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第十九話 情けは為にならない。

なかなか食事のシーンにいけない…。

門番のザックさんに借りていたお金を返しに俺は門を目指して走っていた。

北区から門番のある中央区まではおよそ時間にして40分ほどかかる距離が離れているので、走ってもそんなに早くつくことはできない。

「車とか自転車とかあれば早いんだけどな〜」

中世ヨーロッパ風の異世界では、そんな便利なものは当然無い為、冒険者達や一般の人の多くは徒歩である。

「ぜぇぜぇ…」息が切れるほど走ってもまだ着かない。中央区に近くなるほど、冒険者やすれ違う人が多くなっていく、冒険者の一人が「おい、荷物持ち!そんな走ってどこ行くだ?」と声を掛けてくれたりしてくれるようにはなったけど、声掛ける冒険者は皆、俺を荷物持ちとしか認識してないんだよな…フェレナさんのせいで。


走っては歩き、ようやく門のとこまで辿り着いた。

「ザックさん」

「よう、どうしたんだ?」

「はい、コレ。入る時は大変お世話になりました。本当に助かりました」

と借りていたお金2銅貨をザックさんに手渡した。

「もう、稼いだのか?」

「はい、フェレナさんと依頼に付いていったのでそのおかげで稼げることができました」

「おぉ、一昨日フェレナとここ通ったんだったな」

「これで、借金はなくなったので心置きなく仕事に集中できます」

「ん?何か仕事を始めるのか?」

「はい、食堂を北区で開くことになりまして、もし良かったらザックさんも食べに来てください」

「北区で食堂?あんな場所で開いて儲かるのか?」

「いや、儲かる儲からないはあまり考えてませんね、僕は北区の人を少しでも助けることができればと考えてます。」

「ふむ、そうか、まぁ、大変だろうけど頑張れよ」「あ、そうだ、食堂開くってことは商業ギルドでギルドカード発行して貰ったんだろ?」

「え…?商業ギルドカードってなんですか?」

「は…?お前、食堂開くってのに商業ギルドカード発行してないってどういう事だ?」

「だって……商業ギルドでカードの作成とか何も言われなかったし…」

「この門を通る時に俺は言ってなかったか?商業ギルドカードか冒険者カードを持っていると免除されるって」

「いや、聞いてないです…多分」

「ギルドカードは門の通行料を免除できるようになるから、町に入ったらギルドに行けってお前にっと……言ってないな」

「ですよね……でもギルドカードって町に入るのに必要だったんですね」

「そりゃ、持ってれば通行が楽になるからな、それにこの町以外でも通行出来るようになるから冒険者や商人は持っておくのが常識だ」

「あの人らそういう大事なこと、全然教えてくれないんだもんな…」


一方フェレナさんとギルド長はというと…

「へくちっっっ!!!」

「ゔぇっくしょんっっっ!!!」

二人してクシャミをしていた。

「誰か噂してやがるな〜」

「ちょっ、汚いじゃない!ギルド長〜ツバが飛んできたわよ」

「お前こそ同じじゃねぇか!」

「それより、ギルド長ギルドに行かなくていいの?」

「このままここに居てぇとこだが、そろそろ行かないとな」

「そう、あたしは皿洗いやらして、アユムくんが戻るのを待つわ」

「そうか、そんじゃ頼んだぞ」

ギルド長はギルドに出勤をし、フェレナさんは皿洗いをするのだった。


「ザックさん、それじゃ俺戻りますわ」

「そうか、わざわざありがとな」

「ザックさんも暇があれば食事に来てくださいね」

「おう、わかったぜ、あ、そうだ!お前を探してるやつが昨日訪ねてきたぞ」

「え!俺をですか?人違いとかじゃないんですか?」

「いいや、お前黒髪黒目の珍しいヒューマン族だからな、訪ねてきた男もその特徴を聞いてきた」

「なんだろう?町でしか知り合いはいないはずなんですけどね」

「知るか!その探しに来た男には自分で探せって言ってあるから、そのうちお前のとこに来るかもしれんぞ」

「男性の人なんですね、ますますわからないな」

「冒険者の格好というより、どこかの農夫みたいな感じだったぞ」

そこまでザックさんが話してくれたとこでレストから答えを貰った。

『解』『ポッテ村の農夫の可能性が高いです』

「え?ポッテ村のあの農夫が俺を探しに来ていると?なんで?」

『解』『バナナを情報料として渡したのでそれ目当てかと…』

「はは〜ん、なるほど、バナナが美味しかったからまた寄越せと探しに来たって訳か」

『その可能性が高いです』

「それは面倒くさいかもな…あんまり印象のいい人ではなかったし面倒事は避けたいな」


「どうかしたのか?ぼーっと考え込んで」

「あ、いや、なんでもないです。じゃ、俺は行きますね」

「面倒事は避けろよ?またな!」

ザックさんと別れて、再び北区に向けて歩き出した。


あ、そうだ、商人ギルドによってギルドカードを発行してもらっておこうと思った俺は商人ギルドにやってきた。


「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか」今日はいつもの副ギルド長のジュリエナさんは居ないらしく、違う受付嬢の人だった。

