1 目覚め
「ここは………どこだ?」
目が覚めて最初に目に入ったのは見慣れた天井ではなく、雲ひとつない空だった。
周りを見てみると人、人、人だ。
ただし、普通の人間だけでは無かった。
獣の耳や尻尾を着けたやつや、毛むくじゃらのやつ。
果ては全身を鱗で覆われた蜥蜴みたいなのもいた。
だけど、それらには全て首輪がつけられていた。
「なんだ夢か」
すぐに夢とは気付けなかった。
夢と言えば、それは悪夢だったからだ。
大抵は大勢から袋叩きに合う夢。
寝ても覚めても地獄。
いよいよ明日は決行日だ。
気の高ぶりからおかしな夢を見ているのかもしれない。
ここは大通りのようだ。
道行く人が俺のことを見ては顔をしかめている。
ふと、自分の姿をみるとどこもおかしいところはない。
いつも通りのボロい服を着ている。
「おい!」
しかし、リアルな夢だ。
いつ覚めるのだろうか。
「おい!!お前聞いているのか!!」
えっ!!
前を見ると、大柄の騎士風の男がこちらを睨んでいた。
「お前そこで何をしている。通行の邪魔だ」
「あっあー、すみません」
慌てて道の端に移動する。
「その奇妙な格好はなんだ?お前特区の人間じゃないな。どうやって潜り込んだか知らんが、カードを見せてみろ!」
んっ?カード?何のことだ?
「早くしろ!!」
「いや、早くしろと言われても…」
俺にどうしろと…。
「貴様抵抗する気か!」
してません。
「もしや、汚れた血か!許せん!!」
いや、何それ。俺に喋らせろ。
その瞬間警棒で殴られ、再び俺の意識は闇に消えていった。
「ここは………どこだ?」
俺は今日2度目となる言葉を吐いた。
暗い。臭い。汚い。
そんな言葉しか出てこない場所だった。
ここは部屋か?
部屋には扉と隅にトイレのようなスペースがある。
換気口のようなものもあるが、この臭さだと本当に機能しているのか疑問だった。
「トイレってこれじゃ丸見えだろ………」
周りにはたくさんの人?がいた。
ほとんどが外見がおかしい連中ばかりだった。
20人はいるだろうか。
全員多分男だろう。
俺のような人間は他に2人だけだった。
大通りで見たように、皆首輪をしていた。
そして、何故か俺の首にも首輪があった。
声を出したことで何人かがこちらを見たが、すぐに興味無さげに寝だした。
ガンガンガン
「お前ら仕事の時間だ!早くしろ!!」
さっきと同じような騎士風の男が激を飛ばす。
それに、呼応するように周りの奴らがのそのそと移動しだした。
俺もそれに習って移動する。
こういう場合は極力目立たない方が良い。
経験則でそれを知っていた。
暗い通路を移動すると、突然広い洞窟のような場所に出た。
ゴツゴツした岩肌が所々に見え、首輪をつけた奴らが黙々と掘っていた。
「お前らも早く掘れ!貴様らのような卑しい血でも我々のために生きられるのだ。感謝するが良い!」
そこから俺の新しい生活が始まった。
続きます。