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テスト返却日


「不安だなぁ、」

机の上で寝そべりながら気怠そうに僕はそう呟く。今日は答案用紙が返ってくる返却日である。

今朝、鈴木さんと話している時、こんな話をした。


「あっ!」


「…どうかしました?」


「そう言えば私、この前田中さんに物理を教えてもらうって言う話してましたよね!」


ビクッ

「そ、そんな話もありましたね」

(まずい、あの話覚えてたんだ鈴木さん。…せめて僕の得意教科に切り替える事は出来ないかな、)


「そうだっ」


「?、田中さんどうかしたの?」


「あっいや何でもないです!気にしないでください」

(まずい!つい心の声が…)


「気になるじゃーん教えてよー田中さーん!」


「分かりました。今日のテスト返却で各教科の点数を見て、お互いの1番良くない点数を取った教科を教え合うっていうのはどうですか?」


「う〜ん」

(頼む鈴木さん!僕の案を承諾してくれっ!)


「それ良いねっ!お互いの不得意な部分を支え合えるし!もしも双方同じ教科の点数が悪くても1人より2人の方が勉強も捗るし!」


「じゃあ、早速テスト返却後は、放課後に僕たちの教室で集合という事で良いですか?鈴木さん」


「うんわかった!放課後に集合ね!楽しみにしてるよ!」







…と言う感じの話になった訳だけども、これで鈴木さんのテストの点数で物理が1番低かったら結局僕が教える事になるんだよなーこれ、運試しでとても不安に感じる。歴史か保健なら僕も教える事が出来るんだ!だから鈴木さんには申し訳ないけど低い点数を取るならこのどっちかに…


「はぁ…」

この考えは良くない。こうなったのだって僕が見栄を張ったのが原因なんだから、鈴木さんの点数が低くなってくれとか考えるのはもう辞めよう。

数分後、教室の扉が聞き慣れた音を立てながら開いた。すると何故か元気そうな赤崎先生が入って来た。朝騒がしいうちのクラスが少し静かになった。




「せんせー!」


「んー?どうしたー?」


「今日は美久せんせーは来ないんですかー?」


「美久先生は今日は休みだー。その代わり今日はこの私がこのクラスの担当をするぞー」




「「「「「「えぇぇぇぇぇぇ!!!」」」」」」



「うっそー、みっちゃん来ないのー?」コソコソ

「しかも赤崎かよーだるぅ」コソコソ

「マジ?しゃばいよ流石」コソコソ



「えぇとは何だえぇとは!失礼だぞお前ら!

…とりあえず、朝のホームルームを始めるぞー。日直はキチっと!元気良く挨拶を!」


  「…起立ー、礼!よろしくお願いしますー」


「「「「「「「よろしくお願いしますー」」」」」」」



今日は美久先生が来てないらしい。美久先生は僕らのクラスの担任なのだけれど、いつも元気な美久先生が休むなんて初めて見たのでクラス中が驚いていた。僕も少し驚いた。何か美久先生の身に危ない事でもあったのかという考えが一瞬頭をよぎったほどの衝撃だった。


「みっちゃんせんせー今日来ないのかー、」

「はぁ、寂しいなぁ…」


鈴木さんは余程残念がっているみたいだ。頬杖を突いて寂しそうな表情で窓の外を見ている。鈴木さんは美久先生の事をみっちゃんせんせーと呼んでいて普段から仲良くしているからか、かなり落ち込んでいる様子。

その後、少しテンションが低い赤崎先生のホームルームが終わった僕たちは、少しの休憩時間を挟んだ後にテスト返却の時間になった。


「赤点は嫌だ赤点は嫌だ赤点は嫌だ」

「あばばばばばばばば」

「NO!NO!NO!NOoooooooo!!!」


結果が返ってくる前からクラスの大半が阿鼻叫喚だ。休憩時間はそこまで騒がしく無かったクラスメイトもこの悲痛の叫びに加わったいるみたいだった。多分、この瞬間は僕たち高校生が1番神様に強く願い事を願っている時間に違いない。また扉が開く音と共に赤崎先生が入って来た。彼が懐に抱えている答案用紙が入っている紙袋は、勉強をサボっていた人達にとってはパンドラの箱の様に思えるだろう。


「じゃあお前らテスト返却始めるぞー!ちなみに今回のテストは出来の悪い奴が多かったと先生方から伺っている!次からは気を引き締めてテストに挑む様にッ」

 



