第十八話 パートンの後悔
俺はポッテ村に住んでいる、農夫のパートンと言うものだ、先日、ポッテ村に訪れた旅人風の若者にパナットの町を教え情報料とばかりに黄色い果物のようなものを少し貰った。
あまりの美味しさに、驚いてしまった…。
家族や他の村の仲間から、なんで引き止めておかなかったんだと責められた。
なんとか、みんなにまだパナットの町に居るはずだから、売ってくれるよう頼んでみるという説得をし、急いでパナットの町に行くべく深緑の街道を歩いている……
道中、多数の魔物に出会ったが、なるべく戦いを避けながら向かっているので、時間がかなり掛かっていた…俺は35歳になるが、若いときは冒険者に憧れていた。なので魔物も多くはないが倒した事があるので、腕には自身があるつもりだったが、俺も年を取ったって事だろうか…息が上がってしまい休憩を取りながらじゃないとこの街道を抜けるのは難しいかもしれない…なんで、俺はあの旅人に優しくしてやれなかったんだろう…なんで俺がこんな危険を犯してパナットに向かわなければならないのだろうと独り言を呟きながら歩く。
ポッテ村は昔、冒険者達が寄って賑わってた事があったが、冒険者には金があるってことがわかると、冒険者から金を毟り取ろうと欲を出す村人が出だした、宿を営んでた親父や、薬屋を営んでた婆さん。そんなことをしてるうちに冒険者の間で、ポッテ村には行かないほうがいいと噂が出回り始めた。
村に住んでいる者でさえ、そんな噂が出ているという話は知っていた……冒険者が寄り付かなくなり一年が過ぎた頃、店を営んでいた村人は廃業せざる負えなくなった。そこでポッテ村は反省をして生まれ変わらなければならなかったのだが、一度欲に溺れた人間は簡単には変わらない…俺は農夫、畑作りで自給自足をやってなんとか家族を養えてる状態だ。
そんな時にあの若い旅人がポッテ村を訪れた……久々に訪れた客人だったが、話を聞いてみると、金を持たないうえに情報料代わりの対価もしぶる始末だったので、冷たく突き放してしまった…旅人の若者は逃げるようにポッテ村から出ていったのを覚えてる。
そんな俺に商品を売ってくれるかはわからないが、出てきた以上は頭を下げてでも黄色い果物を売ってもらわないといけない…こんな事になるなら弄れずに普通に対応しておけば良かったと後悔する…。
途中で休憩をしつつ歩くこと5時間…ようやくパナットの町が見えてきた、門番に入場税を払い、尋ねる。
「一昨日くらいに黒髪黒目の旅人がこの町を訪れてないか?」
「ん、一昨日か、あ~それならあの子かな?多分来たぜ。なんか用か?」
「いや、いると分かれば良いんだ」
「そうか、その子を見つけたら、お金早く返せって言っておいてくれ」
「金をか?」
「ああ、その子に金を貸しててな、急がせはしないが踏み倒されても困るからな」
「わかった、見つけたら伝えておく」
「頼んだ。冒険者の町パナットへようこそ!」
どうやら、本当に金が無くて、門番に借りたらしいな、それなら、それを交渉材料に商品を頂くとしよう…
パートンは知らない、アユムはフェレナさんとの依頼で報酬をもらい、門番のザックさんに借りたお金ももう既にあることを。
アユムは忘れていた…ザックさんに借金を返すことを…
★
ポッテ村からバナナ目当に、パートンが来てることも知らないアユムは考えてた。
「なーんか忘れてる気がするな、大事なことのような気がするが…」
「でっかい独り言ねぇ〜、ねね、それよりこの制服ってやつもう少し可愛い奴のないの?」
「そうなんですよね、この肌色に近いピンクしか今は無いらしいです。懐かしいですけど…」
翌朝に宿を出た二人は、北区に向かい店舗出店を行った店舗に入り、営業準備を進める事にしたのだが、制服がないことに気づき、俺とフェレナさんはレストランMIKAZUKIで着用する制服について考えていた。
昔ながらのウエイトレスの制服で正直、今と比べると非常に可愛くない…もう制服じゃなくて良いだろうか?異世界に合わせたスタイルのほうが良い気がしてる。
「フェレナさん、やっぱり普段着のエプロンスタイルにしましょう」
「え、いいの?良かったわ、あのダサい制服着るとか無理って思ったもん」
ですよねぇ…だって俺からしてもダサいと思うもんな。
営業日当日だというのに、呑気に構えてる2人のもとに扉が開いた。
「いらっしゃいま」
「ギルド長!こんな朝っぱらからどうしたんです? 」
「いや、気になっちまってだな、心配して見に来た」
「はは〜ん、ギルド長さてはモーニングセット頼もうと思ってきたわね」
「バッ、バカ!そんなんじゃねぇよ、俺はただ様子を見にだな」と言った途端に「グー」とギルド長のお腹が鳴った…俺とフェレナさんとギルド長は顔を見合わせ大爆笑をした。
「俺達も、まだ何も食べてないんで、一緒に食べましょうか」
「なら、朝飯の分は俺が金を出そう」
「おー、ギルド長太っ腹ね、ゴチになります!」
「フェレナ、今日だけだからな!」
「はーい」と返事をしてフェレナさんは水を取りに行った、昨日の練習もうまくできてるようだし、今日の営業も大丈夫そうだな。
ん?待てよ…金、金「あ~思い出した。ザックさんに借金返しに行くんだった」
「あら、まだ返してなかったの?ってあたしと一緒にギルド長のとこ行ったりしてたからそれどころじゃ無かったわねぇ〜」
「なんだ、借金て、ザックから金借りてるのか?」
「はい、この町に来たときにお金がなかったって言いましたよね、それで貸してもらって中に入ったんです」
「ザックの奴も、良くやるなぁ〜」
フェレナさんと同じこと言ってるって事は、ギルド長もザックさんのこと知っているんだろう。
「ま、それは後で返しに行け。それより腹を空かせたやつに出す飯が先だ」
「ごもっともです…」
モーニングセットを俺が作り、三人で食事をし終えたあとに、俺はザックさんに借金の銅貨2枚を返しに門番に向かうのであった…。
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