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第二十三章 DEAR MY FRIENDS 〜DAY〜

「………そう。わかったわ。ご苦労様、早く帰って来なさい。みんな貴女のドラマ見てるわよ。」


仲矢由利が折りたたみ式の携帯電話をカチッと音を立ててしまう。

時間は夜十一時を過ぎた。


「総帥、千明からの伝言で目黒羽竜がフラグメントを二つ見つけたようです。」


「そうか。解空時刻を与えた甲斐があったみたいだな。」


ヴァルゼ・アークはあまりドラマなど興味はないが、限られたメンバーが全員女性となるとその辺は気を使ってるのか一緒に見たりもする。


「後一つ、いいんですか?今すぐ探しに行かなくて。大体の場所はわかってるんですよ?不死鳥族の戦士が時間ひもの事を知ったようですけど………」


「心配には及ばん。多分不死鳥族の戦士はフラグメントに辿り着いてはない。」


「そう思われる根拠は何でしょうか?」


「羽竜によって深手を負っているようだし、既に羽竜が二つ見つけたんだろ?短時間で互いが出会わずにスムーズに手に入れる確率は高確率ではない。そう考えれば簡単な事さ。」


随分と余裕だが、こういう考え方は決して学術的な事ではない。でも彼が言うと非常に説得力が生まれる。


「では私と那奈、美咲のスケジュールはいかが致しますか?」


「お前達は明日にでも残るフラグメントの回収に行け。もし誰かに回収されていても問題ない。不死鳥族との事はスタッカートの出方次第だ。」


由利でさえヴァルゼ・アークが何を考えてるのかわからなくなる時がある。

そもそも彼女達はヴァルゼ・アークの目的を知らない。

言い換えれば知る必要はないのだ。

彼が何をしようと彼女達は彼に尽くすだけ。

その想いの強さは文章にするのは難しい。


「間もなくフラグメントが揃うのですね。」


九藤美咲が一旦落ち着いた二人の会話に小石を投じる。


「そうね。その先に何があるのかしら…………」


由利がヴァルゼ・アークを見つめる。


「そう簡単に行けばいいが、この時代は不確定因子がやたらと飛び交ってるからな、常にそういったものを受信出来る環境を作っておかねばな。」


「総帥の手に全てが握られているのなら気に病む必要はありませんね。」


半ば消極的なヴァルゼ・アークの意見を上塗りするように楽観的に美咲が意見する。

由利もニコリと黙って頷く。


「話は変わるけど結衣、貴女明日テストじゃなかったかしら?」


由利の呼びかけにギクリとする。


「だ、大丈夫です!自信はありますから!」


状況は芳しくないらしい。

この際結衣だけに限らず、テストだとか仕事だとか彼女達には関係はない。

ただ、何もしないで自堕落な生活を送らせる気は更々ないというのが由利の考えだ。

そしてそれがレリウーリアのルールでもある。

レリウーリアの向かう先はきっと今の世の中とは無関係なところだろう。

だから勉強をしなくても、レリウーリアの一員としてヴァルゼ・アークの役に立てれば問題ないはずなのだが、自分にも厳しい由利にそういう理屈は通じない。

悪魔であっても規則正しい生活をする。

彼女がもっとも重要視している事だ。


「自信があるのなら学年で1番は取りなさい。」


結衣の胸の内などお見通し。


「え………あは……あの………」


「いいわね?」


「由利姉様の意地悪………」


あまりきつく言われるものだから結衣の瞳が潤み始める。


「あ〜あ。司令、泣かせちゃダメですよ。」


宮野葵が由利をからかうが、睨み返されすぐに口笛を吹いてごまかす。


「ま、まあ1番は言い過ぎたわ、せめて10番くらいは大丈夫よね?」


「………………………由利姉様……私の事嫌いなんだ………うぅ…………」


千明顔負けの演技だ。みんなそう思ってるが、わんわん泣かれると由利も成す手立てがない。


「わ、わかったわ。全力を尽くしなさい、それでいいから。ね?もう泣き止んで?」


顔を覆ってた手の指をそっと広げて、その隙間から目を覗かせる。


「…………もし1番取れなくても…………怒らない?」


結衣がレリウーリアに来た頃はこんなに猫をかぶるの上手じゃなかったはずだけど………いつの間に?