白銀の髪に綺麗な顔立ちの美人さんだ、基本的にこの世界では美形な容姿の人のほうが多い。

「あの、商人ギルドカードを発行して貰いたいのですけど」

「かしこまりました、それでは銅貨1枚ご頂戴いただきます。この用紙に記入し、血を1滴垂らしてください」

俺はアイテムボックスから銅貨1枚を取り出して渡し、言われたようにやったあと、注意事項などの説明を受けた。

一年ごとに更新をしないと無効となるので注意してほしいと言われた。

良し、忘れないようにしよう。



ポッテ村からの農夫に出会うこともなく、北区に戻ってこれた俺はフェレナさんにポッテ村から追ってがこの町に来ていることを話した。

「そんなことがあったんだね、よし、あたしが居るから大丈夫よ」

「ありがとうございます!俺、戦うとか無理だから助かります」

「うんうん、わかってるよ」

そんなやり取りをしていると、店というか倉庫の扉が開いた、見た目小学1年生くらいの男の子と5歳くらいの女の子を手を繋いで恐る恐る店の中を覗いた、服装は布切れのボロボロの服を着て、裸足だ。二人とも痩せこけている…俺と目があった途端に慌てて扉を閉めてしまった。

俺は慌てて扉を開けて、男の子達を呼び止めた。

「君たち、逃げなくていいよ、中に入っておいで」

そう声をかけたら…

「そこは何?この前までここは空き地だったはずなのに急に建物が立ってるから気になって覗いたんだ」

「ここはね、お食事をするとこなんだよ」

「え…僕達も食べれるの?」

「食べれるよ、でもタダってわけにはいかないから対価を頂く事にはなるかな」

「対価…僕達お金無いんだ…廃材を集めてパンを貰っているけど、妹も居るからいつもお腹空かせてる」

「そうかぁ、君達、親は?」

「居ない…俺達捨てられたんだ……」

「ごめんね、おじさん悪いこと聞いたね」

「へ?ちょっとアユムくん!おじさんじゃないでしょ」

いけね!つい自分の今の年齢を忘れてしまう…

「あ、あははは、お兄さんの間違いだった」

「もう、たまに変なことを言うよねアユムくんって」

フェレナさんから突っ込まれつつも、せっかくこの子達が覗いてくれたわけだし、どうにかして食事をして欲しいと思う。

フェレナさんに小声で食事を与えていいか相談したのだが…

「アユムくん、それはダメ!」

「え、なんでですか?せっかく来てくれたお客様ですよ?」

「もし、この子達に食事をあげたって話が他に広まったとしたら、商売にならなくなるわよ。それにこの子らの為にならないのよ」

「為というと?」

「この子達はさっき、言ってたように北区の廃材やらを集めてお金じゃなくてパンを貰ってるって言っていたでしょ?もし、タダで食事ができるって分かったら、味をしめて他の子らもここに押し寄せる可能性があるわ」

「この子達に口止めしてもらえば済む話じゃないですか?」

「甘い!甘すぎるわねアユム君。いい、この子達自身が楽を覚えるとそれを求めるようになる、人間って楽な方に行きたがるものよ、現にアタシがそうだから」


お前がそうなんかい!って心の中で突っ込む。


「わかりました、それなら廃材やらをあの子達に持ってきてもらった対価で食事を出すって事でいいですか?」

「それなら、なんの問題もないわ」

フェレナさんと話合い、男な子に話をすることにした。

「君達、食事をしたいのだったら、君たちが集めてパンを貰っているように、廃材をお兄さんにくれたら食事を出すようにするよ」

「ホント?廃材集めればいいの?僕やるよ、妹にも少しでも食べさせてあげたいし」

妹思いな立派なお兄さんなんだな…っとちょっと感心して、涙が溢れてしまった。

「どれくらい集めたらいいの?」

「君たちがいつも集めてる量をお兄さんが引き取るよ」

どれくらいの量が適正価格なのか、わからないので取り敢えず子供たちがいつも集めてる量を引き取る形で食事を与えることにした。もし、必要な価格でなくても、足りない分は俺から出そうと思う。

「僕、行ってくるよ。あの…妹を見てもらうことってできますか?」

「うん、わかった。妹さんを見てあげるから頑張っておいで」

「よろしくお願いします」

「君の名と妹さんの名前を聞いていいかな?」

「ジークです。妹はアメリと言います」

「ジークとアメリね、ジーク頑張れよ!」

こうしてジークは廃材を集めに出かけ、俺とフェレナさんとアメリはジークの帰りを待つことになった。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

面白そう、続きが気になると思ってくれましたら星の評価をお願いします。

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