プロローグ 独白
よろしくお願いします。
本当に救いのない人生だった。
物心ついたときには親はいなかった。
天涯孤独な俺だったが、遠い親戚を名乗る夫婦が俺を引き取った。
夫婦は何も俺を憐れんで引き取ったわけではなかった。
完全に俺の親の遺産目当てだった。
俺の両親はちょっとした資産家だったらしい。
家に俺の居場所は無かった。
庭に置かれた物置小屋に押し込められ、食事は一日一回、空腹で庭に生えている草を食べて過ごすこともあった。
ちなみに、この豪邸と言っても良い家は元々俺の両親のものだ。
義父は酒が入るといつも俺を殴った。
義母は俺に嫌味を言うのが趣味のようだ。
夫婦には俺と同い年の子どもがいた。
こいつのおかげで、学校でも地獄だった。
殴られるのは当たり前。
虫を食べさせられるのは日常茶飯事。
全裸にされ、真冬の池に投げ入れられた時には本当に死んだと思った。
クラスの人間は皆奴の味方で、教師に訴えても相手にされなかった。
許せなかった。
この理不尽が。
なくなってしまえと思った。
こんな世界。
みんな殺してやる。
義父も義母も義兄も教師もクラスの奴らも全員殺してやろう。
俺は確実に奴らを殺せる方法を考えた。
直接殺すのはまず無理だ。
俺はお世辞にも強いとは言えない。
それどころか、長年の栄養不足であばら骨が浮き出ている。
なら、絡め手だ。
毒殺も考えたが、毒を入れるチャンスがないし、俺の渡したものを奴らが食べるとは思えない。
考えぬいた結果が爆殺だった。
爆弾に関する知識を集め、近所の花火師の家に忍び込み爆弾を作った。
明日はこれを奴らの寝室や家にセットする。
この地獄がやっと終わる…そう思った。
その夜、俺は爆弾の誤差動であっさり死んだ。
続きます。