第二十二話 押し問答
ジークとアメリは食事を終え満足気な顔をしていた、なんだか力が溢れる感じがして今からでも、廃材集めに行ける様な気がしていた、普段なら1回の廃材集めでヘトヘトになりながら暮らしていたというのに…でも、それがなんでなのかはわからないでいた。
それもそのはず、MIKAZUKIの料理にはすべての能力をプラス50アップするバフがあるのだ。それを知っているのはフェレナさんだけ。
当のフェレナさんは、食事していたジーク達を見て、我慢できずに食事を要求し夢中で食べているが…
料理にバフがついていることをアユムが知るのはまだ先のお話。
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ジークとアメリはまた明日も廃材を集めに来るといい店を出ていった。
もちろん、廃材集めで稼いだお金はジークの頑張りなので、換金したお金を渡した。最初は断ってきたが、正当な報酬だと説得して折れてくれた。
「ジーク、明日から料金を頂くからその稼いだお金、大事に使うんだぞ」
「うん、わかった。アユム兄ちゃんありがとう」
と言ったやり取りをしていた。
フェレナさんも食事食べ終えたみたいだし、お皿片付けるかなって思ってたらいきなりお店のドアが勢い良く開いた。
「いらっしゃいませって、ジュリエナさんじゃないですか」
「私に月見ハンバーグをください!」
つっ…月見ハンバーグですね…パンとライスどちらがよろしいですか?
ジュリエナさんは少し考えたあとに…
「パンでお願いします」
「かしこまりました、少々お待ちくださいませ」
テーブルの案内もまだだったが、まぁ、知らない方ではないし、とりあえず良いだろう。
「フェレナさん、仕事ですよ〜ジュリエナさんにお水持っていってください」
満足した顔でソファにもたれ掛かってるフェレナさんに仕事を与える。
俺はキッチンに入り月見ハンバーグを作り出す。
「お待たせしました月見ハンバーグとパンで御座います」
「はぁ〜ん、待ってましたわ。これを食べたかったのですよ」
「それは良かったです、さ、さ、冷めないうちにどうぞ」
目玉焼きの乗ってるハンバーグなので月見ハンバーグなのだが、ハンバーグにデミグラスソースがかかっている。ハンバーグから食べても良し、味変に黄身を潰してデミグラスソースに混ぜて食べても良しと食べ方は自分次第!俺も元の世界でよく食べていた1品である。
ジュリエナさんの食べ方はとても品があり、流石貴族の方とも食事をしているだけのことはあると感心をしていた。
すると…店のドアがゆっくりと開き、ぜぃぜぃと肩を揺らして汗だくになった男性が入ってきた。
「いらっしゃいま…せ」
ん…待てよ…この男の人どこかで見たことのある人だぞ…アユムはそう思った。
「やっと見つけた…探したぜ。覚えてるかい?」
覚えてないと言いたかったが、流石に覚えている。この人はこの世界に来て最初の村に入ったときに話聞いた人だ、しかも門番のザックさんから気をつけろと言われていたので動揺が走る…。
「俺に何か御用ですか?」
「あの時はすまなかった…印象を悪くする対応をしてしまった」
「謝らなくてもいいです。もう終わったことですし…それを言いに会いに来たんですか?」
「いや…そうじゃない、君から貰ったあの黄色い果実を売ってもらえたらと思って探しに来たんだ」
そうか…あの時情報料代わりにバナナを少し購入して譲ったんだったな…でも、あれは使えない…。もう店を開いてしまった後では食材を購入することができない。
「すみません…せっかく探して来ていただいたのですが売ることができません」
「どうしてだ?俺には売れないってことなのか?」
「いえ、そういうことではなくてですね…」
どうしよう…俺のスキルのことは話せないし、店を閉めるわけにもいかないしな〜
「このとおりだ、俺に果実を売ってくれ!」
男性は土下座までして懇願してきた、その様子を見ていたフェレナさんがその男性に向かって「あんたポッテ村の人だよね、どうせ、ろくにアユム君の相手にしないで村から追い出したんでしょう」
「だから、謝ってるんだ!これまでのことを反省したから」
「簡単には信じられないわ、今まで散々冒険者達に嫌がらせしてきてたんだから」
「まぁまぁ、もういいでしょう、食事中のお客様もおられる事ですし…あなたの名前を教えて頂けませんか?」
「俺の名前はパートンと言う、君の名は?」
「アユムです。ここMIKAZUKIの店長をしています。」
パー○ンみたいな名前してるなって思ったのは秘密だ。
「ミカズキ?食堂なのか?」
「まぁ、そんな感じです。果実は売ることができませんが、食事はすることができます」
「俺は果実を買いに来たのであって食事をしたいわけじゃない、すぐに買って村に帰らねばならないんだ。」
「いや…ですから、果実は無いんです。だから売ることができないんですって」
「じゃあ、他のものでもいい、売ってくれ!」
押し問答が続くが、他のものであっても売ることができないという詳しい説明ができない。
フェレナさんをチラ見するとフェレナさんと目があった、良し!あたしに任せろという顔をしているが、任せていいのかもわからんが、今は任せる他ない。
「商品がないんじゃ、売ることはできないでしょ。用事は済んだ?さっさと村に帰りなよ」
フェレナさんが助け舟をとりあえず出してくれたおかげで落ち着くかと思った矢先に…
「さっきから、ゴチャゴチャ煩いですわね!せっかくの料理が台無しになってしまうじゃないですか!やるなら外でやってもらえません?」
ジュリエナさんの怒号が聞こえ、立ち上がり、怒りのまま指を外の方に指差していた。
3人とも一斉に「すみません…」と謝り、外へ出ることになったのであった。
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