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第九章 燃え盛る炎のように(中編)

悪魔というのはもっと忌み嫌われる容姿をしていると思っていた。

かつてヴァルゼ・アークは一度だけ不死鳥族と剣を交えた事があった。その時の彼は真っ赤な髪をしていて瞳も真紅に染まっていた。

どの不死鳥族の戦士も魔帝には歯が立たなかったが、不死鳥王だけは互角に戦っていた。

当時の不死鳥王はスタッカートではない。スタッカートの父親であるバウンス様だ。

あの頃は私もスタッカートも不死鳥戦士団の一戦士でしかなかった。

不死鳥王と魔帝の戦いには圧倒されっぱなしだったのを覚えている。

かれこれ一万年くらい前か。

何故不死鳥王と魔帝が戦ったのかはわからない…………思い出せない。

元々知らなかったのかもしれないが、それすら記憶にない。


…………ナゼ?


何故だ?思い出せ………何故不死鳥王と魔帝は………

そこに何か大切な事があったはず!

あの場所はどこだった……?


「不死鳥王バウンスは健在なのか?」


目の前の『髪の黒い』ヴァルゼ・アークがルバートに聞く。

あのヘンテコな老人には聞いてはいたが、十四の悪魔の力とその記憶………全てを継承した人間達。悪魔はヴァルゼ・アーク以外は見た事もないからなんとも言いようがないが、それでもかつて見た事のある人物と違う容姿の人物が同じ記憶を自分と語り合う。ピントが合わない。


「バウンス様は亡くなられた。」


「…………そうか。しかし寿命にはまだ早いだろう?病か?」


「いや。人間界の環境汚染による影響で不死鳥界にも異変が起きていて、それで身体を壊されて…………。」


「………………惜しい人物を亡くしたな。強くて誇り高い戦士だった。是非もう一度剣を交えたかった…………」


遠くを見て過去を思い出す。

ヴァルゼ・アークが戦士としてたった一度だけ戦えた瞬間なのかもしれない。


「そういえばバウンスには息子がいたな?確か………」


「スタッカート……」


「そうだ。スタッカートだ。バウンス亡き今、不死鳥王は息子のスタッカートなのか?」


ただ黙って頷く。

スタッカートの名を聞くと感情的に成りそうな自分がいる。

それをぐっと抑える。


「………訳ありみたいだな。話してくれないか?どうせそのつもりなのだろう?」


 コンコン


ドアをノックする音が鳴り中間翔子が入って来る。


「失礼します。お茶をお持ちしました。」


ワゴンに乗せたティーカップがカタカタ声を上げる。


「ご苦労様。後は私がやるわ。」


由利がワゴンを受け取りカップに紅茶を注ぐ。

メイド喫茶辺りの紅茶とはさすがに香が違う。ほんのりと漂う香が緊迫したムードを和らげ、ルバートの緊張もほぐす。

コポコポと注ぐ音が気持ち良く、ヴァルゼ・アーク、ルバート、由利、翔子の四人がしばし酔いしれる。


「どうぞ………」


ルバートの前に出された紅茶は、紅茶をよく知る人物が入れた事を伺わせる。


「君は紅茶を入れるのが上手なんだね。」


ルバートの言葉は由利ではなく翔子に向けられたものだ。


「ありがとうございます。では私はこれで。」


ヴァルゼ・アークと由利に頭を下げ部屋を出ていく。

ドアを閉める前に軽くまた頭を下げてから静かに閉める。


「総帥もどうぞ………」


「俺はコーヒーの方が好きなんだが……」


「あら、紅茶も悪くありませんよ?コーヒーばかりでは胃を悪くします。たまには私の言う事も聞いて下さい。」


ポリポリと左頬を左の人差し指で掻く。


「貴方達は本当に悪魔なのか?私の知るヴァルゼ・アークには見えないが………」


「俺達は人間として生まれた。しかし、悪魔の力と記憶の継承により悪魔そのものとなったんだ。見た目こそ人間だが、身体の質や能力は悪魔だよ。戦闘になればロストソウルやバリオン物質で鎧を具現化する事も可能だ。もっとも、俺とここにいる由利だけが真の悪魔として覚醒している。他の者達はまだ覚醒はしていない。……が、強さは悪魔そのものだが。まあ……二人ほど手酷い歓迎を受けたようだが。」


