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老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件  作者: 穴の空いた靴下
フィリポネア共和国編 フィリポネア王都
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218話 ラナイの情熱

「まずはギルド長から話がある」


 フィリポネア王に促され一人の男が人垣から進み出る。

 なぜかボコボコな初老の男性がフィリポネア王国ギルド本部長、ラナイその人だ。

 センテナの街のギルドマスターであるイオラナの父親だ。

 もちろんボコボコなのはイオラナにプロポーズしたガニを試す! と言って返り討ちにされた傷……

 

「白狼隊によってもたらされた海底洞窟の宝は、その価値、品質、能力、その全てが我々の知るものとはかけ離れており、莫大な利益をもたらすことは間違いない!

 ギルドとしては白狼隊のメンバーにギルドランクSSSクラスを授与いたし、その働きに報いることとする!」


 会場が震えるかと思わせるほどの大きな声でそう告げる。

 皆は慣れているのか苦虫を噛み潰したような顔でそのボリュームに耐えていた。

 イオラナは恥ずかしそうにうつむいており、ガニも居心地が悪そうだ。


「ラナイ、ご苦労。

 さて、まずはアスリから報告を聞こう……よく見ると……アスリで間違いないのだよな?」


 王は始め懐かしそうにアスリに優しいまなざしを送っていたが、アスリの変化に気がつくと困惑したような表情になってしまう。


「ハッ! 王よ、御前でのご無礼をお許し下さい」


 アスリは身につけていた服から上半身を露わにする。

 年齢からは考えられないほどの鍛え抜かれた恵体が顕になる。


「アスリ……その身体は……」


「これもユキムラ殿の来訪者としての力の一端でございます。

 共にダンジョンを攻略し、この老骨、朽ちること無く成長いたしました」


 おおおおおお、と会場から感嘆の声が漏れる。


「ガニの件も耳には入れているが、お主はすでに60近いはず……

 これは……」


 ざわざわと会場は沸き立っている。


「ユキムラ殿が神や女神のために働いていること間違いなく。

 また、人格者であり、真にこの世界のために旅を続けていることはこのアスリ、身命をとして事実だと宣誓いたします」


 アスリの言葉に会場は再び静寂を取り戻す。

 フィリポネア王は少し考える素振りをしたが、すぐに意を決した表情へと変わる。


「アスリがそこまで言うのなら疑う余地はないな。

 ユキムラ殿、白狼隊の皆よ。

 この国、この世界のための旅、このフィリポネア王の名のもとに保証しよう!」


 事実上の王による太鼓判である。

 同時に会場からは歓声があがる。

 興奮に包まれたままユキムラ達は退席して、用意された王たちとの夕食に招待される。

 食事中は落ち着いて今までの旅の話やGUの配置や魔族への備えの話を出来た。

 立食でダンスパーティ形式の場に移るとユキムラ達は沢山の人に囲まれる羽目になった。

 特に強烈にユキムラ達に食いかかったのはラナイだった。


「ユキムラ殿!! 次のダンジョンには必ず私を連れてってくだされ!!

 頼む!! 年寄りの最後の頼みだと思って!!」


 丸太のような腕でユキムラの手をがっしりと握りながら血走って見開いた目で懇願している。

 ガニにこてんぱんにされたことが悔しくて悔しくてしかたなかったそうだ。


「連れていきたいのは山々なんですが、この国にはもうダンジョンもないし、そろそろ僕達も次の国へ行くことになると……」


「そしたら私も一緒に国を出ます!!」


「いや~それはちょっとむずかしいのでは……」


 救いの目を周囲に走らせても、誰一人目を合わそうとしない。

 さっきまでは皆でユキムラにつながりを作ろうと集まっていたのに、今ではレンやソーカなど他の仲間達のところへ逃げ出している。


「わ、分かりました。もしこの国にまだダンジョンがあったら必ずお連れしますよ!」


「おお!! ありがたき幸せ!! これであのやろぅ、いや、うん。わしはまだ強くなれる!

 そしてこの国ためにまだまだ働ける!」


 ユキムラはガニに心のなかで謝罪した。

 ガニも遠くでやり取りを聞いてため息をつくしかなかった。

 この国にはもうMDは無いはずだった。少なくともユキムラの記憶にはなかった。

 この王都の防衛体制を整えたら次の国へと転移される。ユキムラはそう予想していた。


 パーティも盛況のまま終了して、ユキムラ達は用意されたホテルへと案内される。

 アスリはここから別行動となる。

 王城正面に広がる大通り沿いにあり、背後に運河の美しい流れ、建物自体は歴史を感じるレンガ造り。

 洗練された上品さを感じさせる。このような立地でありながらこのような歴史的建造物があることが、水害が少ないことの裏返しになる。


「こういう歴史を感じる佇まいは素敵だね。時間をかけないと作れない本当の魅力を感じる……」


 忘れがちだが、ユキムラは中身は初老なのでこういう雰囲気は大好物なのだ。

 レンやソーカ、ヴァリィもどちらかと言えば落ち着いた佇まいを好むので、同じ感想を持った。

 内部も老舗独特の落ち着きと空気が心地よく、大変素晴らしい時間を過ごすことが出来た。

 細かな心配りなど、学ぶことが多かった。

 いずれはサナダ街でも観光にも力を入れたいと思っているので一流のホテルからたくさんのことを学ぶことが出来る。

 このホテルもたくさんのことを学ばせてくれる素晴らしいホテルだった。


 ユキムラが部屋でくつろいでいると、珍しくホテル室内で例の女神の時間停止が訪れた。


「これは……」


 気がつくとアルテスが室内に現れた。


【ごめんねユキムラ突然現れて、実は一箇所行って欲しいところがあって。

 この街の正面の海の底に神殿があって、そこの女神を開放してほしいの】

 

「了解しましたが、海底ですか……どこかの洞窟とつながっています?」


【それに関しては明日の朝までに何とかしておく。

 ごめんね、本当にそれを終えたら次の大陸だから、よろしく!】


 ピースマークして満面の笑みのアルテスが今までになく可愛く見えたのはソーカには内緒にしておかなければならない。

 バイバイしながら去っていく女神の姿とともにユキムラの意識も眠りに落ちていた。

 気がつくと既に夜が明け、太陽の光がカーテンの隙間から差し込んでいた。



 




 



明日も17時に投稿いたします。

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