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第二十一章 羽竜VSオクターヴ

オクターヴは羽竜に対して警戒していた。

以前のように剣に鋭さが無くなっている。

拳一つで鎧にひびを入れるほどのオーラを纏っているのだ、無理もない。


「どうしたんだよヒゲオヤジ!前より弱くなったんじゃないか?」


この前とは見違える羽竜に本音を言えば焦りを感じている。


「調子に乗るなよ?今日は助けが来る事は期待しない事だ。」


「それはお前だろ!トランスミグレーションを持った俺は無敵だぜ?」


主導権は羽竜にあった。

オクターヴの焦りは治まるところか募るばかりだ。


「クソガキがっ!!」


警戒しつつも攻撃に転じる。

ケツァールとトランスミグレーションが火花を散らしながら激しい衝突を繰り返す。


「借りは……十倍にして返すぜ−−−っ!!!」


溜まりに溜まったフラストレーションをオクターヴにぶつける。


「ぐおっ……!!」


ケツァールを通じて羽竜の力が手が痺れるほど感じる。


「フォルテもフランジャーも人間界もお前達には渡さない!」


トランスミグレーションの切っ先がオクターヴに向く。

羽竜の強さには終始圧倒されてしまう。

立場はこの前と逆転していた。


「オクターヴ!トランスミグレーションを手にした羽竜には勝てないよ!おとなしく退いてくれよ!」


フォルテに言われると退くわけにはいかなくなる。

オクターヴの任務はフォルテとフランジャーを連れ戻す事。もちろんトランスミグレーションを持つ羽竜を倒せれば、戦士長としての威厳も保たれ更なる出世も望める。

野心…………オクターヴの奥底ですくぶる小さくも灼熱の炎。


「気に入らんな…………性能のいい武器を手にしたくらいで強くなった気でいるなよ?」


言い訳などするつもりはないが、やはりどこかで甘く見ていた。

羽竜を倒すには全力を尽くさなければ無理だと悟る。


「まさかこんな子供相手に本気を出すはめになるとはな。」


「そう思うなら来いよ。」


トランスミグレーションを構えたままオクターヴの出方を待つ。


「捻り潰してくれる!!」


「羽竜!気をつけて!!」


オクターヴが全身からオーラを解放する。そのオーラは炎となり、オクターヴの姿を変えて行く。


「こいつは……………」


羽竜が姿を変えたオクターヴを見て息を飲む。


「フフフ…………不死鳥族の中でも変身能力を持つ者は限られている。まして人間なんかに見せるのはもったいない。光栄に思えよ?」


背中に炎の翼があり、髪が細かい羽になっている。

目も薄気味悪い印象を与える。

白目の部分まで黒く染まっているのだ。

そして、感じ取るオーラも計り知れない。


「悪者によくあるパターンだな。追い詰められて変身…………フン!」


羽竜の言う通り、よくあるパターンではあるがオクターヴが強くなったのは事実だ。


「覚悟は出来たか?羽竜。」


「どうやら名前、覚えてくれたみたいだな。」


「フフフ。覚えたくなくとも覚えるさ、何と言っても人間でありながら神に戦いを挑んだ男なのだからな。」


「いや、あれはヴァルゼ・アークが………俺は特に何かしたわけじゃ………」


あまり買い被られても困る。

事実、メタトロンを倒したのは羽竜ではなくヴァルゼ・アークだ。


「でも共に戦ったのだろう?なら同じ事だ。」


どうやら有名人らしい。

もし不死鳥界の他にも人間界と異なる世界があるのなら、きっとそこでも知られている可能性は高い。

天使もそうだったが、不死鳥族にしても人間という種族は下等生物だと思っている。

だからこそ物珍しく見られる。

だからこそ確かめたいのだろう、人間でありながら神に戦いを挑んだ男の実力を。


「さあて、ショウタイムだ。」


オクターヴが遠慮なくケツァール振り回して羽竜を襲う。

