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第四十六章 不死鳥王伝説 前編

こんなはずではなかった。

不死鳥神でさえ上回る力を手に入れながら、羽竜一人に手を焼く様だ。


「おのれ………このままでは済まさんぞ!」


「説得力に欠けるな、不死鳥王さんよ。」


羽竜にまともにぶつかって行っても打ち負かされてしまう。

様子を伺いながら思考を張り巡らす。


−奴の腕だ………利き腕を潰してしまえば勝てる!−


ほんの一瞬の隙でいい。

先に仕掛けたのはルバートだった。

羽竜の懐に飛び込みカワソワリーを振り抜く。

それを見抜いていたかのように羽竜が後方宙返りでかわす。


「そこだっ!!」


宙返りで着地する瞬間、バランスを取る為に腕を広げたところを狙う。


「もらったぞ!羽竜!!」


「くっ!」


切り落とすまではいかなかったが、二の腕に深く傷を負わせる事が出来た。


「ぐわっ………」


激痛が羽竜を襲い、トランスミグレーションを落とす。


「羽竜!!!」


戦いを見守っていたオブリガードが羽竜に駆け寄る。


「フハハハ!!利き腕の自由を奪われては何も出来まい!」


大量の血液が羽竜の腕を赤く染めていく。


「大丈夫か、羽竜!」


「大丈夫なわけねーだろ。神経切られたみたいだ………動かねーよ………」


勝ち誇ったようにルバートが羽竜を見下ろす。


「正直、一時はどうなるかと思ったが………私の伝説の幕開けには相応しい相手だった。けして忘れる事はないだろう。心起きなく涅槃ねはんへ旅立て!」


カワソワリーに魔力を宿し力強く振り下ろす。


「させるかっ!!」


ルバートの攻撃の前に立ちはだかったのは蕾斗。

残り少ない魔力で魔導の壁を造り羽竜を守る。


「蕾斗!!」


ルバートとの根競べと行きたいところだが、今の蕾斗には荷が重い。


「ドミナント・セブンス・スケール!!」


蕾斗を助けようとあかねが脇から技を放つ。


「吉澤!!」


立っているのですらやっとの二人が羽竜を助けるのはまだ勝機があると信じているからに他ならない。

そして、蕾斗とあかねの姿に同意してオブリガードも持てる力をルバートの放った技にぶつける。


「不死鳥神ともあろうお方が、人間に味方するのか!?」


「黙れルバート!!気高き不死鳥王の名を汚した貴様に言われる覚えはない!!」


「フフ……堕ちたな、オブリガード。不死鳥王の名など興味はない!!死ねっ!!」


貯めに貯めた魔力を爆発させ蕾斗達を一気に片付けようとする。


「もう止めろ!!蕾斗!吉澤!オブリガード!」


トランスミグレーションを握ろうとしても右腕は使い物にならない。


「羽竜君、最後まで諦めないでね。私達信じてるから!」


あかねは目が霞み始め体力の限界を知る。


「必ず勝ってよね!羽竜君は僕達のヒーローなんだから!!」


蕾斗が崩れ落ちる。


「はーはっはっはっ!!!終わりだ終わりだ終わりだ−−−−−−−っ!!!」


無様だと思っているのだろう。

倒れて行く蕾斗とあかねを見て笑いが零れる。


「蕾斗………吉澤………」


「このままでは………!」


オブリガードが渾身の力を込めてルバートに立ち向かう。


「終わるのは………貴様だ!!ルバート!!」


「バカが!!不死鳥の魂………貰った!!!」


ルバートのカワソワリーがオブリガードを貫く。


「な………に………?」


「私は無敵だ!!」


オブリガードの肉体からカワソワリーを抜き、その傷口に左手を入れる。


「ぐはっ………」


「シーミレもついでに頂いておこう。」


肉体はフォルテのものでも、魂は不死鳥神。

その心臓にシーミレが宿っている事を見抜きオブリガードから奪い取る。


「は………羽竜………」


「フォルテ……!?」


オブリガードがフォルテの肉体から分離して元に戻る。

最後に聞こえた声は聞き間違うはずもない、フォルテの声だ。


「お願い…………勝って………」


「フォルテ………フォルテ−−−−−−−−−−ッ!!!!」


たった一瞬蘇ったフォルテだったが、再び死を纏う。


「残念だったなぁ……友人を救えなくて。さあ次はお前の番だ。」


「…………ルバート!!てめぇ!!!」


「ハハハ!!どんなに怒ってもお前の腕は死んでいる。私の勝ちだ!」


「俺の腕が死んでる?残念なのはあんただ、ルバート!」


「何?」


「俺の利き腕は右手じゃない。」


そう言って左手でトランスミグレーションを拾い上げる。


「まさか………!!」


「俺の利き腕は………左なんだよっ!!」


油断したルバートに一撃を加える。


「しまった!!」


まともに羽竜の攻撃を喰らいふらつく。


「覚悟しろよ、ぶっ殺してやる!!」


「ぬうっ………こうなったら……」


追い詰められたルバートは、オブリガードから奪い取ったシーミレを天にかざす。


「私は不死鳥神になる!!」


皮肉にもシーミレがルバートの意思に反応する。


「往生際の悪い野郎だ!!喰らえ!破邪顕正!!!」


片腕でトランスミグレーションを振り上げ輪廻の炎でルバートを攻撃する。

ほぼ同時にシーミレを吸収して新たにルバートがその存在を不死鳥神に変え、輪廻の炎を打ち消す。


「ハハハハハハハハッ!!今日は笑いの絶えない日だ。見よ!この姿!私は不死鳥神………神になったのだ!!」


赤い羽根の髪が雄々しくなびき、炎の翼が辺りを熱気で覆う。


「どいつもこいつも………何が良くて神なんかになりたがるんだか……」


ルバートのテンションとは裏腹に冷めた態度で戦いに望む。

言い換えれば、羽竜はルバートがどんなに強くなろうとも負ける気はない。だからルバートの言葉全てが負け犬の遠吠えにしか聞こえない。


「正真正銘、最後の戦いだ。来い!羽竜!!」


「他人の力で天下を摂ろうなんて甘いんだよ。涅槃へ行くのはお前だ!ルバート!!」


左手に強く握ったトランスミグレーションに祈りを込めて不死鳥神ルバートへ立ち向かう。

不死鳥族との戦いを終わらす為に。


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