第二十六話 閑話 レスト誕生秘話
それは日本でレストランMIKAZUKIが誕生するきっかけになったお話、私の主人満月光太郎が満月亭という焼肉店を開店した。
私は光太郎の妻で美華 夫婦二人三脚で切り盛りをしたおかげで、大変繁盛をし、子宝にも恵まれ、あれよあれよという間に店は大きくなり、その地方では知らないものがいないというほど大きくなって、創業20周年を迎える時に満月グループのレストランチェーンにしようと長男が言い出し会社となった。
満月光太郎は同じくして、創業20周年のときに病に倒れ、亡くなり、息子が跡をつぐことになった。
私の名前の美華に月の名字からMIKAZUKIという名のレストランが誕生することとなったのが始まり…
MIKAZUKIが店鋪拡大をし、私は80歳になってしまったと言うことで、会長職っていうのかしら…各店舗を秘密裏に回って、ちゃんと良いサービスをちゃんと出来ているか、お客様に扮して店鋪を見て回るのを日課にしているときだった…
ある店舗にお客様として来店し、いつものように店の窓際に座り、接客を観察していた、前の席にサラリーマン風の男性の注文を見ながら、ドリンクバーの珈琲を飲んでいたときに突然私は強い衝撃を受け真っ白い空間の中にいた。
「申し訳ない…想定外の事態が起こってしまって…」
私の目の前には、ぼんやりとした男性にも見えるし、女性のようにも見えるような、長髪の人間が私の前で土下座をしていた。
「いえいえ、大丈夫ですよ…そんなに謝らないでください」
「いや、本当は老衰で亡くなる予定だったのに目を話したすきに事故が起こってしまったみたいだ」
「はぁ」
「あれ?大丈夫かな?話聞いてる?お婆ちゃん、亡くなってしまったんだよ」
「私、お婆ちゃんなの?てか、あんた誰よ!」
「あちゃー、こりゃ記憶も飛んでしまっているみたいだなぁ、そうなると転生は難しいぞ…」
目の前の謎の人はブツブツと独り言を言っている。
「記憶がどうとか言ってるけど私は覚えているわよ、えっと…えっと…」
なんと…何も覚えていない…自分の姿も、名前も、年齢も、これまでの記憶が一切思い出せない…ふわふわと漂う魂と呼べるかわからない姿のまま浮いている。
「何よ…コレ…」
「やっぱり何も覚えてない?はぁー、これは不味いねぇ」
「私、どうなっちゃうの?」
「んー、どうしよっか?ちなみにさっきお婆ちゃんが質問した答えを言おう、僕は神だよ」
「神様?仏様?ここは天国なの?」
「いや、天国ではないね、神域と言って神が住まう世界だよ、ま、そこは置いといて、お婆ちゃんはトラック事故により亡くなりました。本来なら、予定外の事故により亡くなってしまった人は違う世界で転生者として生きてもらうんだけど、お婆ちゃんは記憶そのものを失ってしまってる状態だから、はい、転生しましょうとは言ってあげれないんだ……そこで提案なんだけどね、お婆ちゃんの他に亡くなってしまった人が居るんだよ、その人の固有スキルレストランのスキルの一部として取り込ませて彼のサポートをしてあげてほしいんだよ」
「サポート?」
「幸い、記憶がなくなってるだけで、レストランに関しての知識は覚えているみたいだからさ」
レストランという言葉を聞いてなんだか懐かしい気持ちが生まれた。
「なんだか、懐かしい思いがするわ」
「でしょ、でしょ、お婆ちゃんは天霧歩のスキルとしてサポートをお願いします」
「アマギリアユム様のサポート…」
「おぉ、流石、満月グループ会長としてやってきたことはあるね」
「承りました」
ふわふわ浮かんでる魂が光に包まれる。
「うんうん、どうやらスキルと馴染んできたようだね」
こうして、トラック事故に巻き込まれて亡くなった、満月グループ会長、満月美華はアユムの固有スキルレストランサポート役として生まれ変わったのだった…。
★
それから私はレストランスキルの持ち主である、アユム様をサポートするべく目覚めた。
自分が何者であるのかも忘れて…ただ、持ち主の質問に答えていくだけの存在にアユム様は名をくれた。
「俺が呼びにくいから、これからレストと呼ぶことにする」と…
私は歓喜した、名をつけられたことで、自分がアユム様と同じ世界で生きていた人間だったことを思い出すことができた。
欲を言えば、私もアユム様と同じように転生してみたかった……。
でも、これも私の運命…本来なら朽ち果て、消えゆく存在だった私を神様がアユム様のスキルとして生きていくことができるのだから…それに、生前私が愛していたレストランMIKAZUKIの様子を異世界で観ることができるのだから。
アユム様もMIKAZUKIを愛してくれて居たことに私はとても感激し、満月グループ会長の満月美華はレストという名でアユム様を、レストランMIKAZUKIを見守り続けたいと思った。
やがて、レストランスキルがレベルアップしたことにより、レストも更に記憶を思い出し、機械的な会話ではなく、人間的に会話が可能となるが、スキル所持者のアユムが知るのはもう少し後の話…。
レストは実は人間だった…ってのが書きたかったのでここで書かせていただきました。色々第一章で書ききれなかったことも、第二章始める前に書こうと思うのでよろしくお願いします。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
面白そう、続きが気になると思ってくれましたら星の評価をお願いします。