「「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」」




「よーし。出席番号1番の奴から取りに来いー」







「お前結局数Bどうだったー?」


「えぇー言いたくねぇよぉー」


「じゃあさ同時に言おうぜ!それなら公平だろ?」


「OK!じゃあ、せーのッ!」


「「ハァイ!!」」


「お前赤点やん!」

「お前も赤点じゃん!」


「「うぇぇーいハイターッチ!」」




「ハイオワッター自分のお小遣い消滅確定ぃ!」

「うそーん、結構勉強したのにマジか、」

「うっわーこれはケアレスミスだわぁ」

「っしゃぁぁぁぁぉ!!!!回避ぃ!」

「えぇぇぇぇ!?この大問絶対合ってるでしょ!」

ガヤガヤ…ガヤガヤ



「ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!!!」


「どうしたッ!テストの点数が悪かったのか!?」


「うぅ、あァ、おーまいがぁ…目眩が、」バタンッ


「お前ッ!お前ッ!お前ぇぇぇぇ!!!」


「うわっうそコイツ泡吹いて倒れたぞッ」


「誰かッ!先生をッ!保健の先生を呼んできてくれッ!」






クラス中はお祭り状態で大変な事になっている。あー憂鬱だ、そろそろ僕の番が回って来てしまう…おぉ神よ、

あー。時間を巻き戻せたりする能力とかあれば良いのにと良く思う…そしたらテストの答えを見た瞬間過去に戻って解答丸写しにできるので楽だ。それか絶対に見たものや聞いた事を忘れない能力でも良いかもしれない。でもそうすると嫌な記憶を忘れる事ができないか、なら__


「田中ー!田中ー! おい田中っ!!」


「はッ、ははいっ!」


「さっきから呼んでるぞ!!ぼーっとするなー」


「すみません!」


僕は急いで机の間を駆け抜けて赤崎先生の元に走って行き答案用紙を受け取った。


「遂に来てしまったよ…この時が、」

そう呟きながらふと点数が見えない様に用紙を畳んで机に戻る。何故そんな事をするのかと言うと結果を確認する時は自分の机で見てみたいからだ。

そして座席にゆっくりと音が立たないくらい慎重に座り、目を瞑りながら僕は勢いよく用紙をバッと開いた。現実だとたったの数秒しか経っていないけど、僕の体感は30秒以上の時間があった気がする。


「南無三ッ!!」


「おっ?…おぉ、あー。ふーん、………」

結果は…悪くはないけど胸を張れるほどでもない。赤点は無かったのは良かったものの点数が凄く…なんだろう。1番リアクションが取りにくい感じで何だかモヤモヤする感じだった。結構頑張ってこの点数なのかと落ち込むべきか、それとも頑張ったからこそこの点数が取れたと喜ぶべきか、悩む。点数の内訳は1番高いのが歴史で、1番低いのが数Bだった。周囲を警戒しながら見渡す、そして僕はゆっくりと答案用紙をファイルに入れて机の中にそぉーっと隠すのであった。


「まあまあまあ、第一関門クリアって感__」


「田中さーん!!テストどうだったー?」


「わぁっ!すっ鈴木さんですか」

僕は急いで机の中を両手で隠すように塞いだ。


「うん?…今机の中になにか隠したでしょ田中さん!」


「あっいや!な、何も隠してないですよ?」


「ほんとかなぁー?怪しいなぁー」

「…田中さーん、嘘は良くないよぉ〜?」

鈴木さんが目を細めながら僕の事を凝視しながら、段々と距離を近づけて来ている。まずい、完全に怪しまれているッ!テスト用紙を見られるのだけはこの命に変えてでも必ず阻止しなければッッ!

とにかく話題を逸らさないと!


「そ、そんな事より鈴木さん!テストの結果はどうでしたか?」


「うー、怪しいけど、今回は見逃してあげましょう!」



「じゃあ私のテストの結果発表〜!!」パチパチパチ



「なんとっ!」テデン

「ななんとっ!」ドドン

「なななんとっ!!」ドンッ


「ゴグリ………」


「物理と数B両方とも100点満点でしたッ!」

得意げに口角を上げながらフンッと鼻を鳴らす鈴木さん。



「…ちなみに1番低い方はどうですか、?」


「……」

「……」


「れ、歴史でした……」


「点数の方は、?」


「「…………」」


「それは!秘密ですっ!というか私ばかりじゃなくて田中さんの結果も教えてくださいっ!」


「えっと、1番高いのが歴史の99点、1番低いのが、」

「えー…1番低いのが数Bです、」


「歴史の点数たっか!歴史って凄く情報量多くて私よく分かんなくなっちゃう時あって苦手なんだよね〜、」


「ゴホンッ!とりあえず今日の第一回勉強会では!田中さんは私に歴史を!私は田中さんに数Bを教え合うって事が決定しました!集合場所は変わらずって事で!」


「分かりました。では帰りのホームルームが終わり次第ここで待ち合わせにしましょう」


「りょうか〜い!」


こうして、テスト返却という一大イベントの一日が終わり、放課後の教室で行われる第一回勉強会?の内容が決まった。この後の勉強会も何とかなりそうだし、神様は本当にいるのかも知れない。今度、僕はお賽銭を持って近くの神社に感謝を伝えようと決めたのであった。

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