2 カワサキ NINJA ZXとの出会い
私もカッコいいバイクに乗りたいな。いい歳だから今更だよね。なので主人公の女性には思い切り気持ちよく走ってもらいたいと思っています。でもそうならないのが世の常です。
前々からバイクに乗りたいと思っていた。男と行った鳴門スカイラインでバイクが走って行くのを見た時からだ。
島と島を繋ぐスカイラインを一台のバイクが飛ぶように駆け抜けていく。いつか乗ってみたいと思った。誰かの背に乗せられてではなく自分だけで走りたい。
あの野郎との思い出が被るのはいけ好かないが、あの風景に魅せられた私は市内のバイクショップを訪ねた。
店内に置かれているのは中古車だろうか、あの時見たバイクを探す。
しかし、記憶があいまいでバイクの形まで覚えていない。黒っぽいバイクだったような。
「どのようなバイクをお求めですか」
定員が近寄ってきた。30歳ほどのいい男だ。
「特には決めていません。自由に見せてもらっても良いですか」
「勿論です。ごゆっくりご覧下さい。どのような事でもいいので質問があれば仰って下さい」
店員はそう言うと、離れて行った。
そっけない接客だ。もう少し話してくれてもいいのに。自分から自由に見せてくれと言っておきながら、定員の接客に不満を持つ。私はほんの少しだけ我儘なのです。
少しカッコいい定員を目で追うのを止め、またバイクに目を向けます。
しかし、どのバイクが自分に合うバイクなのか解らない。
漠然と陳列されたバイクを眺めて行く。全体的に黒っぽいバイクが多い中、1台だけ全身が緑のバイクが目に留まった。
緑色なんて車でも見たことがない。また趣味が良いとも思えない。でも緑の機体と言えばエバンゲリオン1号機だ。少し好きかも。
また車体にはNinja ZXと書いてある。忍者か、それもそそられる。
これ欲しい。
私はこのバイクに乗る。そう決めた。
でも、免許がない。
「すみません」
私は店員さんを呼ぶ。直ぐに先ほどの定員が対応してくれた。
「いかがされましたか」
「少し教えてもらいたいことが」
「はい」
「このバイクに乗るにはどのような免許が必要なのですか」
「えっ? あっ失礼しました。このバイクは400ccですので、普通2輪の免許があれば乗れます」
「ありがとうございます。免許が取れたらまた来ます」
「頑張ってください。待っています」
優しそうな人だった。
さて、バイクショップを出た、その足で自動車教習所へ向かう。
そこで入校説明を受ける。市役所へ行き必要書類をそろえる。再度教習所へ戻り手続きを終える。
1日で、購入予定のバイクを決め、自動車教習所の入校手続きも終えた。ライダーたる者、素早く行動できなければいけない。
ライダーの卵も同様です。
入校してからは、特に面白い事はなかった。私の黒歴史が数ページ更新されただけ。
途中、心が折れそうになった。一本橋とか、一本橋とか、一本橋とか。
なぜ、教習に一本橋があるのか、公道に一本橋があるのか、免許を取得したその後、一本橋を渡らなければならない場面があるのか。幅30㎝、15mを7秒以上で通過しなければならない公道があるのか、あるのなら持ってこい。
私は心が折れそうになるその度に、緑のバイクに跨り、あのスカイラインを駆け抜けていく自分の姿を思い浮かべ、耐えました。
事前に乗るバイクを決めていたのが勝因でしょう。イメージが鮮明でした。
そう言う訳で、人より少し時間がかかったが、無事取得できました。よし!
私は、約束通り、再び来店した。
今回もイケメンの店員が対応してくれた。
しかし、そこにあった物がなかった。何度も妄想した物が、そこにはなかった。
「あの、一月ほど前にここにあった緑色のバイクは売れてしまったのですか」
あの子はどこに行ったの?
あの緑色のバイクは半月も前に売れていた。
私は同じ型の新車を購入することにした。
筆おろしは私がいたします。よし。