トランスミグレーションで必死にケツァールを振り払う。

今度は羽竜が苦戦を強いられる。


「前より弱くなったとか抜かしたな?この前はたいして本気など出してない。それよりお前こそさっきまでの勢いはどうした?」


「へっ、慌てんなよ。こうでなけりゃ面白くないぜ!」


再びトランスミグレーションとケツァールが激しい攻防を繰り広げる。

不安げに見守るフォルテを余所に、この戦いを羽竜は楽しんでいた。

元々ボクシングをやるような性格の持ち主だ。

戦闘行為が嫌いなわけがない。

天界での戦い以来、目覚め始めた血を抑えきれない。

記憶から離れないヴァルゼ・アークとメタトロンの戦いも羽竜を駆り立てる要因の一つだ。


「うおおおりゃ−−−−−−−−−−−−−−−−−っ!!!!!!!!」


あの羽竜独特のトランスミグレーションを右側頭部に構える恰好のまま、オクターヴに突っ込んで行く。


「来るか!!!!羽竜!!!」


羽竜の挑戦を受けて立つ。

ケツァールを下段に構えたまま羽竜に突進する。

獰猛な目つきで羽竜を睨む姿は、不死鳥とは程遠い獣をイメージさせる。


「くたばれぇ−−−−っ!!」


トランスミグレーションが真紅に光り輝きオクターヴのケツァールと、ある種の者には心地よい音を奏でる。

 啖氷空界の中を人の限界を超えた動きで駆け巡る。

そして……


「ぐあっ!!」


トランスミグレーションが真紅の柱を立てオクターヴを斬る。

致命傷は免れたが、上半身に深い傷を負う。

以前に羽竜が拳でつけた鎧のひび割れが高じて粉々に砕けてしまった。


「クソッ!なんて事だ!」


本気を出したはずなのに傷を負ったのは自分。

羽竜の力に屈服する形となった。


「やっぱり俺の方が強かったな!」


歩み寄る羽竜を下から見上げる屈辱が堪え難い。


「何なんだ……今の技は……」


羽竜がかつてサマエルに見せた技と同じ技。輪廻の炎が真紅の光柱となってオクターヴを襲った。


「さあ、おとなしく帰るかここで倒されるか、どっちだ?」


「ぬっ…………おとなしく帰れだと?ハッ!笑わせるな!俺は不死鳥族戦士団の戦士長だ、敵に尻尾を巻いて帰ると思うのか!?」


ゆっくりと立ち上がりふらつく身体をケツァールで支える。


「オクターヴ、頼むから帰ってよ。羽竜も本音は殺し合いはしたくないんだよ。」


フォルテに感謝する。この状況で弱みは見せられない羽竜の胸中を代弁してくれたのだ。


「今俺が退いたところでお前の罪は消えんぞ、フォルテ。」


「わかってるよ。でもオクターヴにも死んでほしくないんだ。」


「甘ったるい事を…………」


「その甘さ、認めるわけにはいかないわよ。」


いつの間にかナヘマーとシュミハザがいた。


「新井…………?その姿、新井なのか?」


「目黒君、貴方が殺らないのなら私達が殺るわ。」


ナヘマーが羽竜の疑問を無視して冷ややかに見る。

シュミハザもロストソウルを用意して準備をする。


「フッ………フィル達を倒したみたいだな。たいしたもんだ。」


視線の先から蕾斗とあかね、レジェンダが現れたのを見て結論が出た。


「蕾斗!吉澤!」


二人の無事を確認した羽竜が安堵の声をあげる。


「オクターヴ、お前の負けだ。観念しろ。」


「ジョルジュ…………残念だが、俺が観念しても何も変わらん。俺は任務を担う身、全ての決定権は不死鳥王にある。」


「レジェンダ、余計な事はするなです。」


シュミハザがロストソウルを構える。


「待って!無駄に血を流す必要はないよ!」


蕾斗がシュミハザを制す。


「………………………。」


蕾斗の言葉に少し戸惑ってしまう。

啖氷空界が解け始めて元の満月の夜へと戻る。

すると満月の光が羽竜が首から下げていた解空時刻に集まりエネルギーを溜めていく。


「解空時刻が…………」


あかねが解空時刻の異変に気付く。

