何気ない朝の風景
ジリリリリ……古いアナログの目覚まし時計がブルブルと振動する。布団の中で暮らしたくなる様な少し肌寒い室温、カーテンから差し込む明るい光が僕の目元を照らしてくる。
「ぅ、うぅ…後…1時間………………スゥー」
僕はよくある寝て起きてのループに入っていた。
そのループの最中、僕の目覚まし時計は時計の上に付いているスイッチを押さない限りなり続ける仕組みなので、僕の時計は自身の振動で徐々に僕の方に動いていたらしい。
ジリリリリ…ジリリリリ…ジリリリリ………と棚の先まで移動し、ついにはボトッと落ち綺麗な線を描きながら僕の頭に直撃した。
「?!、いってぇぇぇぇぇ!!!」
僕は飛び起き、まあまあでかい声で叫んだ。
頭を抑えながらベッドの隣にある窓を開ける。少し寒い風が部屋の中へ入ってきた。
「10月も…もうそろそろ終わりかぁ」
この後、大きく背伸びをして、枕の上で鳴り続けている目覚まし時計を止め棚に置いた。そして部屋から出て洗面台に直行した。恐る恐る鏡を確認すると、そこにはオデコに分かりやすく大きな痣ができている青年の姿があった。
………まあ、予想通りだった。
「うっそ、………うー、これ絶対学校で弄られる奴じゃんか」
「お前…イメチェンでもしたんか?」
気付いたら僕の背後に親父が立っていた。いつも起きるのが遅いので多分先ほどの僕の声で起きて来たのだろう。
この後、ニヤニヤと笑みを浮かべた親父に弄られた。
「お前もアホだなぁ。
まあ父ちゃんも同じ経験あるんだけどなっ!」
と言われながら肩をトントンと叩かれた。
この後は親父と世間話をしながら歯を磨き顔を洗い、キッチンで朝食を食べる。
ちなみに今日の朝ごはんは昨日の残り物の皮付きシャケと豆腐の味噌汁、そして納豆と漬物である。
ザ和食って感じ。
「そう言えば田中ぁ、隣の家の行原君覚えてるか?」
「ん?……あー、大学生の?」
「そうそう。で、その子引っ越すらしい。海外にな」
「へー、モグモグ………何処行くの?」
親父がこう言う事を話題に上げるのは珍しいなと思いながらシャケと白米を頬張る。シャケの身がホロホロに溶け、そこにくる白米の淡白な味が絡み合ってうまい。
「南の方の島だった気がするなー、なんだっけな。」
「南の方…南の方……台湾とかフィリピンとかそっち系?」
断片的で良く分かんないけど、多分ここら辺だろうそう僕は考えながら味噌汁の豆腐を口の中へ運ぶ。
………うんやっぱり豆腐おいしおいし
「いや、違うんだよなーなんだっけ本当に。シ、シーサが居る所らしい」
「シーサ?」
「うんシーサ」
なんか聞いた事あるんだよなぁ、シーサ。
南の島…シーサ…
あったかい所…
南といえば南国…
南国と言えば海…
南国の海……海………
あっ、シーサーかもしかしてこれ。絶対そうだこれ。
「…………親父それシーサーじゃね?」
「あっ!シーサー!シーサー!それだよそれそれ良く分かったな!やっぱりお前は俺の息子なだけあるな!」
親父はパンっと両手を勢いよく叩いてそう言った。どうやら僕の予想は合っていたらしい。
その後、親父はゆっくりと朝のニュース番組を見ながらゆっくり飯を食べていた。
僕は爆速で朝食を完食し、食器を片付けて部屋に向かった。これから制服に着替えて学校に行く支度をするのだ。
(あー、そう言えば今日月曜だからテスト返却か、……
テスト返却ならワンチャン授業やんないんじゃね?教科書道具重いし置いてくかこれ?)
