4 異世界の知識
その後、ゲイルと話しているとおぼろ気だがこの世界の姿が見えてきた。
世界の覇者はやはりというか、何というかヒューマン(人間)だった。
最初に見た大通りの様子からもそうじゃないかと思った。
ヒューマンという一つの種族だけで、他の全ての種族に匹敵するほどの数がいるらしい。
人間はあらゆる種族に攻め入り、そのことごとくを支配していった。
ヒューマンに滅ぼされた種族は両手の指では数えきれないほどだという。
百年ほど前まではヒューマン対他種族という形で拮抗していたそうだが、今ではもうヒューマンに勝てる種族はヒューマンだけである。
戦争という言葉はヒューマンの国対ヒューマンの国でしか使われなくなっている。
現在の主な国家は三つ。
他にも国はいくつもあるらしいがほとんどが三大国の勢力のどれかに属している。
その内の一つが俺達がいるレムナント国だ。
レムナントは東の覇者であり、魔石の産出量と輸出量は世界一だという。
俺達が必死に採掘した魔石は魔法の原料になるらしい。
魔法があることは何となくもう分かっていたけれど、改めて聞くと異世界にきたことを実感してしまう。
魔石無しでも魔法は発動するらしいが、魔石があるのとないのとでは雲泥の差だという。
正直よくわからんが、魔石は原油みたいなもので、レムナントの国王は石油王のようなものだろうか。
当たり前の世界情勢を知らない俺にゲイルは呆れていたが、記憶が無くなっているの一点張りで何とか乗り切った。
「じゃあ、ゲイルも魔法を使えるのか?」
「簡単な魔法だけは使える。もともとリザードマンは魔法が得意なものが少ない。魔法を最も上手く扱える種族はエルフだろう」
ゲイルによると、種族によって得手不得手があるらしい。
因みに、ヒューマン(人間)は肉体的な強さも魔法の強さも高い水準にあり、そのことが他種属を圧倒する要因の一つだという。
ステータスにおける"力"は肉体的な強さに関連し、"精神"は魔法の強さに関連しているそうだ。
次にスキルについてだ。
スキルは大きく分けて、武術と魔法の二種類に分けられる。
○○術と書かれているのが武術で、それ以外が魔法という認識だ。
実際の所は便宜上誰かがそう名付けただけで、よく分かっていない部分も多いという。
例えば、ゲイルのスキルに自己治癒というものがあるがこの分類でいくと魔法である。
ところが、このスキルはどうも"力"の強さに関連しているらしい。
リザードマンは武術が得意な種族のようだ。
と言うことは、俺の爆破スキルは魔法というこということになる。
俺も魔法が使えるのか。
「どうやったら使えるんだ」
「その魔法を使いたいと強く念じれば使えるはずだ」
"爆破"と心の中で爆発をイメージする。
すると、手の中でボンッと爆発が起こった。
にも関わらず、俺の手には火傷一つ無かった。
これも爆破スキルの恩恵だろうか。
イメージを変えてみると、少し離れた場所でも土を巻き上げて小さな爆発が起こった。
ゲイルによると、魔石を使えばこの威力が何倍にも跳ね上がるのだ。
この時、俺は思った。
これは脱走に使えると。
異世界の常識。
続きます。