第二十八話 オリビア姉妹の生きる道 後編
お待たせしました!後編です。
私達は料理を頼んでしばらく待っていると、フェレナが手が空いたのか私達の席の側にきた。「見ての通り忙しくてごめんね、はい、これサービスのお水」と水の入ったコップを置いた、「あ、ありがとう」とりあえずお礼を述べ、置かれたコップを見た。
楠んだ色をしているコップだが、私達が見慣れている木製のコップより軽く、そして透明になっていて水がよく見える。
「姉さん、見てよ。透明よ!このコップ」
「ただの水でしょ?そんなに驚くこと?」
姉さんはいつもこれだ、驚くでしょう…他の店ではお金払って飲む水をここではタダで水が飲めるんだから…
「それにしてもカナー、ここの店は良く繁盛してるわね。北区なんて依頼じゃなければ寄り付きもしない場所なのに」
「そうね、よほど美味しい料理を出すお店なんでしょうね」
「まぁ、あまり期待してないけど、依頼の為だから仕方ないわね」と、姉さんは透明なコップに手を伸ばし水を飲んだ「何これ…冷たくて美味しい…」驚きの顔をしてそう呟いた。
私も水を飲み、姉妹仲良く驚いた…本当に美味しい、まるで雪解け水を飲んでいるかのよう…頼んだ料理がどんなものかわからないが、期待が高まる。
待つこと30分ほどたった頃、男性が料理を運んできた。
「大変お待たせ致しました。MIKAZUKIカレーとチーズハンバーグでございます」
テーブルに置かれた料理はとても美味しそう、MIKAZUKIカレーという料理は沢山のスパイスが使われているのだろう香りがとても良く食欲を掻き立てる。チーズハンバーグなる料理はジュージューと黒い鉄板から音がなって白いチーズに真っ赤なソースがかけられていて見た目も良く美味しそう。
「鉄板が熱くなっておりますのでお気をつけくださいませ」
「はい、気をつけます」
「ご注文の方はお揃いでしょうか?」
「はい、大丈夫です」
「それではごゆっくりどうぞ」
そう言って、男性の店員さんが席を離れたあとさっそく食べることにした。
目の前にはスパイシーな香りと、鉄板で肉が焼かれる香りが漂っていて、思わず「…ゴクリ」と喉を鳴らす。
「姉さんはどちらを食べる?」
「どちらも美味しそうだから、両方二人で食べましょう」
チーズハンバーグにはセットとしてパンかライスがついてくるみたいだが、今回はパンを選択した。
パンもバターの香りがしていてこちらも美味しそうだ。
チーズハンバーグを一口大にナイフとフォークを使って切り分け口に運ぶ、切り分けたときに伸びたチーズがハンバーグに絡んで赤いソースを纏い口の中にガーリックの強い香りとトマトの酸味が混ざり合い、肉汁がジュワッと溢れだす…「何これ…美味しい…」カッと目を見開き驚く、同じように姉さんも驚いている。
お次は、MIKAZUKIカレーという料理に手を伸ばす、ドロドロした液体に人参、ゴロ芋、玉ねぎ、肉がはいっている、スプーンですくって口に運ぶと強烈なスパイスの刺激と野菜の甘みが口の中を支配する、そうなると食欲が刺激され、スプーンを持つ手が止まらない…「ちょっと…カナー!私も食べるんだからね?残しておきなさいよ、それにしてもこのチーズハンバーグほんと美味しいわね」
「ごめん、姉さん…美味しすぎて止まれない…」
「エーッ!もぅ…それならもう一回注文するからいいわよ。ほんと食べ物になると食い意地が張るんだからカナーは」
姉さんはそう言うと鳥の鳴き声を発生させるボタンを押して注文を待つ。鳥の鳴き声がなくと同時に「はい、かしこまりました〜少々お待ちくださいませ」と元気な声が聞こえ、とても気持ちが良い。
「お待たせいたしました、ご注文を伺います」とフェレナがやってきた、どうもフェレナに注文をきかれると言うのは慣れない、フェレナは冒険者時代、私達と行動していたときに粗暴で一目散にモンスターに突貫していく姿しか思い出せないからね…。
「フェレナ、MIKAZUKIカレーをまた1つ追加してちょうだい」
「はい、MIKAZUKIカレー1つ追加ですね?畏まりました〜少々お待ちくださいませ〜、ごゆっくりどうぞ」とフェレナが席を離れる。
「なんだか変わったわね〜あの娘」と姉さんが言う、確かにフェレナが冒険者時代の頃を考えたら、今の姿は考えられない、一体彼女にどんな心境があって冒険者を引退ってことになるのか私には想像できない。
「そうね、何かあったんじゃない?」
考えても仕方ないので、私は考えるのをやめ食事に集中した。「このカレーという料理は今まで食べてきた料理の中で最高に美味なるものだわ」
「このチーズハンバーグもとても美味よ」と姉さんは言う、姉さんは私が一人でカレーを食べてしまったからカレーの味を知らない、チーズハンバーグは確かに美味しい……だが、ミンチ肉を固めて焼いただけの料理とカレーを比べたら、同じ双子だ、カレーの方が美味しいと言うに決まってるわ。
