第五話 冒険者の町パナット
逃げるようにポッテ村を出てきた俺は南西の町パナットへと歩いていた。
「まさか、ただのいい人そうなオッサンがあんなに嫌な態度を取るとは思いもしなかったな」
この世界だとただの世間話でさえ金を要求されるってことなのか?怖すぎて気軽に話かけることもできなくなるんじゃね?ブルブルブル…「あ~、怖い怖い」
村から出て愚痴をこぼしながら道中を歩きつつ、レストから鑑定の指示を受けながらゆっくりとパナットを目指していた。
現時点での採取は…
チャージ
ノミチソ 30鉄貸 30円
ドクミチソ 20鉄貸 20円
マヒミチソウ 20鉄貸 20円
クルポの実 6鉄貸 6円
マダラモルフォンの羽 50鉄貸 50円
次のLv2まで 合計 9,824円
ドクミチソウ
毒消しのポーションに使われる薬草、毒があるのでそのまま食べることはできない。
マヒミチソウ
マヒ治しのポーションに使われる薬草、そのまま食べてマヒを治すこともできるが、とても苦い。
クルポの実
体力が20%上がる補助系の実 少し甘味を含んでおり、冒険者達が常に携帯している。
マダラモルフォンの羽
蛾型のモンスターの羽、マヒ毒の鱗粉を含んでいるため素手で触ると危険。マダラモルフォンはEランクの魔物。
鑑定してみたがどれも安い素材ばかりで泣きそうになる…でかい金を手に入れるには大型の魔物を手に入れる必要があるのかもしれない。
でもなぁ〜、俺、戦える自信ないんだよな…
そう呟くとレストから「解」「冒険者と契約して魔物を討伐してもらうのはいかがでしょう」
「冒険者と契約と言っても俺に協力するメリットなんて無いだろう、俺ならやらない」
「固有スキル(レストラン)を活用する事で渉様に協力してもらえると進言します」
「ホントかよ〜?まぁ、それしかお金を稼ぐことは無理そうだしな」
「良し、その案で行こう」
少しやる気が出た渉は再びパナットへ向けて歩き出した。
そして…1時間程歩いたところで行商人だろうか、すれ違う人が増えてきた。迂闊に話かけると金銭を要求されかねないので町に入るまでは大人しくしていた。
そして…ようやく目的の町パナットへ着いたのだが、「止まれ!身分証を掲示してもらおう、身分証が無ければ銅貨1枚が必要となる」
そう門番の強面の屈強な兵士らしき人に身分証の掲示をお願いされてしまった。
「あの…すいません自分、身分証持っていないのですが後…お金もありません。こういう場合どうしたらいいんですかね…」
「なんだお前、身分証も金も無いのかよ、チッ…なら俺が金を貸してやる、貯まったら返せよ」
舌打ちをしながらも強面の兵士さんが俺に金を貸してくださるなんて優しい…
「いいんですか?見ず知らずの俺にお金を貸してくださるなんて…」
「この町に来るやつはみんなそういうやつが大半だからな、追い返して盗賊なんかになられたらこっちの仕事が増えちまうからな。金をやる訳じゃない貸しだ」
「そういうことならお金お借りします。必ず返します」
「おう、そうしてくれ。それじゃ名前を聞いておこうか、金を貸す相手の名前わからんと困るからな」
「あ、はい、そうですね、天霧渉
って言います」
「アマギリアユム家名持ちなのか?貴族なのか?」
「いえいえ、ただの一般庶民ですよ」
まずい…転生前からの癖でフルネームを答えてしまった。
「アユムです」
「家名のアマギリは小さいとき貴族ごっこをして遊んだときに付けてた家名でして…緊張して思わず出てしまいました」
咄嗟に嘘をついてしまったが、変に疑われるよりはマシかもしれない…
「貴族ごっこかぁ〜懐かしい俺も昔ガキの頃よく遊んだな」
「あはは、そうだったんですね。誤解させてすいませんでした」
「アユムって名前も珍しいけどな、俺の名前はベックだ」
「ベックさんですね、ありがとうございます。必ずお金お返しに来ますね」
「おう!気長に待つことにするよ、ようこそ冒険者の町パナットへ」
凄くいい対応をしてくれた兵士さんだったなぁ顔ちょー怖いけど。
そんなことを思いながら渉は無事パナットに入ることができたのだった…。
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