリュウが目覚めたイザナミの胸に飛び込む。

 その姉妹の姿は……なんというか……人をダメにするクッションに飛び込んだ。とでも表現しようか……包み込まれるように抱かれるのは気持ちが良いかもしれない……


「イザナミ! どういうことなのじゃ!? ワシを騙したのか?」


【ごめんなさい。オトハにシリュウのことや私の事を話したら引き受けてもらえないかもって……

 本当にごめんなさい。でも、ありがとうオトハ、目覚めてわかったわ、この国の竜骨は驚くほど安定している。貴方がこの国を導いてくれたお陰ね……】


「……イザナミ……イザナミーーー!!」


 たぷん、とオトハもイザナミに吸収される。

 二人が子供のように泣き続け、落ち着くまで一時休憩となる。


「こちらよろしかったら」


 試食をしながらも大量に作成を続けている和菓子と日本茶を取り出すソーカ、停止した時間内での食事はどういう扱いなんだろうかユキムラやレンは不思議に思ったが、女神様もいるのでなんとかするんだろ、と細かいことを気にするのは止めた。


【あー、私も食べていい? これ、見てて美味しそうで食べたかったのー!】


 アルテスが普通の女の子みたいな反応をするので、ユキムラは不覚にも可愛いと思ってしまった。

 これがいわゆるギャップ萌えと言うやつである。

 ソーカの出す和菓子に最も反応したのはイザナミだ。

 ソーカのように超高速吸い込み型ではないが、一定のペースで黙々と消費していくタイプだ。

 アルテスが一つ食べている間に2個ぐらいのペースだが、それが全く止まらない。


【あ、あのねイザナミ、そろそろ状況説明しないと皆待ってるから……】


【ん? ああ、ええ……ついつい夢中になっちゃったわ。

 ソーカちゃん、これおみやげに包んでもらえるかしら?】


「あ、はい。わかりました」


「姉様は相変わらずですね」


 少し目を腫らして鼻声のシリュウ。


「相変わらずなのじゃ、ワシのおやつも容赦なく全部たべるからのーイザナミは!」


 こっちは容赦なく泣いたので目もパンパンだし鼻も真っ赤だ。


【ふたりとも可愛い顔が台無しね。

 そうね……私が異常に気がついたのは3000年程前でした。

 えーっと、たぶんここ今ちょっと変わった状態になってるわよね?】


【そうね、クロノスが干渉しているわ】


【そう、たぶん、その干渉が影響を受けない時代まで遡ったのね『彼ら』は、こちらの時間で3000年ほど前になるわね。

 私はテンゲンに悪意を持った者が私やシリュウを狙ってやってくるのに気がついた。

 正確には予知、予知と言っていいのかわからないけど……

 時間軸に起きるイベントを認識したといえばいいかしらね?】


「結構刺激的な発言ですね……」


 メタい発言にユキムラが思わず突っ込む。


【皆には理解しやすい形に変化して聞こえているので大丈夫よ……】


 アルテスが耳打ちしてくる。


【その頃のテンゲンはまだ爆弾を抱えているような不安定な国だったの、龍脈が安定してないせいできっかけがあれば国全体がひっくり返ってしまう。そんな状態だったの……

 だから私はその相手と闘う暇はなかったの、その対象が私とシリュウなのはわかっていたけど、それでもこの国のためにこの国を支える力を残さないといけなかった、私は……オトハに頼るしか無かったの】


「そうならそうと……」


【私とシリュウが狙われていて、貴方は逃げて? って言ったらどうした?】


「う……うむぅ……」


【仕方なかったの……それに、シリュウ、貴方が一番つらかったわよね……ごめんなさい……】


 また3人が泣き出してしまったので小休止に入るのでありました。



明日も17時に投稿いたします!

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