水のはいったコップを口に運び、カレーを洗い流す。冷たい水が喉を通り、満足感が訪れる。
姉さんはパンに手を伸ばし、あまりの柔らかさに驚いている、「パンがフカフカで、口に入れるとバターの風味が広がりとても美味しい…貴族でもこんなパンは食べれないんじゃないかしら…」と姉さんが言うので、「ここの料理はどこの店よりも美味しいのは間違いないようね…どおりで貴族が依頼を出すわけだわ」
しばらくして、追加分のMIKAZUKIカレーをフェレナが持ってきて、姉さんが口にする。
「まっ…なんて奥深い味なの…この刺激的な味は確かに美味しいわね…ライスの上にかかっているカレーがライスと一緒に食べることにより辛さを中和させまた食べたいと食欲を刺激する…」
ほら…思ったとおり、双子である私達姉妹が好む味であるのは食べた瞬間にわかった。
MIKAZUKIカレーはこの店の看板メニューに違いない。
すごい勢いで姉さんはカレーを口に運びカレーを食べ終え水を流し込み食事を終えた…
「姉さん、貴族への依頼の方はこれで達成でいいのかしら?」
「そうね、、店はただの料理を出す店でしたと報告するだけで依頼達成で良いでしょう」
「え、なになに、依頼の話してんの?どんな依頼受けたの」とフェレナが聞いてくた。
「冒険者を引退したのなら依頼の話は話すことはできないのわかってるでしょ?」
「まぁ、そうだけど…もし、その依頼によってこの店の不利益になるようなことはどうか…やめてほしい…」
「なっ…一体どうしちゃったのよ…フェレナ、昔はそんなこという娘じゃなかったじゃない」
「この店の店主を守りたい!この店の店主は戦えないから私達が彼を守ってあげなきゃならないんだ!」
「私達って…他に誰がいるの?」
「グレイアスギルド長」
「へ?あのハゲギルド長もこの店の関係者なの?」
「呆れたわね…そもそも依頼は正式にギルドから受注されたものよ、と言う事は、ギルド長は依頼がどういうものかわかった上で引き受けてるってことよ」
「むぅ…ギルド長何考えてんだろう……」
「取り敢えず、私達は依頼報告の為にここを出るけどフェレナまた詳しく話して」
「うん、わかった」
会計を済ませ、店を出たあとギルドに依頼達成の報告を済ませ1日を終えた。
★
依頼達成の報告をして数日がたった。
ハゲギルド長から呼び出しがあり、私達姉妹は冒険者ギルドに来ていた、「よう!急な呼び出しできてもらって悪ぃな」
「いったい何の用?貴族様に何か言われた?」
「いや、そこら辺のことは気にしなくていい、俺が黙らせるからな、がっはっはっは」と笑うハゲギルド長
「来てもらったのはな、お前達あの店どうだった?」
「どうだったって…とても美味しい料理を出す店ってことしかわからないわ」
「まぁ、それがわかってるなら充分だ、ちょうど店長から従業員の募集がかかっててな、お前たち二人を従業員になってもらう」
「……は?え……ちょっとどういうことなのよ!」
「これはギルド長命令だ!」
「横暴よ!それにBランク冒険者としての依頼はどうするのよ!」
「お前たちの他にBランク冒険者は沢山いるからお前たち姉妹が抜けてもギルドはなんの影響もねぇ!」
「なっ…」
「お前たち二人は俺から見ても美人で接客するには申し分ない」
「どういう目であたし達を見てんのよ!」
「うるせぇ!ぶっ殺すぞ!」とギルド長が叫び拳に炎を纏わせる。
そうだ…ギルド長は元Sランク冒険者で灼熱のグレイアスとまで言われた戦士だったわ…
「わ、わかったわよ、ギルドの命令には従うしかないわけだけど、これは私達に拒否権はないのかしら?」
「ないな…すでにフェレナからも推薦されてるからな」
「なっ…あのゴリラ虎娘めぇー」
こうして、私達姉妹はレストランMIKAZUKIの従業員として強制的に働くことになった。
翌日、再びMIKAZUKIの店を訪れ、フェレナを1発殴ったあと、フェレナから紹介を受けた。
店長と呼ばれてる男性はアユムという男性で、冴えないおっさんがパートンという名前らしい。
私達姉妹も自己紹介をした、「私はカナー・オリビアです。」「私はマヤー・オリビアよ」
「二人ともこれからよろしくお願いします」
とても腰の低い店長という印象だがフェレナから聞いたところによるとすごい固有スキルを所持しているみたい。
ギルド長から強制的に冒険者を引退させられて、ここで働かされることになったが、賄いとしてこの店の料理が食べれるということだし、良しとしよう。
こうして私達オリビア姉妹の生きる道がこうやって決まるのであった…。
オリビア姉妹の固有スキルについては、そのうち紹介させていただきます。
前編に誤字報告をしてくださった方、本当に助かります、ありがとうございました。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
面白そう、続きが気になると思ってくれましたら星の評価をお願いします。