6 亜人の里
俺の計画は拍子抜けなほどに上手くいった。
設備は立派だが、それ以外はまるでなっていないようだ。
地上に出た俺とゲイルは隣接する魔石工場に向かった。
採掘した魔石はそのままでは危険なため工場で加工するのが一般的なのだそうだ。
魔石工場は採掘場よりも警備がザルだった。
力のない女しかいないこともあって油断していたのだろう。
解放者の情報通りゲイルの妹は魔石工場にいた。
蜥蜴顔の兄に非常に似ていたのは残念だったが……
逃走の際、追っ手に見つかってしまったが、ゲイルはやはり凄かった。
両脇に妹と俺を抱えたまま暴風のようにレムナントの国境を越えていった。
そこからはひたすら移動だった。
ゲイルの妹はレイナというらしく、最初はヒューマンの俺に警戒していたがだんだん打ち解けていった。
休息を取りつつ一週間移動すると森の中に隠れるように集落があった。
門にはゲイルたちと同じ、リザードマンが甲冑を纏い矛を携えて立っていた。
「止まれ!!何者だ」
「久しぶりだな、カイル。俺だ、ゲイルだよ」
「兄さん!!それにレイナ!!……生きていたのか!!?」
「勝手に殺さないでよ、カイル兄」
「そうか生きていたか、無事で良かった。ゲイル兄さんを信じていたが……二人とも無事で良かった」
カイルと呼ばれたリザードマンは感極まったのか涙目になっていた。
それから、俺を無視した感動の再会はしばらく続いた。
俺が里に入ることに感してはリザードマンたちは難色を示したが、ゲイルとレイナが俺のことを解放者であり、共に脱走した仲間だと説明すると最後には受け入れてくれた。
里の中ではリザードマンが50人ほど暮らしていた。
こういう隠れ里のこと亜人の里と呼ぶそうで、世界には亜人の里がいくつもあるそうだ。
里には結界が張ってあって解放者であっても滅多に入ることはできない。
それに対しては、説得してくれたゲイルとレイナには感謝しかない。
最初は苦労したが、リザードマンの里での日々は今までに感じたことがないほど平穏なものだった。
続きます。