第二章 伝説の鳥
「不死鳥族?」
「うん。(もぐもぐ……)」
「そんなもん聞いたことねーな。」
「こことは時空が違う場所に存在する世界の住人だから、僕。(もぐもぐ…)」
「んで、なんで追われてんだお前?」
「言わない。(もぐもぐ…)」
「言わないって……助けてもらってその態度はないだろ?つーか、食い過ぎだっつうの!これは俺の分だ!」
そう言ってフォルテからハンバーガーを取り上げる。
フォルテとフランジャーを助けたはいいが、行く宛てがないと言って羽竜達に着いて来てしまった。
蕾斗とあかねはそれぞれ自分の家に帰ってしまったし、家族もいるので連れて帰るわけにはいかない。それで仕方なく羽竜が連れて来たのだ。
羽竜の両親は仕事がら日本にはあまり帰って来ない。
羽竜は普段は一人暮らしをしている。
もっとも今はレジェンダが一緒に暮らしているが。
「美味しいね、これ。」
のんきにハンバーガーをほお張るフォルテに溜め息が漏れる。
「だいたい別の時空ってなんだよ。」
「なんだよって言われても………別は別でしょ?」
「………………。」
「簡単に言えばパラレルワールドの事だ。天界や神界もその一つだ。」
マイペースなフォルテに苛立つ羽竜を見兼ねてレジェンダが助け船を出す。
「パラレルワールドねぇ………あんまりパッとしねーよなあ。冷静に考えたら天界に行った事もすごい事なんだよな。」
二週間前の出来事を振り返ってみる。
なんだかいつの間にか戦っていたが、それすら当たり前のように思っていた。
自分の中に眠る力さえもあの戦いがなかったら知らないまま一生を終えていただろう。
「ねぇ、羽竜だっけ?」
「呼び捨てにすんなよ!お前俺より年下だろ!」
「別にいいじゃん。小さい事気にするんだね。そんなんじゃ女の子にモテないよ?」
「〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!」
言葉にならない怒りが込み上げてくる。
「まあ待て羽竜。フォルテ、不死鳥族はまとまりのある種族だ。それが同じ種族の人間を時空を超えてまで追ってくるには、それなりの理由があるのだろう?言いたくないのなら言わずともよい。だが、そうなれば我々はお前を助ける必要はなくなる。それでいいのだな?」
レジェンダの本心だろう。当面はフラグメントの収集に集中しようとしていたところだ。
フォルテを助ける為に不死鳥族とやり合う理由はない。
「なんだよレジェンダ、不死鳥族の事知ってんのかよ?」
知ってるなら早く言えと言わんばかりに突っ掛かる。
「不死鳥族は不死鳥…………即ちフェニックスの加護を受けた種族だ。天使や悪魔達に並ぶ実力は持っている。戦いになればさっきのようには行くまい。戦わずに済むのならそれに越したことはない。」
「そうだな、俺達は戦いたいわけじゃないしな。」
「待って!」
テーブルを叩き勢いよく立ち上がる。フォルテの立てた音にフランジャーが騒ぐ。
「………わかった、言うよ。このままじゃ僕もフランジャーも殺されちゃうし。それに、羽竜達にも関係のある話だから。
「俺達にも?」
なんのことやらわからずレジェンダと顔を見合わせる。
「不死鳥王は羽竜達の住むこの世界を破壊する気なんだ。」
「不死鳥王?そいつが何で俺達の世界を破壊するのさ?」
「不死鳥王とは不死鳥族の頂点に立つ者。フェニックスの力を持つ不死鳥族の王だ。不死鳥族は元来、他の種族や世界と交流しない種族。それが人間界を破壊とは……穏やかではないな。」
破壊する事自体が穏やかではない。そうレジェンダに突っ込もうかと思ったが、空気がそういう流れじゃないので羽竜は自粛する。
「僕にはよくはわからないけど、この世界の影響が僕達の世界にも影響を及ぼしてるらしいんだ。実際に、僕達の世界の空気が汚れたり、海の水が濁ったり、とにかくすごい事になってて、それに不死鳥王が怒り人間界を破壊しようとしてるみたい。」
「空気が汚れたり海の水が濁ったりって、この世界の環境汚染がフォルテの世界も汚染してるって事か?」
羽竜は環境汚染などに正直興味はない。
しかし、フォルテの言ってる事が事実だとしたら………?