溜め込まれたエネルギーは空間に放射され、フラグメントと同じ桃色の光でフレームの役割をして三角錐の集合体をいくつも作り上げる。


「な………なんだよ、これ………」


「………時間ひもよ。」


驚く羽竜にナヘマーが説明を始めた。


「時間ひも?」


「この世の中の空間は三角錐で区切られているのよ。そしてそれを形成しているのが時間ひも。フラグメントはこの時間ひもに反応するのよ。」


言われてみれば羽竜の持つフラグメントが強く光っている。

そして一部の時間ひももまた強く光っている。


「なるほど、これを辿ればフラグメントに辿り着けるわけか。」


レジェンダが疑問に思っていた事が一つ解決した。


「クックッ………馬鹿な奴らだ、敵に貴重な情報を漏らすとは。」


オクターヴが翼を広げ舞い上がる。


「オクターヴ!!!」


羽竜がトランスミグレーションを構えてオクターヴを逃がすまいと狙いをつける。

ナヘマーとシュミハザが羽竜の攻撃を待たずに仕掛ける。


「おっと!」


オクターヴは二人の咄嗟の攻撃をかわす。


「羽竜!今日のところは勝負はおあずけだ!いずれカタをつけよう!」


「待て!オクターヴ!!」


傷ついた身体を庇いながら夜の闇へ遠ざかって行く。


「クソッ!蕾斗、奴を追うんだ!」


「無茶言わないでよ、もうそんな魔力残ってないよ。」


頼りの綱が無い事でオクターヴを追う手段は無くなった。


「だから殺せと言ったのよ、どこまで馬鹿なのかしら?」


同級生であるはずのナヘマーの視線が痛い。


「敵がいなくなった以上私達も帰りましょう。」


ナヘマーがシュミハザに声をかけて飛び立とうとする。


「待って、新井さん!」


「吉澤さん…………何か?早く帰りたいんだけど?」


呼び止めるあかねに迷惑そうな表情を露骨に見せる。


「あの………助けてくれてありがとう!」


ナヘマーとシュミハザがいなければ一対一というシチュエーションは成り立たなかった。

勝てたのが実力でも、偶然だとしても、ナヘマー達に感謝したい。


「そうだ、なんでお前達が助けてくれたんだ?」


あかねの人が良すぎる性格と、羽竜のマヌケな質問に溜め息が漏れる。


「なんか勘違いしてない?前に言ったわよね?私達は貴方達を監視してるって。そのフラグメントは総帥の物なの。今は貴方達に預けてあるだけよ。それを奪われたら話にならないから加勢したまでよ。」


学校で見る結衣は優等生でおしとやかなのに、一歩校舎を出ると正反対の態度を取る。

その態度があかねにはせつなくなる。


「新井さん…………」


「私達を気にかける余裕があるならさっさとフラグメントの回収に向かいなさいよ。藤木蕾斗がダメでもレジェンダがいるでしょ。」


「……………そうだな、ナヘマーの言う通りだ。おそらく満月が出ている間にしか解空時刻は反応しないのだろうからな。移動だけなら私の魔力で十分だ。」


「新井、仲間にはなれないのか?」


「なれないわ。何度も言うけど、貴方達も私達の敵に変わりはないのよ。」


小さい翼を四枚広げ羽竜達に背を向ける。


「行きましょシュミハザ、今日から千明お姉様のドラマが始まるんだから。みんなで一緒に見たいでしょ?」


「はい。きっと今頃大広間でみんなお酒を飲んでいるのです。」


ナヘマーの問い掛けに無表情で答えて背中の円形の飾りが変形して翼になる。


「じゃあね、目黒君。」


そう言って帰って行く。


「私達はジュースなのです。」


何を話していたのかわからないが、シュミハザの言葉だけ聞き取れた。


「やっぱり新井さんとも………」


「言うな、吉澤。今は目の前の事に集中しよう。」


羽竜がレジェンダを促して時間ひもとやらを頼りにフラグメントを探しに行く。

それぞれが、これからどうすべきかはっきり答えを出す時が来ていた。


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