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絶望と共に歩く少女  作者: 皇 欠
―冒険者編―
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冒険者編―第15話―

「ここが僕たちの家です」


子供たちに連れられてきたのは中央区。貴族の屋敷が立ち並ぶ区画の一角だった。

ここ中央区はその区画の重要さから入るにも常に兵が常駐している関所を通らねばならず、私たちみたいな平民がそう簡単に入れる場所ではない。こっちの街に数日でこんな場所に入れるとは人との巡り合わせは不思議なものだとしみじみ思いつつ、彼らに案内されるままに屋敷に入る。

中に入ると左右をメイドさんが列を成してお辞儀をして出迎え、視線を上に向けると高い天井には豪奢なシャンデリアが飾られ、煌々と光を降り注いでいる。火を使ってないところをみると魔法の光なのだろう。魔術師が魔術を使ってるのか、シャンデリア自体が魔法具なのかは分からないが、もし魔法具ならばきっと凄い値段がすることだろう。

魔法具とは魔法を付与された武器や道具のことで、ある特殊な方法を使って作られている。魔法具は国が徹底的に管理しており、その製造法も国が秘匿している。私たちが魔法具を手に入れるとしたら大金を払って国に依頼するか、迷宮に挑戦して運よく手に入れるかの二つしかない。


「おかえりなさいませ。クラレット様。ヘリオ様。いらっしゃいませお客様」


たぶん最初が長男、次が次男の名前であろう。それを声とお辞儀を揃えるメイドさんたち。タイミングも角度も全く一緒で相当な教育を施されていることが窺える。


「うわーすごいね~」

「「「「……………」」」」


唯一声を発したのはランだけ。ロロとその他の大人組みはあまりの煌びやかさに言葉を失い、入り口で足を止めていた。


「どうかしましたか?」


入り口から動かない皆を見て怪訝な声を上げるクラレット君。


「……ああいやすまない。ちょっと世界の違いを実感して放心していただけだ」


声を掛けられてようやく起動したカーンさんがそれぞれの肩を叩いて現実に引き戻し、ようやく屋敷の中に入ってきた。


「大丈夫ですか? 一瞬魂が抜け出してるように感じましたが……」

「フェル君は随分と冷静だね……ラン君はともかくロロ君は僕たちと同じようにかなり驚いていたというのに」

「これでも驚いてるんですよ。ただ私は考えてることが表に出にくいだけですよ」


まぁある程度この展開は予想できたから心構えが出来たのが一番大きかったのだけれどね。


「こちらへどうぞ。両親が待っています」


豪奢な紅の絨毯が敷かれた廊下に足を取られているロロを助けながら一室の前に辿り着く。


「お父様。お客様をお連れしました」

「入りなさい」

「失礼します」


扉越しで少し聞き取りづらかったが威厳に満ちた印象を持った。

中に入るとそこは書斎のようで左右にはなんの本かは分からないが様々な蔵書が収められ、その書斎に唯一置かれた細かい彫が施された事務机で作業していた壮年の男性が顔を上げた。貴族らしい細かい刺繍を施された上等な服に身を包み、これまたこの世界では珍しい眼鏡越しに私たちを眺めていたが、羽ペンを置き、眼鏡を外し、柔和な笑顔を浮かべて口を開いた。


「わざわざご足労頂いてすまない。息子たちの窮地を救ってくれて本当にありがとう」


そういって頭を下げる男性。それに応えたのは先ほどまで雰囲気に飲まれてたカーンさんだった。


「いえ俺たちは冒険者として当然のことをしたまでです。改めて御礼を言われるほどのことではありません」


おおーカーンさんが凄くかっこいい。少し臭い気もするけどあれだけ堂々と言い切るのはなかなか難しい。カーンさんの答えに満足したのかあちらさんは何度も頷いて今度はこっちに向けてくる。


「そうかそうか。そちらのお嬢さん方も息子と対して変わらんというのに随分と勇敢なんだな」

「お褒め頂き光栄です。ですが私たちがご子息を助けられたのもそちらのカーンさんたちが先に保護され、体を張って守ったからです。ですので賞賛されるべきはカーンさんたちだけですよ」


出来るだけ丁寧な言葉を選びつつ、スカートの端を摘まんで礼をする。確か貴族の淑女の正しい作法がこれだったはずだ。一度目を見張った後顎に手を置いて更に私を見る目が鋭くなる。


「謙遜しなくていい。なんでも君たちは先日冒険者になったばかりなのにオークを怪我一つなくオークを倒したらしいじゃないか」


「僕が真っ二つに斬ったんだよ!」


ランが挙手して自分の手柄だとアピールしてくる。ちょっと黙っててくれないかしら……。そのうるさい口を塞いで強制的に黙らせて頭を下げる。


「申し訳ありません。この子はまだ敬語を使えないんです。お許しください」

「気にするな。私は逆に君のような年齢でここまで賢い子がいることに驚いているのだよ」


私を見つめる瞳のその奥になにか光りが灯ったのがわかった。


「私は賢いわけではありませんよ。それを言うならご子息だって随分利発な方ではないですか」

「この子等が本当に利発なら二人で森に入ったりはしないだろうよ」

「ご子息だってたまにはやんちゃしたい時だって思うときがあるんですよ」

「違いない」


私の言葉に茶目っ気たっぷりに微笑まれた。


「あらあらあなた。お客様にお茶も出さず、こんなところで立ち話とはダメですよ」


唐突に響いた鈴を鳴らしたような声に振り返ると、白いワンピースに身を包んだ美女が姿を現していた。たぶんクラレット君とヘリオ君のお母さんだろうけど……それにしては若い。二人の子供がいるよには思えなかった。


「ああそうだな。皆さん申し訳ない彼女が食堂に案内するから付いていってくれ。私も後から行く」

「さぁさぁどうぞ皆さんこちらですよ」


おとなしく私たちは美女さんの案内にしたがって書斎を後にした。



読んでくださった方ありがとうございます。

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