などと感心してみても始まらない。


「ええ、一生懸命やった結果なら1番じゃなくても怒らないから。だからもう泣き止んで?」


「………………………。」


少し由利の様子を観察してから首を縦に振る。


「それじゃもう寝なさい。」


「はい。おやすみなさい、由利姉様。」


機嫌を直して由利の頬にキスをする。

そしてその場にいるメンバーにも同じくキスをする。

ただいつもと違うのは、ヴァルゼ・アークにもねだる事。

それも目で訴える。


「総帥……ほら……」


美咲が肘でヴァルゼ・アークをつっつく。


「わかった、わかった。あ………おやすみ………」


千明を除く十一人の視線を浴びながら恥ずかしそうに頬を突き出す。

が、フェイントでヴァルゼ・アークの唇を直撃する。


「わお…………」


「大胆ねぇ…………」


中間翔子と戸川純が結衣の行動に感心してしまう。


「おやすみなさい、ヴァルゼ・アーク様。」


大満足。その一言に尽きる。


「やれやれ……………」


照れを隠すように溜め息をついて、ちらっと由利達の方を見てみる。


「よかったですわね。」


何も言ってないし、すこぶる笑顔を見せてもいない。

でも由利から出て来た言葉は何故か『よかったですわね』の一言だ。

自分の部下と言えど、女心までは把握出来ない。

ただ、こんな雰囲気も悪くない。

いつか近い将来、そう本当に近い将来に人としての全ては捨てなくてはならなくなるだろう。余韻すら残さずに……。

 その日まで、彼女達と過ごす時間は僅か三十年の彼の人生の中で何よりも貴重なものになるに違いなかった。

















テストは五教科のみ。満点は500点。勝負は5時間だけ。

今日の羽竜にその5時間はかなり堪える。


「はぁ…………ようやく昼休みかよ………」


進学校とは言っても運動部にも力を入れてるこの学校では、羽竜のように勉強よりも部活を優先する者も珍しくない。

そういう者は決まって勉強は苦手だ。


「調子どう?」


聞くまでもないが、あかね自身も夕べのオルタードとの一戦で疲れていて他に言葉が出てこない。


「吉澤…………最悪だよ。眠くて眠くて…………」


羽竜達くらいの年頃は、いくら寝ても寝足りない事が多い。

それを更に上回る睡魔には、さすがの羽竜も勝てる気がしない。


「売店で栄養ドリンクでも買って来ようか?」


「いや、パン買いに行くから自分で買いに行くよ。」


どんなに眠くても腹は減るらしい。


「後一時間だから頑張ろうね。」


右手を軽く挙げただけで教室を出る。

そして売店へ直行し、定番の焼きそばパンとカレーパン、牛乳、プリン、ヨーグルト、栄養ドリンクを購入して屋上へ向かう。

羽竜のランチタイムは屋上と決まっている。


「それお昼?いつもいつも同じようなものでよく飽きないわね?」


焼きそばパンの袋を開けてひとかじりしたところに新井結衣が寄って来た。


「なんだよ、なんか用か?」


今日は出来るだけ人との接触は避けたい。そういう日に限って寄って来るものだ。


「校内一の美少女優等生に随分なお言葉じゃない?」


「転校して来たばかりのくせしてよく言うぜ。」


もうどっかに行けと言う気力もない。

とりあえず腹を満たしたい。


「順調みたいね、フラグメント探し。」


「別に順調じゃねーよ。アドラメレクから解空時刻もらわなかったら見つけられなかったしな。」


地べたに座り、柵にもたれて食事をとる羽竜に対し結衣は立ったまま校庭を見ている。


「計算出来たみたいだし、結構頭いいじゃない。まあ計算したのはあかねちゃんか蕾斗君なんだろうけど。」


実際はそこにレジェンダが加わる。

何せ八つ全てのフラグメントに時間ひもは反応するのだ。見つけられていないフラグメントに反応している時間ひもを導き出すのは困難…………だったのは羽竜だけだった。

結局なんだかんだと難しい話の後に出た結論に従っただけ。

あんまり学者タイプではない羽竜にはちんぷんかんぷんの話でしかなかった。


「その通りだよ。」


「…………ご機嫌斜めね。」


そう思うなら話かけないでもらいたい。


「用事はなんだよ?早く言えよ。」


カレーパンも一気に食べ尽くしプリン、ヨーグルトも食べ終わる。


「………私達が四つ、目黒君達が三つ、あと一つはおそらく今日中に由利姉様達が回収して来るはずよ。そうなれば、目黒君達が持ってるフラグメントを本気で奪わなければならないでしょうね。」


「…………そんな簡単には渡さねーよ。」


「ふふ。その時は楽しませてちょうだいね。これ、一応宣戦布告だから。」


それだけ言って校内へ戻って行く。


「なんだよあれ。」


栄養ドリンクを喉の奥に流し込んで一番苦手な数学のテストに挑む準備をする。


「早く帰って寝るぞー!!」


…………わけがなかった。


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