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老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件  作者: 穴の空いた靴下
フィリポネア共和国編 ウラスタの街
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209話 慌ただしくも充実した日々

『あら、証拠ならあるわよ』


 突然の女神の来訪である。

 終始冷静だったアスリも目を見開いて驚いている。

 大きく慌てふためかなかっただけでも立派なものだ。


『はじめましてアスリさん。私は月の女神アルテス。

 ユキムラ達が貴方を説得するのに時間をかけていると間に合わなくなりそうなので、手伝いに来たの』


「こ、これは生きて女神様をこの目に見る日が来ようとは……」


『申し訳ないんだけど、貴方には私とあった記憶は消させてもらう。

 それでも『ユキムラの言っていることは真実』という事実は貴方の中に残るわ。

 いつも苦労かけているからそれくらいは手伝わないとね』


「ありがとうございますアルテス様、アスリさん、これで私の言うことが真実だとわかってもらえるようなので安心しました」


「ああ……疑いようもないな。せっかくの記憶が消えるのは残念だが、私は幸運だな」


『それじゃぁ、ユキムラ。頑張ってね』


 ユキムラ達がふわっと風を感じたと思うと、部屋の雰囲気は元の状態に戻っていた。

 さっきまでそこに女神がいた事の残滓も残っていない。


「……信用しよう。ユキムラ殿は嘘を申していない。GUも結界装置も、商会の開店も歓迎する」


 ユキムラ達は覚えているが、アスリは何も覚えていなかった。それでもユキムラは信用に値する。

 その気持は力強くアスリの中に芽生えて根付いていた。

 その後はスムーズに交渉は進み、アスリ達立ち会いのもとスムーズにGUや結界装置の設置も執り行われていった。

 アスリの街での信頼度は非常に高く、その人物が認めたならといろいろなことがスムーズに執り行われていった。


 ユキムラ達は呼び寄せた商会の人間と商店の立ち上げを行い、現地での人員も確保、周囲の採取ポイントの発見など、新しい街でのイベントを迅速にこなしていった。

 センテナからの通信で王都からの派兵が決まったと連絡が来るまで、ユキムラ達はせっせと街での信用を稼ぎ、内職生活に励んでいた。

 ユキムラたちも充実した内政生活、みるみる成長していく商店。

 どんどん改善されていく街の人々の生活に目尻が下がる幸せな日々だ。

 アスリは少なからず自分の力によってこの街を発展させた自負があった。

 それが僅かな時間で目に見えて改善されていくさまを見て、自らが天狗になっていたことに気が付かされた。

 ユキムラ達に持っていた最後の棘もそれによって完全に融解した。

 共に食事をして、酒を飲み、国の将来、世界の将来を語り合い、歳は違えどもユキムラのことを真の友と認めるようになるのに時間はかからなかった。

 彼もまた、この世界を本気でいいものに変えたいという野望を本気で信じていた男だった。


「どうやらセンテナの街から移送が開始されたようだ。

 5日後には王都へと到着。そこで改めて選定がされて、一週間後ぐらいに王都へつけるのが理想だね」


 ユキムラはセンテナの街からの通信を分析して今後の日程を組んでいる。

 既にウラスタの街は軌道に乗っており白狼隊はいつ出立しても問題はない。


「しかし、ここからフィリポネア城まで馬車を乗り継いでも2週間はかかる。

 すぐにでも出なければ行けないんじゃないか?」


 丁度アスリに夕食に招待されていたので、一緒に今後の予定も話しているところだった。


「うちの移動手段を使えば3日で到着できます」


 レンの答えに今更ながら白狼隊の異常性に驚くアスリ。


「あと南西のカフルーイ火山にあるダンジョンも攻略する」


「そんなところにダンジョンがあるとは報告はないが……ユキムラが在るというなら在るんだろうな」


 カフルーイ火山はウラスタ街の南西の端にある活火山で、周囲も細かな噴火が耐えることがない、ガスが出たり火柱が立っていたり、とても普通の人間が近づける場所ではない。

 ユキムラはVOの知識としてそこに洞窟が存在していることを知っている。


「王都へ移動して途中でダンジョンを攻略する。そして王都の防備を整える。

 出立は明日早朝を予定しています」


「ユキムラ、その旅に私は同行できるかな?」


 アスリの提案にユキムラは驚いてしまう。少なくともアスリは直接自身が戦うような人物とは思っていなかったからだ。


「ユキムラはわかりやすいな。これでも私は昔弓の腕は並ぶものなしと呼ばれていた。

 今でも鍛錬は怠っていない」


 確かにアスリの肉体は余分なものは全くないが研ぎ澄まされた肉体の持ち主だった。

 それに冷静沈着な正確を考えれば弓手として理想的な人物と言える。

 齢も50代後半とは言え年齢を感じさせない若々しさが在る。


「かなり苦痛が伴うものになると思いますが……」


「覚悟はできている」


 ユキムラの言う苦痛はどちらかと言えば急激なレベルアップに伴う苦痛を考えていた。


「わかりました。この国にとって貴方のような人間が力を手に入れてもらえるのはありがたい。

 出立は延期にしましょう。明日はアスリの装備を準備します」


 ユキムラは再びアスリの手をがっしりと握る。

 

 翌日ユキムラはアスリの実力を模擬戦で確かめ、装備品の方向性を見出す。

 アスリはユキムラの圧倒的戦闘力に絶句するしかなかった。

 見学をしていた衛兵たちもついでのように白狼隊から手ほどきを受けて改めてその実力に舌を巻くことになる。

 そして、GUに特訓モードが有ることを知って、嬉しさ半分、今後の訓練の難度に頭を悩ませる事になる。

 彼らの未来に幸多からんことを。

 




明日も17時に投稿いたします。

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