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第三十三章 今、巣立つ時

ベルゼブブが倒した不死鳥族の兵士達の『山』を見て、蕾斗達がレリウーリアが既に城内にいる事を悟る。

もちろんその『山』を築いたのがベルゼブブかどうか彼らにはわからない。


「やる事が相変わらず派手ね。」


同じ女がやった事だとは考え難い。あかねから思わず感嘆が漏れる。


「まだ直接喋った事のない人もいるけど、個性強そうな人達の集まりみたいだし案外彼女達からすれば普通かもね。」


蕾斗はレリウーリアの女性達が好きらしい。

顔がにやけている。


「感心してる暇はない。羽竜が作ってくれた時間だ、早くフォルテを探さねば。」


レジェンダが二人を急かす。


「羽竜君大丈夫かな?」


あかねが羽竜を案じる。

信じてはいるがやはり気になる。


「……大丈夫だよ、後からいつもの勢いで駆け付けて来るよ。こんなところでちまちましてたらそれこそ怒られちゃうよ。」


蕾斗だって羽竜が心配だ。

しかし信じると言った以上信じきってやらなければ親友とは言えない。

男のややこしいところでもあるが、今はレジェンダに従いフォルテを救出する為再び歩き出す。


「待って!」


先を急ごうとする蕾斗とレジェンダをあかねが呼び止める。


「どうしたの?」


蕾斗が壁を見つめたまま立ち尽くすあかねに近寄って同じく壁を見つめる。


「ここ……………空気の流れが………」


「……………なるほど、隠し扉か……」


レジェンダも何か感じるらしく後ろから唸る。


「隠し扉?そんなまた都合よくこんなところに?」


「蕾斗君、多分あるよ……ここに。隙間風とかの空気の流れじゃなくて、何かを必死で隠そうという意思みたいのが感じられる。」


「あかねの言う通りだ、私でさえ気付かなかった空気をよく捕らえられたな?たいしたものだ。」


「また褒め殺し?みんなお上手ね!」


皮肉を言いたいのだろうが照れを抑えきれず中途半端な返答になってしまう。


「でもさ、隠し扉って言ったってどうやって開けるの?どう見たってただの壁だよ?」


ぺたぺたと扉があるとは思えない壁を、蕾斗が執拗に触りまくる。


「…………蕾斗君、レジェンダ、ちょっと下がってて。」


「え?何をする気なの?吉澤さん?」


蕾斗の問いに軽く微笑んで壁を睨み付ける。


「ミクソリデアンソード!」


あかねが空気の剣を手に具現化する。

薔薇のレリーフが浮かび上がり空気に実体が宿り、そして一気に壁に攻撃する。


「これでっ!!」


ミクソリデアンソードから放たれたあかねのオーラが壁にぶつかりその衝撃で一瞬空間が歪んだが、そのまま大きな震動と共に崩れる。


「うひゃ〜〜凄いな………」


清楚な容姿からはちょっとイメージ出来ないパワーに蕾斗が心底驚く。


「ほら!見てよ!地下に行く階段だよ!」


自分の読みが当たったのがよほど嬉しいらしい。


「おそらくこの先にフォルテがいるに違いない。」


これだけ怪しく隠すのだからレジェンダの読みも当たりだろう。


「我々でも見つけられなかった秘密の地下牢をよくあっさりと見つけたものだわ。」


地下へ続く階段に気を取られている間に後ろに不死鳥族の戦士がいた。


「………おいでなすったわね。」


あれだけの震動があったのだから気付かれないわけがない。

あかねがミクソリデアンソードを構えて警戒する。


「レリウーリアではないようね………オクターヴ様が言ってたフォルテ様のご友人かしら?」


すらりと長身の不死鳥族の女は長いストレートの髪を掻き上げて見下すような視線を浮かべる。


「貴女は?」


あかねが名を聞く。


「申し遅れました、私は不死鳥族裁きの戦士の一人ミュートと申します。」


「フォルテ様って………フォルテって偉いの?」


蕾斗がフォルテに付いた敬称に疑問を抱く。


「フォルテは不死鳥王とは腹違いの兄弟だ。」


言わずにおきたかった事情をレジェンダがついに口にする。


「マジ?何か事情がありそうな気はしてたけど、まさか不死鳥王の………」


蕾斗がレジェンダの説明で納得する。

 不死鳥は不死鳥族の象徴だと聞いた。そんなものを普通は盗めるわけがない。

例え側近だとしても。

そういったものは厳重に管理されてなければおかしいのだ。

まして幼いフォルテが簡単に手に触れる事など有り得ない。

蕾斗の中で、それが可能だった理由がようやくわかった。


「ジョルジュ・シャリアン殿ですね?そうです、フォルテ様は前不死鳥王スタッカートの弟君になります。」


丁寧にフォルテ事情を説明するが、ミュートの視線は変わらず見下しているように思える。


「待て!ミュート、お前今なんて言った?前不死鳥王だと?スタッカートは今も不死鳥王だろう?」


奇っ怪な言葉にレジェンダが耳を疑う。

ミュートはその反応を待っていたかのように話を続ける。


「いいえ、ジョルジュ・シャリアン。スタッカート様はお亡くなりになられ、今はスタッカート様の親友で不死鳥族の貴族であられるルバート様が不死鳥王の座についておられます。」


