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老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件  作者: 穴の空いた靴下
ゲッタルヘルン帝国編 風龍の洞窟
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153話 風龍

 風龍戦は、ユキムラ達の想像とまるで違う展開になってしまっていた。


【おまえら! 卑怯だとは思わないのか!?】


「先に卑怯な戦法取ったのはそっちでしょう!」


【こ、こんなので負けたなどとは思わんからな!!】


「はいはい……」


 いま、ユキムラ達は防御結界で飛ぶことを封じた風龍をボコボコにしていた。

 どうしてこんなことになったかというと、あまりに風龍が好き勝手しすぎたからだ。


---------------------------


 戦いが始まると天高く飛び上がり上空を滑空しながら攻撃をしてくる。

 風耐性を高めまくっているユキムラ達には有効ではない。

 それでも降りてこないで上空からずっと、意味のない攻撃を仕掛けているだけだった。


「それが名高き風龍の戦い方ですか!?」


【なぜ吾がまともに人間などの相手をせねばならない?

 どうせ空にも上がれぬ人間風情など、吾の相手にならぬわ!】


「師匠どうします? 遠くからちまちましてても埒が明きませんよ?」


「もともと家畜とかを自分の快楽のために殺してたような小物だからねぇ。しかたない。

 タロ、あの方を地面に縛り付ける。この魔道具であーして、こーして。みんなもわかったね?」


 まさか天空を自分以上の速度で駆ける物がいるとは思っていない風龍の油断を誘って、巨大化したタロが地面に叩きつける。

 すぐに総員で空中に魔道具ばらまいて展開する。

 投げられた魔道具は空中で防御結界を発動し、風龍を閉じ込める籠の出来上がりだ。

 空中には風龍を取り囲むように複雑に絡み合った防御結界が網のように展開される。

 

【お、おのれ。よくも地べたに!!】


 再び飛び上がろうとした風龍は空中の結界に刺さる。


【ぐおっ!! 何だこれは、隙間が無いじゃないか!】


 巨大な羽が邪魔をして上手く羽ばたいて揚力を作るスペースが取れなくなっている。


「まったく、何でこんなみっともない戦いになるんだか……」


 ユキムラも不服だ。本来なら風龍のスピードを活かした攻撃を少しづつ克服して、という熱い展開を期待していた。


 こうして話の最初に戻る。


【卑怯だぞ!】


「お前が言うな! 別に地面にいても戦えるだろ? 

 さぁ、ようやく戦えるというもの、尋常に勝負!」


 リンガーも風龍の戦い方に今まで幾人もの犠牲を出していただけに怒り心頭だ。


【おのれ、後悔するぞ! 龍風嵐(ウインドドラゴニックストーム)!!】


 凄まじい嵐が発生する。触れるものを切り裂く魔法の嵐だ。

 龍族の使う魔法は龍魔法と呼ばれその威力は非常に強く、そして詠唱などもなく発動するので大変に厄介だ。


 もちろん白狼隊は耐性防御、魔法防御を突き詰めるところまで突き詰めている。

 大嵐が過ぎ去っても平然としている。

 薄々気がついていた風龍は、そそくさと体勢を立て直しあくまでも上から目線で……


【……うむ、よくぞ我が試練に耐えたな。奥の間へ行くことを許す】


 いきなりの手のひら返しだ。


「まさか、いまのが最大の攻撃なのか?」


 ユキムラも呆れ顔だ。


【ち、違う! 女神を縛る封印との戦いがあるから、それに耐えうるか試しただけだ!

 ま、まだまだ吾の強さはこんなものではないぞ……!】


 全員暖簾に腕押しというか、せっかく盛り上げた気持ちが台無しだ。


「風龍よ、私はこの大陸の国ゲッタルヘルン帝国の帝位継承者の末席に居るものだ。

 どうか誓って欲しい。もういたずらに山を出て周囲の生物を狩ったり暴れたりはしないと。

 そうでなければ、今、貴方を伐つ」


 その瞳には輝きがなく、まるで汚いものを見下ろすような目線で風龍を睨みつける。


【お、おう! 風龍の名において誓おう、だから剣をしまえ、剣を!】


 すっかりキャラが崩壊している。


 無理矢理にこの情けのない龍を擁護すれば、天空を利用した攻撃力は非常に脅威だし、その魔法は通常の耐性ぐらいは突き破ってその身を斬り刻む、為す術無く空中からの攻撃に切り刻まれる。

 決して弱いわけではない。

 ユキムラたちが強すぎるのだ。


「まぁ、ボス戦が連続する場合驚くほどどっちかがあっさり終わることはあるからね……」


 ユキムラはそう自分を納得させていた。


【老婆心ながら忠告すると、あの結界から出る奴らは物凄い強いぞ?

 気をつけろよ? その扉を奴らは破れんから危なかったら戻ってくればいいからな】


 変なデレ方をした風龍に送られて最深部の扉を開く。


 最深部はどこも似たような作りになっている。

 中央には女性の姿が、確かに風龍の力に守られているように周囲を突風が包んでいる。

 風に遮られよく姿は見えない。

 その外側に真っ黒い岩のようなものが、少しづつ少しづつ女神を風の結界ごと飲み込もうとしているかのようだ。

 地面から湧き出るようにこの部屋とは異なる異質な黒岩、風龍の話ではその岩に攻撃を加えると結界の守護者が現れるそうだ。


「みんな、準備はいいな?」


「ええ、大丈夫。それよりユキムラちゃんあの岩というか雰囲気……」


「ああ、わかっているあいつらの雰囲気だ……」


 女神たちが【穢れ】と読んだあの黒い物と似た雰囲気を放っている。

 全員が改めて身構える。タロも臨戦態勢だ。


「ファイアバレッド」


 高速の火炎弾が黒岩に突き刺さる。

 表皮を薄く削るしか出来ないが、敵対行動のスイッチは入ったようだ。

 岩から枝のようなものが伸びて何かを形作っていく。

 それが完成していくにつれ、ヴァリィの表情に怒気が交じる。


「……ユキムラちゃん、コイツよ……私が、倒した異常な強さの化物は……」


 銀色の甲冑に身を包んだ騎士。その身に黒い岩がへばりついている。

 ビシビシと枝部分が音を立てて甲冑から外れ、その騎士は地面に降り立つ。

 

【テキヲ、ハイジョスル】


 機械的な声とともにその瞳に真紅の明かりが灯る。

 ヴァリィにとっては復讐戦。

 ユキムラたちにとって初めての【穢れ】の騎士との戦闘が今始まる。






明日も17時に投稿いたします。


オチャメな龍ってかわいいですよね。 

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