「オクターヴか………」


「そんな名だったな。今の翔子にしても、か弱い女と侮るな。彼女は竜神ティアマトだ。吠えたら誰にも止められん。」


紅茶を啜りニヤリと微笑む。


にわかには信じ難い話だ。」


ルバートも紅茶を啜り心を落ち着かせる。


「好きなのね、紅茶。」


紅茶を飲むという行為がどことなく楽しんでいるように見えて由利が無意識に声を掛ける。


「ええ……不死鳥界は人間界のような娯楽はないから楽しむものと言ったら、剣の稽古か学問、そしてその合間の紅茶。それくらいしかない世界だ、時折退屈になるよ。」


「でも不死鳥界は自然で溢れているのでしょう?地上では失われつつある全ての生物の母よ。」


「母………か。良い事を言う。」


「ルバート、不死鳥王は人間界を破壊するつもりらしいが、理由はなんだ?人間界における環境汚染が理由か?」


由利がルバートの心を掴んだところで核心から話に入る。


「不死鳥王の目的まで知っているのなら話が早い。確かに不死鳥王は人間界を破壊する気だ。地上を人間に奪われてから我々不死鳥族はずっと人間を恨んできた。そこに人間界の環境汚染でまたも我々は苦しめられている。それに我慢が尽きたのだろう。だが私は人間界の環境汚染だけなら結界を張る事で不死鳥界を守れると思っている。なのに不死鳥王は人間界を破壊する事でケリをつけようとしているんだ。」


「しかしおかしな話だな?お前達不死鳥族の世界は人間界の時間軸を幹として創られている。地上に住む人間達は幹の中を循環する栄養分のようなもの。人間界を破壊すれば時間のバランスが崩れ不死鳥界も共倒れになってしまうではないか?」


「ああ。私もおかしいと思って考えたんだ。おそらく不死鳥王の真の目的は人間界に存在するオノリウスの魔導書だ。」


「………なるほど。魔導書を手に入れインフィニティ・ドライブを我が物にしようとしてるわけか。」


「それだけではない。不死鳥王は不死鳥の雛を殺し、シーミレを取り込もうとしていた………」


「シーミレ?なんだそれは?」


「不死鳥の雛にだけ宿る不死鳥の魂だ。霊魂とはまた別のものらしい。伝説の話だから嘘か誠かは定かではない。」


ヴァルゼ・アークの中でようやく話の糸が繋がり始める。

フォルテが不死鳥の雛であるフランジャーをさらい人間界に逃げて来た理由、不死鳥王が人間界に攻め込む本当の理由、そして、スタッカートに入れ知恵した人物がいて、そいつはヴァルゼ・アーク達レリウーリアの事も知っていてオノリウスの魔導書の存在も知っている事。

