3 初めての仲間
脱走するにしてもまずは情報だ。
俺は部屋の中を見渡してみた。
どいつもこいつも呆けた顔をして、声をかけてみても反応がほとんどない。
その中で一人だけ目に力が残っているやつがいた。
「あのー、すみません」
「話せるようになったか。首輪が壊れたみたいだな。幸運と言うべきか、不幸と言うべきか」
反応はあった。
「どういうことですか?」
「首輪の機能だ。知らないのか?」
蜥蜴みたいな男は少し驚いた様子だ。
「すみません」
「いや、別に良いさ。これは常識だと思うんだが、俺達が着けている隷属の首輪にはある特殊な機能がある」
「特殊な機能?」
「不思議に思わなかったか?ここの連中は誰も話さない。黙々と採掘し続ける。お前も命令されることに何の疑問ももたなかっただろう?」
「確かにそうですね」
そうだ。
命令されることに違和感がなかった。
「隷属の首輪は対象の思考を奪う。つまり、ここにいるやつらは人形同然ってことだ。隷属の首輪は20年は持つと言われている。お前のは古くなっていて機能停止したんだろう。ここの管理が杜撰だったおかげだな」
「昨日からやけに頭がクリアだと思ったらそういう理由か。じゃあ、貴方の首輪も古くなっていたんですか?」
「いや、俺はリザードマンの戦士だからな。多少の訓練はしている。どういう理屈かは知らんが、精神が高いほど隷属の首輪の効果は低くなるようだ」
「精神って何ですか?」
蜥蜴男は苦い顔をした。
「本気で言ってるのか?お前、どこかの山奥ででも暮らしていたのか?」
「すいません。常識に疎いもので」
と言うよりも、蜥蜴顔の貴方に日本語で常識を問われていることに驚いています。
「ステータスで確認してみろ。心の中でステータスと念じるんだ」
何か、どこかのゲームみたいだな。
ゲームなんてやったこと無いけど。
''ステータス''心の中で念じてみた。
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名前:§&ヱ∬
種族:ヒューマン
クラス:なし
属性:火
力:7
精神:13
スキル:爆破Lv1
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何かよく分からんが名前がバグってた。
何だ、これ。
「名前がバグってるんですが…」
「どういうことだ」
「読めないんです。ステータスに書かれている文字が」
「そんなことは聞いたことが無いな」
蜥蜴男は考え込んでしまった。
「そうだ。俺の名前を教えていなかったな。俺は誇り高きリザードマンの戦士、ゲイルだ」
「ゲイルさんですか」
「さんは要らん。それと、敬語も要らん」
見かけによらず気さくな人だった。
「そうですか…ぃや、そうか。俺の名前は………………誰だ」
ん、おかしい。
自分の名前が思い出せない。
どういうことだ。
「記憶が欠けているようだな。隷属の首輪の影響かもしれん。そうか…それでステータスが」
ゲイルは一人で納得しているようだった。
まぁ、とりあえず命に関わることじゃない。
それは、おいおい考えるとしよう。
ついでにゲイルのステータスを教えてもらった。
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名前:ゲイル
種族:リザードマン
クラス:竜戦士
属性:土
力:326
精神:255
スキル:剣術Lv6 槍術Lv6 斧術Lv5 弓術Lv2 体術Lv5 竜魔法Lv1 自己治癒Lv2
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比べ物にならなかった。
リザードマンは良いやつです。
続きます。