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老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件  作者: 穴の空いた靴下
フィリポネア共和国編 フィリポネア王都
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226話 旅立つ

 ダンジョン最深部の宝を回収、ワープで祠へと帰ってくる。


「おお! ご無事でしたか!!」


 途中に謎の落雷などがあったために戦時体制で軍が集結していたことにカイ、フィリポネア王は驚いたが理由を聞きとがめることはなかった。

 カイはダンジョンを踏破したことにより全盛期を凌駕する能力を手に入れている。

 ラナイは内部で散々ユキムラにしごかれたせいで憑き物が落ちたように丸くなっている。

 能力も別人になっている。今戦えばガニは血祭りにあげられることは間違いない。


「父さん!」


「お義父さん無事でしたか!?」


 ガニとイオラナが心配そうな顔で駆けつけてくるのも、以前のようなガニへのわだかまりも無くなって、


「誰がお義父さんだ!?」


 ない。

 可愛い娘のことになると、残念ながらすぐには変わることができなかった……

 ユキムラに説教されて渋々二人の結婚は認めてはくれたのだから、だいぶ丸くなったのは間違いない。


 その後の白狼隊は西へ東へフィリポネアの国で出来ることの総仕上げに追われる。

 ガニとイオラナの結婚式に参加したり、商会を任せられる人材を構築したり、各街でのスキル発現の手伝いをしたり、むしろ旅立つ前が一番忙しく飛び回っていた。

 一方でフィリポネア城での仕事は殆ど終わっているようなものだ。

 王からの信任は分厚くGUや結界の設置なども何も問題はない。

 すぐに手はずは整えられる。

 起動実験も無事に終えることが出来て、これでフィリポネア共和国での白狼隊の仕事は完了する。


 海底神殿ダンジョンでの魔神側からの来襲があったおかげで、未来の魔王軍進軍の信憑性が高まったおかげで、世論側の反発も少なく、各大都市でのサナダ商会の実績も相まって挙国一致状態になったことは幸運だった。

 ユキムラとしては戦争のような状態で人々が傷つくことは見たくないので、防御に特化してその間に一気に魔王本拠、そして魔神側の野望をぶち壊す。それが狙いであった。

 送別会として盛大な宴をフィリポネア国王が行ってくれて、フィリポネア共和国の重鎮たちの前で今後の計画などを話し合ったりした。

 国のTOPである王が女神を見て、しかも目の前から消えるという超常現象を見ているのだから話は凄く早く進んでいく。

 ユキムラの目論見通り、レベル超越と言っていい人間が指導、引率すれば組織全体のレベル上げも今後進んでいくだろう。

 もちろん白狼隊と一緒に超高レベルダンジョンへ入れるわけではないが、それでも戦力アップは間違いない。

 今までのこの世界の人々からしたら伝説のような強さを手に入れているわけだ。レベル的には。


「本当に何から何までユキムラ殿達白狼隊やサナダ商会にはお世話になりっぱなしだ。

 国の代表として心から感謝する。

 それと同時に君たちが旅立つことにとても寂しく思うよ……」


「また、全部終わったら肩を並べて戦う日もすぐに訪れますよ!」


「ああ……そうだな。この国と国民を護るために鍛錬は続けていく!」


 男同士、暑い握手を交わす。

 これでフィリポネアでの冒険は終了だ。

 白狼隊は荷物の選定などを済ませて女神の祠へと向かう。

 見送ってくれる沢山の人に手を振りながら祠へと入る。

 全員が入ると、いつもの時間停止が起きる。


【お疲れ様、次はテンゲン和国かケラリス神国ね】


【どっちでもいい、選んで】


 今日はアルテスとクロノスが二人とも来ていた。


「テンゲンだと基本はMD探索が多くなるだろうし、ケラリスだと宗教がらみのイベントが多いんだよなぁ……」


 ユキムラはVOの知識を照らし合わせる。

 テンゲン和国は戦国時代と古代中国を混ぜたような独特な文化を持つ国で、敷地面積は5カ国中最小でありながらダンジョンが多数存在しており、そのダンジョンで鍛えられた強力な『侍』と呼ばれる軍隊を持つ。

 ソーカが使う刀も侍の扱う特殊な武器の一種だ。

 必然的に多数のダンジョン、MDに入ることになるので成長や物資面での充実が図れる。

 ケラリス神国は、月の女神アルテスを崇めるアルテス教の総本山がある国で、国教としてもアルテス教を取っている。

 というか、国民はほとんどアルテス教徒で独特の国家形態を取っている。

 イベント的には宗教にありがちな悪徳神父やら教祖やらをどーにかこーにかするものが多く、ダンジョンは総本山地下にある修練のダンジョンが最大で、それ以外にも聖峰エヴァンテリンに広がる巨大ダンジョンもある。

 聖騎士と呼ばれる精強な軍団とのあれやこれやもいろいろあって、イベント数は最も多い。

 この土地で何か動くなら、まず中枢を落としてからじゃないと何もさせてもらえないだろう。

 第13代教皇ケラリス・マクシミリアン、まずはこの人の信任を得ることが最重要。

 逆を言えばそこさえどうにかなれば後はスムースに事が運ぶと思っている。


「……2つの国はそんな感じなんだ。どう思う?」


 かいつまんで全員にユキムラが説明する。

 なんでそんなことを知っているかなどの野暮なことを聞く人間は既にいない。


「ケラリスはたぶんいろいろと動く事になりそうですから、可能ならテンゲンでいろいろと使えるものを手に入れてからの方がスムーズな気がします」


「テンゲンと言えば独特の食文化が有名ですよね。テンゲンにしましょう!」


「服飾も独特なのよねー、絹のキモノってやつは一度見たことがあるけど芸術品だったわねぇ」


「そしたらテンゲンからにしようか。クロノス様、それではテンゲンでお願いします!」


【ん……】


 クロノスはタロの首に下げた箱、それについている時計に力を込める。

 時計が光だし祠内を明るく照らし始める。


【ユキムラ、たぶん次からは魔神の手のものがそれなりにちょっかいを出してくると思う。

 出来る限りの対策はするけど、いつも悪いけど、頑張ってね】


【頑張って。それじゃぁ開く】


【与えられた時間は3年。テンゲン和国での活躍を祈っているわ】


 光が一段と強くなりその光に飲み込まれるように白狼隊の姿が消えていった……


 


 


明日も17時に投稿いたします。

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