多分羽竜達の事も知られている。

途切れ途切れだった糸が綺麗に繋がった。

あのエデンと天界との衝突の中、どうやって生き残ったのか説明はつかないが、入れ知恵した人物は特徴からリスティだろう。

ヴァルゼ・アークも由利もそう確信していた。


「どこまでも目障りな奴だ。」


「え?」


「気にしないでくれ、こっちの話だ。」


ヴァルゼ・アークが何を言ったかわからないが、とりあえず一通り話はした。

本題はここからだ。ヴァルゼ・アークにスタッカートを止めてくれる事を協力してもらえなければ人間界に来た意味がない。


「それで、貴方は何をしに来たのかしら?」


こんな事を伝えにわざわざ人間界まで来たとは思えない。

もちろんおおよその見当は由利にもついている。

しかしそれを自分達側から言ってしまったのではこちらの手の内を晒す事にも成り兼ねない。

駆け引きは由利の得意とするところ。

駆け引きと言ってもルバートにその気が無ければ要らぬ詮索に過ぎないが。


「単刀直入に言う。不死鳥王スタッカートを止めてほしい。」


一言だがルバートの気持ちを代弁するには十分だった。


「止める?俺達に不死鳥王と戦えと?」


「戦わなくてもスタッカートに戦争を踏み止まらせてくれればそれでいい!」


「…………断る。」


「な!?」


同情で協力してもらう気など毛頭ない。相手は悪魔だ、すんなり話が進むとも思っていなかった。

でも会話をするうちに手応えはあった。最悪、交換条件を出されてもかまわないつもりだったのだが………断る?

本来ルバートは潔い男だ。断られればあっさり身を退くタイプなのだが、こうなったら理由を聞かずにはいられない。


「何故だ!?理由を聞かせてくれ!人間界を……地上を破壊する気なんだぞ!?そうなればお前達だって………」


「ルバート、勘違いしないでくれ。この世界が破壊されても、俺達は何も困らない。不死鳥王の好きにさせればいいさ。人間にとってもそれが一番かもしれないしな。」


「正気か?」


「正気だ。お前に協力しても何の得もない。ボランティア精神で大切な部下を危険な目に合わせるわけにはいかん。」


「交渉決裂ね。ルバート、交渉するにはカードが足りなかったようね。誠意だけでは何も始まらないのよ、いつの時代も。」


由利も損得で動きたいわけではない。でもやはり不死鳥族と渡り合うには何の得もない。


「ヴァルゼ・アーク……貴方にしか頼めないんだ。スタッカートを止めてくれるなら私はなんでもしよう。命だってくれてやる。」


「はっきり言っておく、お前の命にそれほどの価値はない。大体お前が不死鳥王を止める理由はなんだ?地上粛正なら願ってもない事だろう?」


「私は……今更人間界を破壊してまで不死鳥界を守る必要はないと思っている。」


「あらあら、随分と自虐的な意見じゃないかしら?」


ルバートの言葉は今までの雰囲気とは違って不死鳥界を見捨てるような言い方にも取れる。


「貴方達はしらないだろう。十万年も生きる我々がその数を増やせば自滅の道を行く。

しかし誰もが子孫を残したいと思っている。不死鳥王バウンスは、子孫繁栄は王位交代の時のみ認める掟を作った。本能と矛盾する掟とはいえしかたない事だと思って皆が納得をしていた。」


「でも現不死鳥王スタッカートはそうは思っていない。」


話の糸を由利が手繰り寄せる。

ルバートは何も言わずただ頷く。


「不死鳥界は故意に創られた世界。それ故、時間進行が地上より遥かに遅い。言わば私達不死鳥族は過去の時間の延長で生きている。それはありとあらゆる事が制限される事。今も言ったが、子孫繁栄も個人の意思では行えない。それは新しい思想を持つ若者が生まれて来ない事。結果、不死鳥界の進歩も無いという事だ。その原因が地上を奪った人間達にあると誰より強く主張していたのがスタッカートだ。住む土地を追われ、生きる上で様々な制限を受けざるを得なくなり、そして人間達の環境汚染による影響………彼の気持ちがわからなくもない。」


「なら何故スタッカートを止める?」


ルバートは親友であるスタッカートの心を痛いほどわかっている。でも人間と戦争をすればまた同じ事が繰り返されると思っているのだろう。

ヴァルゼ・アークにもルバートの気持ちが手に取るようにわかっていた。

そのうえで聞いているのだ。


「過去の時間で生きている私達が、現在いまの時間で生きている人間達を粛正するのは違う気がしてな。どんな世界も戦争をすれば苦しむのは民に外ならない。私はそれが我慢出来ないのだ。」