「馬鹿な………死んだ?何故?」


「不死鳥界の状況はご存知でしょうか?人間界の環境汚染がこの不死鳥界にまでおよび、それが原因で亡くなったのです。」


「ちょ、ちょっと待って!フォルテも環境汚染がどうのこうの言ってたけど、それが原因で命を失くすなんて有り得ないよ!現に僕達は地上で生きていけてるし、不死鳥界ここに来て感じたけど環境が汚染されてるとは思えないような自然が溢れてるじゃないか!」


人間あなた達と不死鳥族わたし達とを一緒にされては困りますね。事実は事実なのですよ、ボウヤ。」


「ボウヤだって?」


羽竜の影響だろうか?ボウヤと言われた事に腹を立てる。


「そういえば、さっきお前も地下牢を探しているような事を言ってたが?」


先走りそうになる蕾斗を制すようにレジェンダが割って入る。


「探してましたとも。不死鳥族にも派閥というものがあります。残念ながらルバート様は貴族であって王族ではありません。スタッカート様亡き後、正統なる王位継承者はフォルテ様のみ。私の派閥はルバート様ではなく、フォルテ様に王位を継いでほしいのです。わかりますか?」


「典型的な権力闘争だな。」


「ジョルジュ・シャリアン、貴方は権力闘争がいかに大切なイベントかお分かりのはず。そういう時代を生きて来たではありませんか。」


「…………腐った奴らだ。」


レジェンダの口調が強くなる。


「どういう事?フォルテ君を不死鳥王にするのがそんなにダメなの?」


レジェンダの反応を見て裏があると感じたあかねが尋ねる。


「こやつらはフォルテを一時的に手元に置いてルバートを失脚させ、その後理由をつけてフォルテを殺す。そしてミュート達が支持する誰かを不死鳥王に就かせる策だ。」


「そんな……!」


「なんて奴らだ……!」


あかねも蕾斗も怒りを隠せない。


「さすがはジョルジュ、察しがいいというか読みが深いというか………。そういう生き方、疲れません?」


ミュートがレジェンダを嘲笑う。


「誰を支持してるのかは知らんが、フォルテはお前達の権力闘争の道具ではない!悪いがお前達にはやれんな。」


「わかっていますとも。どうせ悪魔同様、貴方達も殺すつもりですから。」


「レジェンダ、蕾斗君、二人は先に行って!」


「吉澤さん!?」


「あかね………」


「なんだか知らないけど凄く頭に来た!この人は私が相手をするわ!だから早く!」


意外な申し出に蕾斗は戸惑うが、レジェンダは……


「………わかった。今のあかねならこの場を任せられそうだ。頼んだぞ!」


レジェンダの期待に黙って頷く。


「吉澤さん、必ず勝って!!」


「行くぞ、蕾斗!」


二人は地下へ向かうべく走り出した。


「自信………おありのようね………」


「自信なんてないわよ。でも人の命を道具にしか思わない貴女を許せないだけよ!」


「…………あかねとか呼ばれていましたね?」


「そうよ。吉澤あかね、エアナイトよ!」


ミクソリデアンソードをミュートに向ける。


「エアナイト?それは面白い話ですね。」


「何が?」


「ご存知ないのですか?エアナイトの能力は訓練すれば備わるものではありません。一子相伝の能力なんですよ。」


「……………?」


「まだわかりませんか?ジョルジュ・シャリアンもエアナイトである事はご存知ですよね?私も詳しい事は存じませんが、彼もエアナイトである以上同じエアナイトの能力の持ち主が二人存在するなんて確率的には0に等しい。」


「私がエアナイトじゃないって事?」


「そうではありません。貴女が手にしている剣は本来空気を圧縮して造った物。そこにイメージをプラスしてより実体化させたのでしょう?」


「随分詳しいのね、こちらの事情に。」


「フフフ……昔ジョルジュ・シャリアンが不死鳥界に来た時、彼の能力に興味を持って少々勉強をしましたから。」


「私には貴女が何を言いたいのかわからない。」


「…………エアナイトの能力は突然思い付いたように備わる力ではないと言いたいのですよ。」


ミュートが何を言わんとしてるのかさっぱりわからない。

何より彼女が話してからずっとイライラがおさまらない。

そしてその理由がシュミハザと同じ口調にある事に気付く。

厳密に言えば、シュミハザのですます口調は多少おかしなところがあるから同じではないのだが、あかねにはそう感じてしまうらしい。


「もう結構です。私の力がなんであれ、貴女を倒すのには役に立つのなら遠慮なく使うまでよ!」


「受け継がれる力が受け継がれて来なかった。したがってジョルジュからその能力が消える事は無かった。それは彼の存在が永久に確定しているからか?それとも別の原因があるのか?ただし遺伝子レベルでの継承はなされて来た結果、偶然か必然か力が貴女に備わり、二人のエアナイトが存在する。もっともジョルジュの方は特殊な存在。そう考えれば説明もつく……………か。」


「何を言ってるの?」


「知らないのなら知らないままでいて下さい。長々と失礼しました。では始めましょうか。」


ミュートが剣を鞘から静かに抜き取る。

あかねもまた、ミュートに向けていたミクソリデアンソードを軽く振り構え直す。

あかねのエアナイトとしての独り立ちの戦いが始まった。


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