でも結局持っていく事にした。
うん。
テスト返却の後解説やらずに直ぐ授業始める先生もいるからこう言う時でも教科書は持っていくべきだと、僕は過去の自分からこれを学んだのである。同じ失敗は二度としない。それが僕という男である。
…良く小道具を忘れ物するのは内緒でお願いします。
「って言うか寒。まだ10月だよな?」
部屋を見渡すと、何故かベッドの横にある窓が開いていてそこから風が吹いていた。
ばんッと勢い良く窓を動かし鍵を閉める。
なんで窓開いてるんだよ。開けたやつ馬鹿だろ。
やれやれ、朝は寒いって言うのに、
僕なら絶対開けないね!
そう思いながら僕は窓を閉めた。閉めた後、ベッドから降りる時に布団と目が合った気がした。
「………うーーー、」
「今からでも布団の中に潜って二度寝三度寝したいなぁ。」
もしも休みが三日間あれば今日も二度寝出来たのに。
ほんとにさ?月曜日は休みにするべきだと思うんだ僕は、二連休って実質休み1日だけだからね。一連休だよ(?)
日曜日は明日学校がある事に対する憂鬱な気分で萎えるから実質休みは土曜日だけなんだ。
分かるでしょ?この感じ。
………急に話は変わるけど、なんだかんだで朝は支度や諸々で直ぐに時間が過ぎていくよね。
着替えてるとあっ!もう家出る時間だ!ってなる事結構あると思う。
僕は大体毎日朝6時に起きで、そして7時40分頃に家を出て学校に行く、これ以降は全力で疾走しないと学校に遅れるから気を付けないと行けない。
あ、そろそろ家出ないとな。今何時だろ、
………………ん?
………………あれ?
………………見間違えかな。
時計の針が45分を指している気がする。
………やっぱり45分だ。
45………うん、45分。
「もう45分になってるじゃんっっっ!!!!!!」
「まずいまずいバス乗り遅れるぞ自転車は嫌だ!」
僕は疾風が如く制服を羽織りネクタイ結びズボン履いてチャック閉め、カバンに教科書とファイルを詰め込んで部屋を飛び出た。この間2分も掛かってないだろう。ドタドタと勢い良く階段を駆け下り玄関へ直行する。
「じゃっ!親父学校行ってくるから!」
焦っていても出かける時は必ず僕はこう言う。なんとなく?この掛け声は僕の中でのルーティンになってるからだ。後挨拶は大事だからね。
「おう。気をつけるんだぞー。最近不審者多いらしいからー」
今日は珍しく親父が起きているので返事が返って来た。いつもこう見送ってくれれば良いのに
「はいっ!行って来ます!」バタンッ
「あいつも成長したなー。…この前まであんなに小さかったのに今となってはあいつはあんなに立派になって、…俺もあいつの事を見習った方が良いのかもしれな__」
バタン‼︎「ごめん筆箱忘れたッ!!!」
(あー。成長していてもやっぱり俺の息子は俺の息子だなぁ、)
テストが終わってから約三日、土日を挟んで今日は絶望の月曜日、色んな意味で寒さを感じる時期になった。
ダッシュでバス停まで走ったせいで涼しい時期のはずなのに体からは汗が出ている。
今日は答案用紙の返却日、頼むから赤点だけは回避していて欲しいと心の中で魔法みたいに唱えながら僕は今日も学校に登校する。
「あ、おはよう田中さーん!!」
「おはようございます。鈴木さん」
「今日はついにテスト返却ですねーって、あれ?田中さんオデコに痣できてますよ!大丈夫ですか!」
「だっ、大丈夫ですよ。特に問題無いです」
「うーん、結構痛そうだけど」
「大丈夫です」
「本当?」
「はい」
「本当の本当に?」
「はい」
「本当の本当の本当に?」
「、大丈夫です!」
「へへっ!」
「田中さんがそこまで言うなら問題無いね!」
僕たちのいつもの学校生活が始まった。