「そういえば、不死鳥界の環境汚染は人間界の環境汚染ではないと思っているみたいだが、根拠はあるのか?」


ヴァルゼ・アークがもう冷めきった紅茶で渇いた喉を潤す。それを見て由利がヴァルゼ・アークとルバートのカップに新たにポットから紅茶を注ぐ。

ポットの中の紅茶はまだ保温されているとはいえ、紅茶の良さを引き出すには至ってない。

ルバートにとってカップの中の紅茶が最後のオアシスになるだろう。


「人間界の環境汚染は今に始まった事ではない。なのに急激にその影響を受けるのはきっと他に原因があると私は睨んでいる。だとしたら無駄な戦いは避けるべきじゃないか?…………そう言い聞かせたんだが………」


苦しんでいる。何もかもに苦しんでいる。

ひしひしと伝わるルバートの苦悩が彼自身を飲み込み始めていた。

何も言わずヴァルゼ・アークも由利もルバートを見守る。

例えどんな理由があるにせよ結論は出ている。

すくっと立ち上がり、ヴァルゼ・アークと由利に礼を言う。


「ありがとう。貴方達の好意は忘れない。」


「私達は何もしてないけど?」


由利が笑顔で応える。


「いや、見ず知らずの私を歓迎してくれた事、貴方達の心を感じた。」


右手の拳を握り胸に当てて頭を下げる。不死鳥族なりの目上の者への礼の尽くし方なのだろう。

由利がルバートを見送る為、玄関まで同行する。

幅の広い階段を降りて行く途中、玄関先で立っている翔子に気付く。


「君にも礼を言わなければならないな。美味しい紅茶をありがとう。稀に見る達人だね、君は。」


ストレートな褒め言葉に翔子が照れ笑いを浮かべる。


「彼女は紅茶に限らずどんな飲み物も上手に入れるのよ。」


由利が追加攻撃をしてくるので恥ずかしくなる。


「そうか……またいつか君の入れた紅茶が飲めればいいが……」


「いつでもいらっしゃいな。あっ、お店には来ないでね!無銭飲食はお断りだから!」


舌を出して悪戯な笑みでルバートを見送る。


「竜神ティアマト………だったかな?」


「翔子。中間翔子よ。ティアマトは戦闘状態の時限定の名前よ。」


「翔子………ありがとう、いつかまた来るよ。必ず。その時は純粋に紅茶を楽しみにね。」


そう言ってレリウーリアの屋敷を去って行く。


「屈託の無い人ね。」


ルバートの背中を眺めて由利が呟く。


「どんな話をされたかは存じませんが、彼には頑張ってほしいです。」


自分の入れた紅茶に興味を持ってくれたのは由利の他はルバートだけだった。

その想いから彼を気遣う。


「でも私はヴァルゼ・アーク様一筋ですからね!」


「はいはい。」


何かとヴァルゼ・アークの傍にいる由利に嫉妬をぶつける。

それを軽く流すところが由利の大人振りを伺わせる。

自室の窓からヴァルゼ・アークもルバートを見送っていた。


「ルバート……………全てを捨ててでも誰かがやらねばならぬ事がある。それを忘れるな…………」














「ハァ…ハァ…」


不死鳥界の環境汚染が本当に人間界の環境汚染が原因なのか?

