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129話 サナダ街視察

「此処から先全部農地なの?」


「はい、普通なら絶対に管理しきれませんが、そこはスキルのお陰で……」


 スキルによる農業は例えば耕作はスワイプするだけ。色の変化を見極めて最適な土壌を作ろう!

 種を選んでクリック。水はジョウロを選択してスワイプ、あげすぎの直前で全体を均一にするのがコツ。

 回収は気持ちよく爽快にスワイプしよう!


 っていうノリだ。あんまり難易度は高くない。スポポポンと収穫の音が気持ちよくて地味に人気がある内政要素だったりする……

 畜産も難易度が低めで誰でも楽しめる作りになっている。

 これと家造りの3つとチャットを楽しむVOプレイヤーは実は非常に多い。

 携帯端末でもできるようにしたのが利点なんだろう。他人の家の畑の手伝いができたり家畜の世話をしてコインをもらえてそれで家具を買えたりするので相互でやりあったりする面白さがある。

 農場の規模や畜産場の規模でもらえるコイン量が増えるのでユキムラは多くの人に世話をしてもらうことになっていた。


 目の前に広がる広大な農畜産場を見ながら昔のことを少し思い出した。


 加工工場もすぐ近くに作られており、ここで作られた様々な商品が市場や各地へと出荷されていく。

 新鮮な野菜や加工食品はアイテムボックスを利用して新鮮なまま流通していく。

 移動時に重量なども関係ないので大量の物資を持った手ぶらの運輸部隊が各地へと販売しに行く。

 そしてそこで得た資金でなるべくその街のものを仕入れてくる。

 こうすることで資金の一箇所集中をさせないように気を使っている。

 人道的支援にもたくさん貢献している。

 これはハワード王と直接パイプを作れた後は一層強化している。

 とんでもない勢いでダンジョンの宝を手に入れているから、もちろんいちばん大事なのは自分の元へ集まってくれたこの街の人々だが、世界中の人が笑顔で暮らせる世界を作りたい。ユキムラの夢である。


「おー、ここも変わったねー」


 次に来たのは元ゴブリン村跡。鍛冶や鉱石加工、魔道具工房の中心になっている。

 巨大な設備はほぼほぼ工場だ。

 水質汚染なんかも魔道具で解決できる辺りは現代社会よりも進んでいる。


「ちょうどいいや、ソーカ鈴蟲の様子見てこうか」


「はい、ユキムラさん」


 街へ戻ってからソーカは積極的にユキムラと行動している。

 ちょっとだけ積極的になって手を繋いだりしてることもある。

 ユキムラは真っ赤になりながら時々なら応じてくれる。

 一部の諦めの悪い娘達はそれで自らの敗北を知った。

 同時にソーカの熱烈なファンたちは肩を……特に落とさず相変わらず崇拝しているようだ。


「あ! ユキムラ様! 皆様よくいらっしゃいました!」


 工場へ入ると見習い達が迎えてくれる。

 奥ではサリナがまさに鈴蟲をいじっていた。


「サリナさんどうですか調子は?」


 サリナはソーカの姿を見つけると鈴蟲を渡してくる。


「ちょっと振ってみて」


 ソーカは鍛冶場内に置かれた試し切り場で鈴蟲を振るってみる。

 普通に数度型を見せると、独特の構えから一閃。

 りーーーーーーーーんと、今までよりも透き通った美しい音が響く。


「すごいな……」


 思わずユキムラが呟く。

 動きの淀みのようなものがなく、構えてから技までの流れに掴みどころがなくなっている。


「ええ……抜刀時の負担が殆どないのに、多分ですけど振動数が段違いですよね?

 持続時間も、これなら数合動ける……」


「うん。上手くいったみたい。新しい素材凄い」


「抜刀もスムーズだし、本格的に俺はその対策がわからなくなってきたぞ……」


 ユキムラも悩んでしまう。

 攻撃力、操作性、硬性も粘りも別物と言っていいほどの新生 鈴蟲 改 の誕生だった。


 新しい鉱石もダンジョンで大量に手に入れているためそれらの利用など大忙しなようだ。

 生活用の魔道具もどんどん広められている。性能も皆が研究してどんどん高められている。

 レンとユキムラが二人であーだこーだやっていた時代とはすでに変わってきている。

 町の人達もどんどんと育っているのだ。


 その後軍事訓練所が置かれたタロたちと出会った場所。

 海産物採取、加工工場となった海岸沿いを視察して回った。

 訓練所ではたくさんの新兵とユキムラは打ち合い、彼らの心に残る助言をたくさん置いていく。

 ユキムラやソーカの指導を受けて感動して涙するものもいた。

 魔法関係はレンが新たな知見をたくさんまとめた書籍を作成中。

 服飾部門はヴァリィが加わりさらなる質とデザインの向上を見込むことが出来た。

 

 今はタロと一緒にタロの母を送った場所に来ている。


「ワオーーーーーン!!」


 タロは今の自分を母に報告するかのように大きく遠吠えを空に放っていた……

 タロは今晩ここで過ごすようで、ユキムラ達は街へ戻ることにした。


「なんか、やっぱりこの家は作業場以外落ち着かないなぁ……」


「まぁ、ほとんどここにいませんからね……」


「ユキムラさんはしばらく世界の命数をかけた冒険が続くのですから」


「ユキムラちゃん服飾関係はいい子がいっぱいいるわね。

 ちょっと話しただけでもの凄く飲み込みよくてびっくりよ……

 ほんと世界は広いわ……

 ユキムラちゃん。私やっぱりここに残るわ。

 ここまで成長させてもらったことは本当に感謝してる。

 でも、やっぱり私は服の世界で生きていきたいの」


 まっすぐ、そして情熱を込めた目でユキムラを見つめるヴァリィ。

 もちろんユキムラはそのヴァリィの想いを受け入れる。


「これからのサナダ街の発展をよろしくお願いする」


 ヴァリィの分厚い手をがっしりと握る。

 いい兄貴分が離れるのは寂しいが、彼の夢をユキムラは自分の街で存分に追い求めてほしかった。

 それが、彼の人生で華を咲かせることを祈って……

明日も17時に投稿します!

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