第二十七章 casting drive
不死鳥界に激震が走った。人間界に攻め込む準備が整い、後は不死鳥王ルバートの指示を待つだけだった。
そんな中、レリウーリアが攻めて来た。
今回の彼女達は気合いが違う。圧倒的強さを誇る彼女達に数でぶつけ、なんとか足止めをしていた。
「ルバート様!このままでは!」
たじろぐタセットが目障りに思える。
「うろたえるな。ヴァルゼ・アーク…………遅かれ早かれ不死鳥族の大願成就には邪魔な存在。ここで息の根を止めてやる………!ライト・ハンド、オクターヴ達に伝えろ悪魔退治をしろと。」
「はっ。」
悪魔の侵略に顔色を変えないのはライト・ハンドだけだった。
強気な事を言っても、ルバートはヴァルゼ・アークを恐れている。
「ヴァルゼ・アーク…………全てを知っているのはお前だけではない…………!」
ルバートの気持ちはヴァルゼ・アークの命を奪う事に執着していた。
「また先を越されたみたいだね。」
蕾斗の軽い口調も今日は重く感じる。
「いつもいつも何を考えてるかわかんねー奴だな。」
羽竜がヴァルゼ・アークへの不満を口にする。
「見て!あれ…………」
あかねの指差す先には、レリウーリアと不死鳥族が死闘を繰り広げている。
不死鳥族の数はかなり大人数だ。その中を乱反射するようにレリウーリアのメンバー達が飛び交っている。
「どうするの?」
あかねとしてはあの中へ入っていく勇気はない。
「決まってんだろ………………不死鳥族は悪魔達に任せて俺達はフォルテを救出に向かうんだ!」
羽竜が遠くにそびえ立つ城をトランスミグレーションで指し示す。
城にいるかどうかはわからないが、行けば誰かしらは知ってるだろうという算段だ。
「足踏みしている暇はない。まずは羽竜の言う通りフォルテの救出に徹する。」
やっぱり変わった。そんな風に三人がレジェンダを見る。
「お前変わったよな、最近はやたらと積極的だし。」
羽竜は今のレジェンダが嫌いじゃない。
「減らず口はいい。気を引き締めろ。」
レジェンダ流の照れ隠しだと受け取った。
ここで時間を喰うわけにはいかない。羽竜、蕾斗、あかねが互いに見合って頷く。
それは覚悟を決めた証でもある。
「よし、行くぞ!」
羽竜の号令で蕾斗が魔法をかけて、超がつくほどの低空飛行で城を目指す。
チーム羽竜(?)のフォルテ救出作戦が始まった。
「アシュタロト!もっとしっかりしてよ!こっちに敵が流れて来るでしょ!」
バルムングの周りに群がる不死鳥族への怒りが、アシュタロトにも流れていく。
「そんな事言っても仕方ないでしょ!数が半端ないんだから!」
「こんな時まで喧嘩?懲りないなぁ……」
アスモデウスがバルムングとアシュタロトのやり取りを感心する。
バルムング(虹原絵理)とアシュタロト(ローサ・フレイアル)の喧嘩は毎度の事だから気にはならないが、よく飽きもせずにやれるものだ。
「司令!このままじゃキリが……………ないっ!!!!」
ルシファーが不意打ちを喰らいそうになって慌ててロストソウルで振り払う。
強さでは不死鳥族を上回るものの、天界の時同様数の違いで時間を取られてしまっている。
「確かにそうね…………天使と違って命知らずのバカばかりだからキリがないわ。」
ジャッジメンテスが思考回路を張り巡らせて策を練る。
「……!!司令、あそこ見てください!!」
ルシファーに促され見た先に羽竜達がいる。距離は離れているが、かなりの速さで不死鳥王のいる城へ向かっている。
「目黒羽竜……………ベルフェゴール!ナヘマー!シュミハザ!貴女達は羽竜達を追って!」
「了解!ナヘマー、シュミハザ、行くわよ!」
「「はい!」」
年上らしくベルフェゴールがナヘマーとシュミハザをリードする。
有無を言わず二人が返事を返す。
「ベルゼブブ、サタン、ここは私達に任せて貴女達は城内の敵を倒しに行って!」
「了解しました!」
ベルゼブブがサタンに変わり返事してすぐに離脱する。
人出が欲しい時ではあるが、先にも進まなければならない。
「私達は面倒でも地道に行くしかないようね。」
ジャッジメンテスが自分達を囲む不死鳥族を見て最善の策を口にする。
「面倒でもなんでも、総帥が不死鳥族を消せって言う以上やるしかないでしょ。」
ティアマトは殺る気満々でいる。竜神の血が騒ぐのだ。
「そうね。私とした事が少し弱気だったわ。全てはヴァルゼ・アーク様の為に!」
ジャッジメンテスの一言に全員が納得する。
役者は揃った。
不死鳥界に今、殺戮の戦火が巻き起こる。