「ちらっと聞いただけだからわからないよ。」
「それで?お前が追われてる理由はなんだ?」
レジェンダが問い詰める。
「……………不死鳥を………フェニックスを盗んだんだ……」
「何!?フェニックスを盗んだ!?まさかそのフェニックスって……………」
羽竜の視線は自ずとカゴの中の白い雛鳥にいく。
「そうだよ。この子が不死鳥だよ。」
不死鳥の名とは程遠いどこにでもいる雛鳥にしか見えない。
「だって、不死鳥って火の鳥の事だろ?こいつ……燃えてないどころか赤くもねーじゃん。どこが不死鳥なんだよ。」
「そんな事僕に聞くなよ!不死鳥は不死鳥なんだから仕方ないじゃないか!」
この場合フォルテの方が正しいだろう。
「何故不死鳥を盗んだりしたのだ?」
レジェンダは事の原因を冷静に探る。
「………殺されるところだったから………」
俯いて小さい声で答える。
「殺されたって不死鳥なら死なないんじゃないのか?」
「不死鳥が死なないとされるのは、寿命が来ると炎の中に飛び込み灰の中からまた蘇るからだ。不死鳥とて生き物。外から傷を負わせられれば死に至る。もっとも不死鳥は成長して羽竜の言う火の鳥となれば結界を張れるようになるから、五百年の寿命が来て炎に身を捧げるまでは不死身と同じだがな。」
レジェンダの説明に一応の納得はしてみる。
「レジェンダはなんでそんなに詳しいんだ?」
羽竜の疑問はレジェンダに飛び火する。
「……………………。」
「あ〜あ、始まった。都合悪くなるとすぐ黙る。いいよ、言いたくないなら聞かないよ。」
答えたくないのか?答えられない何かがあるのか?それは本人にしかわからない。
「不死鳥は不死鳥族の象徴であろう?殺す理由は無いと思うが?」
羽竜の質問には答えず続けてフォルテに質問するあたりから、レジェンダの意図は前者だろう。
「だからよくはわからないよ。フランジャーは僕の大切な友達なんだ。フランジャーを守るのは僕しかいない。」
フォルテがカゴからフランジャーを取り、手に乗せて優しく包んでやる。
「不死鳥って感じには見えないけどねぇ…………」
頬杖をついてフランジャーを眺める。
「羽竜、何事も見た目で判断すると痛い目を見るぞ。ディエッサー達がいい例ではないか。」
「わ〜った、わ〜った。で、どうすんだよ?俺達はフラグメント探すんだろ?こんなクソガキにかまってる暇はないだろ。」
「クソガキじゃない。フォルテだ。物覚えの悪い奴だ。」
「てんめぇ………一発殴ってやろうか……?」
プルプルと右拳を震わせる。
「やめろ、羽竜。不死鳥王がこの世界を破壊しに来るのなら手を打たねばなるまい。フラグメントは…………解空時刻もあるし、ま、大丈夫だろう。」
「お前の興味はフラグメントより不死鳥王にあるのか?」
「フォルテ、しばらくはこの家にいるといい。少し狭いが我々といれば不死鳥族の追っ手から羽竜が守ってくれる。」
「狭いとはなんだ狭いとは!お前、居候だろーっ!?だいたい守るなんて一言も言ってない!」
ブンブン手を振り回してあがく姿は往生際が悪いの一言に尽きる。
「わかったよレジェンダ。少し狭いけど、我慢する。よろしく!それと羽竜も、ついでによろしく!」
「かあ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!ここは俺の家だ!!我慢とはなんだ!!我慢とは!!」
ずっと一人で暮らしていた羽竜にとっては賑やか過ぎるかもしれない。
「不死鳥王…………出来れば戦いたくない相手だ。」
レジェンダは戦いを避ける方法探るしかなかった。
千年も存在して来た彼の記憶の不死鳥王は脅威でしかなかった。