第四十二章 甦る不死鳥
手も足も出ない。蕾斗とあかねが全力でぶつかっていってもやはり不死鳥王には勝てない。
まだ余力はあるものの、力の差は歴然。
今までの相手が嘘みたいに弱く思えて来る。
「魔導?エアナイト?フン、オノリウスやジョルジュに比べればなんと他愛のない。そもそもエアナイトは一子相伝の能力、ジョルジュが存在しているのにもう一人エアナイトが存在するなど有り得ん。何かの間違いじゃないのか?」
「うっ…………こ、これが不死鳥王の………力?」
あかねが自分の能力が不死鳥王の前で通用しない事を知り愕然とする。
エアナイトの能力だけを頼りに戦って来たのだから無理もないだろう。
蕾斗もまたあかねと同じ気持ちになる。
「なんて力だ…………メタトロンに匹敵するんじゃないか?」
「人間とは何と無力な生き物よ…………せめてもの情け、苦しまず殺してやる。」
「そんな事は………僕がさせない………」
覚束ない足取りで壁を頼りにフォルテが立ち上がる。
勝てない事は百も承知している。それならと、あがけるだけあがきたい。
「…………グズが。」
魔法をフォルテにぶつける。
避ける間もなく壁に激突する。
「くっ…………どうして……………あんなに優しかったルバートが……………」
「甘ったるい事を………。フォルテ、優しさだけでは人は救えんのだ。想うだけでは何も変わらんのだ。必要なのは絶対的な力。何者にも屈しない絶対的な力を持つ者だけが覇者となる。」
「………覇者?そんな者になって…………何をしたいんだ!?」
「…………運命を変える。とだけ言っておこう。」
「運命………?」
「これ以上は無駄話になる。終わりだ、フォルテ!」
指先をフォルテに向けて魔法を放つ。
放たれた魔法はフォルテの胸を貫く。
「フォルテ!!!!」
「フォルテ君!!!!」
蕾斗とあかねが一瞬の時間を助けに行こうとしたが、傷ついた身体が言う事を聞かない。
何の能力も持たないフォルテに魔法をかわす術は無く、床に倒れ込む。
「フォルテーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!」
不死鳥界に響き渡るように蕾斗の叫び声が轟く。
「さあ、次はお前達だ。」
言った矢先、ルバートの前を何かが横切る。
「くっ………何だ!?」
「フランジャー!!」
フォルテの傍らに佇んでいる何かの名をあかねが呼ぶ。
「フランジャーだと!?馬鹿な、閉じ込めておいたのにどうやって出て来たのだ!!?」
厳重に監禁していた事を示唆する言葉が漏れる。
フランジャーはフォルテの傍らからルバートを睨んでいる。
すると、突然フランジャーが喋り始めた。
「ルバート………貴方は自分が何をしているかわかっているのか?」
「な………不死鳥が………言葉を……」
これにはルバートも驚きを隠せない。
まさか不死鳥が言葉を話すなど夢にも思っていなかったようだ。
「愚かな男………不死鳥王に成りながらその力を己の欲に使うとは………。あげくの果てに実の弟のように可愛がっていたフォルテまで手にかけるとは…………嘆かわしい。」
「なんだと……!?言わせておけば!!私には私の正義がある!!スタッカートやトレモロをの命を奪った人間を滅ぼし、新たな世界の覇者となる。そうすればもう二度と悲劇を繰り返す事も無くなる。わかるか?不死鳥よ?地上を人間共から取り返さねば何も始まらんのだ!!」
「思い上がりめ!所詮お前に王位継承の器は無かったのだ。この心優しい少年達を殺させるわけにはいかん!私が相手だ!ルバート!!」
フランジャーがフォルテの背中に立つと、彼の身体と同化していく。
「うおっ…………こ、このオーラは………!!」
同化したフォルテの身体が紅く燃え上がり炎の翼が生え、起き上がったフォルテの姿は別人。髪の毛が真っ赤な羽根に変わり不死鳥族を象徴するような真紅の鎧を纏っている。
「なんと………まさか貴方は……………不死鳥神!!?」
「いかにも、我が名は不死鳥神オブリガード。ルバート、不死鳥神の名において貴様を裁く!」
フォルテの身体に宿ったフランジャーは自らを不死鳥神オブリガードと名乗り、ルバートの前に立ちはだかる。
「ククク…………これは面白い。ミドガルズオルムの手助けをするだけの不死鳥が、まさか不死鳥神そのものだったとは……。」
「間違っているな。」
「何?」
「ミドガルズオルムは知恵を持たぬ生き物でありながら時空の管理者だ。そのミドガルズオルムを監視するのが私の仕事なのだよ。もっともこの事実は不死鳥族の歴史において誰一人知らなかった事実だ。」
「そうか………不死鳥の雛が持つと言われていた汚れなき魂、シーミレ。その意味がようやくわかった。ならば、貴方を倒しシーミレを頂こう!」
「お前に不死鳥王は似合わない。不死鳥界を混乱に落とした罪、死をもって償え!覚悟しろ!ルバート!!」
手に炎の剣を具現化してルバートを指す。
「伝説の炎の剣フェニックスソードか………ついでにそいつも頂くとしよう!」
種族の象徴、不死鳥神を前にしても憶する事なく剣を手にして対抗する。
不死鳥神と不死鳥王…………いつしか響いていた雷鳴が二人の戦いの合図となった。