走り出したスタッカートを止めるには、証拠を掴むしかない。

トレモロには何故か確信がある。

不死鳥界の異変は人間界の影響だけではないと。

女の第六感とはまた別の感覚がトレモロを突き動かす。


「ここね………」


立ち入りを禁じられた区域を守衛のいない崖側の細く急な坂道から回り込んだ。

女性であるトレモロにはかなりキツイ道のりだった。

この区域の空は、灰色に染まり、草花は枯れ、空気が淀みきっている。

守衛はここからかなり離れた場所で見張りをしている。

気付かれてはいない事を確認してから、原因の洞窟へと踏み込む。


「随分と酷い空気ね………でもどうしてここだけがこんなに酷いの?」


洞窟内は外に比べてまた一段と空気が汚れている。

木の棒に炎の魔法で火を付けたいまつを作り、それを頼りに奥へ奥へと一人歩く。


ガコンガコンガコンガコン…


「?」


どこからか何か音がする。

その音は次第に大きくなる。


「何の音?」


怪しげな音がする方へ進んで行く。

光が漏れている。不審に思いゆっくり近付いて行く。


「これは………!!?」


岩影から除き見た先には見たことも無い大きな何かの装置が音を立てて動いている。


「何なの………これ………」


下は大きな釜のような形をしていて、煙突らしきものが無数に天井へ伸びている。


「それにしてもよく考えられましたな、いやはや感服です」


「タセット殿の協力があっての事ですぞ。謙遜はいけませんなあ。」


話し声がする。


「タセット………?」


確かにタセットと聞き取れた。

心臓がその息を早くする。


「しかし不死鳥王も不憫ですな、まさか側近に騙されているとも知らずに……」


「声が大きいですぞ!リスティ殿!」


−リスティ………!?あの得体の知れない老人が一緒なの?−


早まる心臓はこれ以上踏み込むなと警告している。

しかしトレモロはそれに気付かずもう少し近付こうとする。

その時迂闊にも躓いて転んでしまった。


「キャッ!」


「誰だ!!?」


タセットが小さな悲鳴に気付いて声を上げる。


「…………っ!」


すかさず落としたたいまつを広い上げ逃げようとした時、誰かに手を踏まれた。


「イタイッ!!」


「これは失礼しました。トレモロ様。」


「………お前は!!!」


じりじりと自分の手を踏み付ける者の顔がたいまつの火で下から照らされている。


「トレモロ様!!!」


駆け付けたタセットがトレモロを見て驚く。


「タセット!!これは一体どういう事なの!?」


タセットの顔見たら怒りが込み上げてきた。


「ご自分の状況がわかってらっしゃらないようですな。」


「離しなさいっ!!」


踏み付けていた手を掴み、無理矢理立たせ、トレモロに状況の把握を要求する。


「やれやれ、気付かれてしまいましたな、タセット殿。」


リスティがタセットに声を掛ける。


「リスティ………お前が元凶か!」


「トレモロ様、言葉が過ぎませぬか?私は何もしておりませんぞ?」


リスティを睨み付ける。


「気丈な性格は兄譲りか………はたまた恋人の影響かな?」


トレモロの手を力強く抑えている人物から皮肉が飛ぶ。


「お前まで……!!こんな事が許されると思ってるの!?」


「許されますとも。貴女の恋人がこれから犯す過ちに比べれば何の事はない。」


薄気味悪く笑う。


「どうされますか?タセット様。」


男がトレモロの生殺与奪をタセットに委ねる。


「………………人間界の環境汚染は益々酷くなって来ましたなあ………リスティ殿……?」


「そうですなあ。こんなところに踏み込んでは命なぞいくらあっても足りませぬ。ただ残念な事に好奇心旺盛な若い女性が一人犠牲になってしまいました。」


「………わかりました。そのように致します。」


タセットとリスティのやり取りから男がトレモロの始末の仕方を理解する。


「……………!!!!!!」


トレモロが言葉を失くし、身体を震わせる。


「恋人と兄の泣く顔が目に浮かぶわ。ハハハハ!」


「下郎がっ!!離しなさいっ!!」


泣きながら必死に抵抗するものの無駄なあがきにしかならない。

トレモロの頚椎に鋭い一撃が入りトレモロはそのまま気を失う。


「兄…………さん…………スタッカート…………」


愛する兄と恋人の名がこの世の最後での言葉となった。


罪のない運命がまた一つ消えていった………


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