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5 脱走

「ゲイルは何で奴隷になったんだ?強そうなのに、捕まったのか?」

「……俺には妹がいてな。その妹が、一月前に奴隷商に捕まった。レムナントには国を囲むように結界が張ってあって出るのは簡単だが、入るには奴隷になるしかなかった」


「無茶するなぁ。それで妹さんはどこに」

「解放者の情報によると、魔石工場にいるらしい」


「解放者って?」

「ヒューマンでありながら俺達に味方するものの総称だ。ヒューマンの側からは裏切り者とかブラック、汚れた血とか言われているがな」


汚れた血……何か聞いたことがあるな。

あぁ!思い出した。

「俺もそう言われたことがある!あと、カード見せろとか言われた。カードって何?持ってないんだけど」

「カードはヒューマン社会で使われている身分を証明するものだ。通常白色だが、解放者の色は黒になる。カードを見せられない時点で解放者と疑われても無理は無い」

そんなの知らねーよ…


「妹さんを助けるってことはゲイルも脱走するのか?」

「も……ということはお前もか。しかし、この採掘場は思った以上に厄介だ。専用キーがなければ地上はおろか、他の区画にも行けやしない」

「ああ、そこで相談だ。俺に策があるんだが、一緒に脱走しないか?」





~採掘場管理人室~


退屈だ。

採掘場の責任者であるシュルツ=ド=ヴァーナはあくびを噛み殺していた。

ヴァーナ家はレムナントでも中堅の貴族であり、シュルツはそのヴァーナ家の八男である。

いくら貴族といっても、八男では採掘場の責任者という誰でもできる仕事しか回ってこなかった。


出世の可能性はもうないが、ここの仕事も悪くないとシュルツは思っている。

首輪をはめておけば奴隷たちは従順だし、たまに鞭で叩いておけばストレス発散にもなる。

遠征軍に比べれば遥かに楽な仕事だ。


んっ…今日はやけに騒がしいな。

奴隷の一人や二人殺しとくか、少しはおとなしくなるだろう。

なに、代わりなど掃いて捨てるほどいる。


ダッダッダッバンッ

「ヴァーナ様大変です!!C区画で魔石が暴発しました!!」

「何だ、騒々しい。魔石の暴発など珍しいことではなかろう」

「それが、暴発はC地区の至るところで起こっており、騎士数名が負傷しております!!加えて、奴隷どもがパニックを起こして収集がつきません!!」

シュルツの顔が歪む。


「なぁに!!すぐに案内しろ!!」

「はい!!」


すぐに現場に向かってみると、事態は思っていた異常に酷いものだった。

騎士は少数なのに対して、奴隷はこの区画だけで二百人以上いる。

奴隷どもは度重なる爆音に驚いてパニック状態、騎士の方は負傷しているものもおりそれどころではないようだ。

爆発は尚も続いていた。


「奴隷ども落ち着け!!お前たちもさっさと静めんか!!」

「うぅ……」

「痛ぇ……何でこんなことに…」

騎士は呻くばかりだ。

こんな所に配属されているくらいだ。

優秀な騎士などいるはずもなかった。


その後も騒動は続いた。

結局、シュルツ一人では手に終えず、他の区画の騎士たちも呼び寄せて事態の収集に当たった。

一段落ついた時には、断続的に続いていた魔石の暴発もいつの間にか止んでいた。


「ふぅ…まったく!使えん奴らばかりだ」

シュルツは管理人室で一人憤慨していた。

騎士たちの教育も今後はせねばならんかもしれん。

それにしても、不自然な点が多い。

魔石がああも何度も暴発するなど初めての事態だ。

それに、騎士たちは重症のものが多かったが奴隷どもは皆軽症だった。

せいぜい爆風で飛んできた小さな破片で怪我をしたぐらいだ。

まるでこちらを狙い打ちしているような………。

考えすぎかと顔を上げると違和感を感じた。

有るべきものが無いような。

そう、壁にかけてあった鍵が無くなっていた。

この施設のマスターキーだ。


コンコン

「入れ」

ガチャ

「ヴァーナ様ご報告があります。C地区の騒動は完全に収まりました。奴隷どもも牢に戻しております。しかし、C3地下牢の2名が現在も見つからず捜索中であります」

「捜索中……だと」

「はっ!!どこかに隠れているのかもしれません。ですが、採掘場の中ですのですぐに見つかるでしょう」


そう自信満々に言う部下の顔とマスターキーが不在の壁を交互に見て、顔がしだいに青くなっていくシュルツであった。




続きます。

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