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老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件  作者: 穴の空いた靴下
ゲッタルヘルン帝国編 風龍の洞窟
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151話 危機感

「この姿をさらすことでユキムラ様一同に敵意のない証明としていただきたい」


 男性用装備に無理やり閉じ込めている女性としてのあふれ出る魅力が詰まっている身体が危険だ。


「レン、知ってたの?」


 ユキムラも動揺しながら確認する。


「いえ、すみません。初耳です。というか、リンガーさん国家機密レベルの話をなぜ私たちに?」


「先ほども言いましたが、敵意がない証。欲を言えば協力を取り付けたいから……ですね」


 リンガーは魔道具を付け直す。光の粒子が身を包むと元の優男に代わる。


「すみません、めったに戻らないので恥ずかしくて……」


 なかなか不思議な魔道具だ。ユキムラも知らなかった。

 でも姿かたちを変える魔道具は確かにいろいろと有用な気がしていた。

 もちろん後にユキムラがあっさりと再現・開発してしまう。


「リンガーさんは第二皇子ライガー様の陣営ということですね」


「はい、第一皇子ファウストは、馬鹿なので」


 あまりにはっきりとした発言に全員驚いてしまう。


「基本的に周りにはイエスマンしかいません。さらに帝国の力に過信しています。

 プラネテル王国を蹂躙して全世界を我が物にすると本気で思っていますから……」


「第二皇子は違うと?」


「ええ、ライガーお兄様は現実を正確に測ることができる崇高な頭脳をお持ちです。

 そもそもプラネテル王国と無益な戦いを続ける意味がないとお考えです。

 一刻も早く紛争状態を解消して帝国の力を国力の増強へと回すべきだとお考えです。

 そうして帝国全体の生産力を高め、貿易などの商業力で全世界への影響力を示していく。

 それがライガーお兄様の崇高な野望でございます」


 すこし上気した顔で熱心に弁舌を奮う。

 どこかで見た光景だ。


「リンガーさんはライガー様をずいぶんと買ってらっしゃるのですね?」


「当然です。ライガーお兄様のような崇高で高貴なお方がこの帝国に生まれたことは帝国に生まれた人間としてこの上ない喜びとして受け入れ、そして我が全知全能をもってしてライガーお兄様の覇業に協力することは私が生まれた使命だと確信しています!」


 はい。リンガーはそういう人でした。

 それから数時間に渡りいかにライガーが優れた知勇を持っているか。人間として優れているか、自分の人生を賭してライガーのために尽くすべきなのかを語り続けていた。


「リンガーさん! よくわかりましたから! それで今後我々はどうすればよろしいのでしょうか?」


 なんとかレンが話に割り込んで止めてくれた。


「あ、申し訳ない。少しだけ興奮してしまいました。

 ところでなぜサナダ商会はライガー皇子を支持してくださるのですか?」


 ユキムラ達は流石にこの質問に対する答えに困ってしまう。

 悩んだ末、ユキムラが選んだのは……


「つまり、魔族と手を組み帝国が王国を攻め滅ぼすと……」


 ありのままを話すという選択肢だ。来訪者というネームバリューに期待する。


「ふむ、思い当たる節があります。最近あの馬鹿の周りに突然現れた胡散臭い奴らが居るのです。

 そいつらを調べようとした同胞が何人か犠牲になっています。それだけでも異常事態なのです」


「もう、きっかけは始まっているのか……」


 ユキムラは内心少し焦りを覚えていた。

 正直もう少し時間があると楽観視していた自分の判断を後悔していた。

 しかし、後悔は先に立たない。今から武具防備を揃えてできる限り早く決着をつけるしか無い。


「リンガーさん頼む」


 ユキムラは深々と頭を下げる。


「あの惨劇を繰り返さないためにも自分たちは強力な敵と対抗できる力を手に入れなければいけない。

 そしてその後に待つ戦いに勝利しないといけない、どうか力を貸していただけないだろうか?」


「……ユキムラ殿、どうか顔を上げてください。このリンガーの気持ちはすでに決まっています。

 あなた方に協力してファウストを止めます。あんな馬鹿でも兄ですから。

 帝都にはびこる不穏な輩の排除、喜んで協力させていただきます。

 それに、あなた方に恩を売れる機会、見過ごすわけにはいきませんからね」


 二人はがっしりと手を取り合う。

 こうしてリンガーは白狼隊と協力関係となる。


 (たぶん)夜も更けた頃ソーカは外で素振りをしていた。

 女性化したリンガーの姿とユキムラが手を取り合ってる姿がモヤモヤと彼女の頭のなかで暴れて眠れなかった。


(これから、あんなきれいな人が一緒に……、いやユキムラさんは大丈夫だ。それは何となく分かる……

 でも、リンガーさんがユキムラさんといてユキムラさんを好きになってしまったら……)


「ソーカさん、剣先が乱れてますよ」


 突然茶化すような声がかけられる。


「ファイ!」


 突然の声にあまりに驚いて変な声が出てしまう。

 振り返るとユキムラが立っていた。


「ユキムラさん……」


「なんか様子がおかしかったから、心配になってね」


「……きい方が好きなんですか?」


「へ?」


「ユキムラさんはやっぱりおっぱいは大きい方が好きなんですか!?」


「い、いきなり何を??」


「だって、リンガーさんスタイルいいし、きれいだし、おっぱい凄いし……

 私なんてあんなに綺麗じゃないし、大きくないし……」


「な、何の話をしてるんだ? リンガーさんは普段男だからそんなの気にしたこと無いよ!」


「だって、これから一緒に旅するんですよね? その間ユキムラさんのこと好きになって迫ってきたらどうするんですか!?」


「い、いやいや、ない! それはないよ!」


「そんなのわからないじゃないですか……ユキムラさんかっこいいし……優しいし……強いし……女なら惚れちゃいますよ、絶対!」


 詰問するような形でユキムラに迫っていくソーカをユキムラが優しく抱きしめる。


「そ、ソーカはか、彼女なんだからもっと安心していいと思うぞ……お、俺はソーカの彼氏だから、万が一そういうことになってもちゃんと断る」


 ソーカも両手をユキムラの背に回し、ギュッとユキムラを抱きしめる。

 おっかなびっくり手を回していたユキムラの腕が落ち着いたようによりソーカを抱きしめてくれた。


「ユキムラさん、もう一度言ってください」


 ユキムラの胸に顔を埋めて、その幸せな感触に身を委ねる。


「あ、ああ。俺はソーカの彼氏だから安心していいぞ」


「ユキムラさん……」


 ソーカとユキムラの視線が絡む。

 ソーカが瞳を閉じる。

 さすがのユキムラもこの意味していることくらいわかっている。

 緊張しすぎて震えながらユキムラは顔を近づけていく。


「んっ……」


 二人の唇が触れ合う。

 それはとてもぎこちなく稚拙な口づけであったが。

 幸せに溢れた優しい口づけだった。

 


 ユキムラの脳回路はショート寸前で、


「じゃ、じゃぁおやすみ!」


 と寝室へと戻ってしまう。

 それでもソーカは今この瞬間にも幸せすぎて死んでしまいそうだった。

 胸のもやもやは1ミリも残さず霧散していた。

 今晩は幸せに包まれて、ぐっすりと眠れそうだった。

まぁ、危機感ってのは必要だよね。


明日も17時に投稿します。

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