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131話 氷龍の元へ

 街での落ち着いた日々も、あまり長期にはのんびりできる状態ではない。

 主にアルテス様が……

 ユキムラ達は目処を付けて氷龍の元へ出立を決める。

 準備は完璧に整えてある。

 ヴァリィが残ることになったが、彼にはサナダ街で存分にその手腕を振るってもらう。


「ユキムラ様、ジュナーの街からレックス様とサイレス様がお見えになっております」


 いよいよ出立を翌日に控えた昼下がり、ユキムラは二人の来訪を受ける。


「頼む! 次のダンジョンに俺らを連れて行ってくれ!!」「頼む!!」


 いきなりテーブルに頭をぶつけての頼みごとだ。

 しかも内容が基幹都市のギルドマスターと領主をダンジョンに連れて行く、というとんでもない提案である。


「ちょ、ちょっと二人共頭を上げてください。こないだそんなことは無理だって話がまとまったじゃないですか!?」


「それがな、1週間くらいなら時間が取れるよなーって話になってなぁ……」


「そこにもうすぐ白狼隊が氷龍の元へ行くという話を聞いたら、俺達も我慢できなくなって……」


「頼む! 今回だけ! 自分たちの身は自分で守る! 誓約書でも何でも書く!

 お願いだ! もう一度俺の中の炎を燃やさせてくれ!!」


「頼む!!」


「レンーなんとか言ってあげて……」


 ユキムラは思わずレンに救いを求める。

 レンもとなりで呆れ顔だったが、ユキムラに惹かれてしまうのは仕方がないことだとユキムラの思惑とは違った解釈をしていたことは、誤算だった。


「必ず私達の指示に従っていただけますか? 

 師匠の言うことはもちろん、自分もそしてソーカ、タロの指示にも絶対に従うと誓約できますか?」


「ああ、誓おう!」


「俺も誓う!」


 レックスも結構熱い冒険者魂を持っているんだな、ユキムラは少し現実逃避気味にその光景を見つめていた。

 結局変に断っておかしな事をされるよりは、きちんと保護下で連れて行くほうが楽、と言う話になってしまった。


 決めてしまった以上は最善の方法を取るしかない。

 魔術師であるレックスの装備はレンが、剣士であるサイレスの装備はユキムラが準備する。

 サイレスには防御的な面を考えて片手剣に盾のスタイル。

 レックスにも片手杖に盾のスタイルを取ってもらう。

 防具に関しては命にかかわるのでユキムラたちと同じくクラス5防具を貸与する。


「まぁ、これなら死ぬことは無いでしょう」


 ユキムラはあっさりと言ってのける。

 サイレスは116レベル、レックスも85レベルと想像以上にやり手の冒険者だった。

 二人共最高位はAランクまで行ったらしい。冒険者証は再発行済みだ。

 期間が空きすぎたためレックスはBからのリスタートになる。

 

「な、なんだこれ……」「な、なんだこれ……」


 自分の振るった剣が切り裂いた鉄塊を見ながらサイレスが、自分の唱えた魔法でグツグツと煮立った鉄塊を見ながらレックスが見事にハモった。


「慣れないと危ないので取り回しには気をつけてくださいね」


 さらっとレンに流されてしまうが、改めてサナダ街の恐ろしさを身をもって確認してしまった。


「とりあえずレックスさんは革鎧風に仕立てましたが、防御面は心配いりません。

 ミノタウロスの大槌の直撃を受けても対して衝撃も感じません。

 属性攻撃は聖と闇属性以外はほぼ防ぎます。

 まぁよほどの大怪我でも自己治癒しますから、首を刎ねられるとか、体を全て潰されるとかだけ気をつけてくださいね」


 説明される防具の効果は想像を超えすぎており、理解が追いつかないほどの高性能、渡されるポーションもアイテムボックスも見たことも聞いたこともないような高性能。

 燃え上がらせたかった炎が萎縮によって小さくなっていくことを感じる二人であった。


 ドタバタはあったが、翌日予定通りアイスフロントへ向けて出発する。

 街の皆に盛大に見送られながら車を走らせる。


「これ、走ってるんですよね?」


「ええ、でもまだ街中なので低速運転です」


「あ、ああ、街中ですもんね」


 昨日からサイレスもレックスも全員に敬語で話すようになってしまった。

 街を抜けてレンが一気にアクセルを踏む。

 窓の外の景色が一気に加速する。

 もちろん、車内はまるで家の中にいるような静かさだ。


「えーっと、その、なんというか……」


「上に出てみます? ちゃんと進んでいるのわかりますよ?」


 言われるがままに車上に出ると間違いなく、とんでもない速度で進んでいることがわかる。

 人生において経験したこともないような速さだ。

 風は物凄い速度で当たるが、足元はピタッとくっつき普通に歩ける。


「風の影響も消せますけど、一応速度を感じてもらおうかと……」


「は、はぁ……もう、笑いも出ません……」


 普通に早馬を走らせても3日はかかるサナダ街からアイスフロント間、街道整備も済んでいるために秋に入った今の時期でも街道周囲には積雪はない。

 わずか、1日でアイスフロントの街へと到着してしまう。

 このあたりはすっかり寒さが厳しくなっていたが、一度街中へ入ると雪の気配も厳しい寒さも嘘のように過ごしやすい環境が出来ている。

 その全てがサナダ街、極端に言えばユキムラの力によって作られていると二人が聞くと、彼らの常識は最後の一片までも粉々にされてしまう。

 彼らの正気をつなぎとめていたのは、伝説の来訪者だから仕方がない。

 その言葉だけだった。


明日も17時に投稿予定です!

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