第十七話 営業前準備
レストランLvが1の為、ドリンクメニューはありませんが水は出せます…。
フェレナさんが一緒に働くことになったのはいいが、接客業に向いているのかは別問題…。
「あの、フェレナさんって接客の仕事ってやったことあります?」
「え、ないけど?普通に料理運べばいいんでしょ?楽勝よ」
「いやいや、フェレナさんの接客によって場の雰囲気が決まるってほど重要なんですよ」
転生前に通っていたファミリーレストランMIKAZUKIはクラシック調の曲のBGMを流して場の雰囲気を作り出していたのだが、こちらは異世界。
BGMを流す有線なんて無いわけで、静かな店舗という感じになっている…もしかしたら、店舗レベルが上がれば有線を流せる環境になるかもしれないけど、今は倉庫タイプの店で6人までしか入れないという制限付だ。
それならば接客をするフェレナさんがお客様に対して良い接客をしてもらわなければならない。
「えー、嫌だよ。そんな謙る事なんてできないわよ」
「じゃあ、フェレナさんはツンケンした従業員が荒々しく料理を持ってきて乱雑に置かれたらいい気分で食事できますか?」
「うっ…それは…嫌だね…。」
「そうでしょ?笑顔で丁寧な接客されるとお客様は気持ちよく料理を頂けるはずです」
「でもでも、腹立つ奴が料理を食べに来ててもあたしは同じ接客なんてあたしには出来ない」
まぁ、ここは異世界で元の世界の接客をやってと言うのは無理かもしれない…それでも、食事してくれたお客様には喜んでいただきたい。
「そこは我慢してください、フェレナさんも大勢の人にあの料理食べさせてあげたいと思いませんか?」
「お、思うけど…最初は無理かもしれない…」
「最初から完璧にやってとは俺も言いませんよ」
「ほんと?じゃ、大丈夫かも」
レストからMIKAZUKIで使用されている接客5カ条を作ってもらい、キッチン奥にある一人分の更衣室に貼りだす。
その壁には鏡が設置してあり、身だしなみをチェックできる。不衛生な格好で料理を運ぶことのないようにするための鏡であるため全身を映し出すことができる。
MIKAZUKI接客5カ条
第一 いらっしゃいませMIKAZUKIへようこそ!
第二 はい、かしこまりました。
第三 少々お待ちくださいませ。
第四 お待たせ致しました。
第五 ありがとうございました、またのご来店をお待 待ちしております。
とあるけど、俺は別に砕けた感じでも、親しみやすさがあればいいと思っている。
マニュアル通りなんてつまらない、熱く語ってはいたが、異世界でお店を開く以上は楽しく仕事ができればそれでいいかなって思う。
「これを出勤したら、フェレナさんが言いやすいように声に出して読んで、身だしなみのチェックをして接客をお願いします」
「うん、わかった。これを私なりに読めばいいのね?」
まだ、ギルド長のグレイアスさんとジュリエナさんもいる事だし、練習がてらやってみてください。
「よし、わかったわ」
「いっらっしゃいMIKAZUKIへようこそ!」
「畏まりました」
「ちょっとお待ちくださいね」
「ありがとうございました、またどうぞ」
ちょっと砕けた感じにはなってたけど、悪い気はしないな。
「オメェにしてはなかなかいいんじゃねぇか」
「わたくしも貴族との食事をすることもありますが、そこまで悪いとは思いませんでしたわ」
なかなかの高評価を受けて、フェレナさんも満更ではないのか顔がニヤけている。
接客は慣れてもらうしかないけど、メニューの値段設定をどうするかだな…。
「ジュリエナさん、貴族様と食事もされたこともあるんですよね?この料理の値段をつけるとしたらいくらぐらいが妥当でしょうか…」
「んー、そうですわねぇ…わたくしなら月見ハンバーグは金貨1枚出しても良いと思いますわ」
「き、金貨1枚もですか?」
「はい、ここでしか食べられない貴重な料理ですからそれぐらいの値段はすると思いますわ、正直言いますと、貴族に出だしてもなんの問題もないほど美味しかったですわ」
「そいつは不味いな…アユム、ここの店の客はなるべく貴族は入れないようにしないといけねぇな」
「え、なんでですか?貴族、平民みんな仲良く食事をしてもらいたいんですけど…」
「あのなぁ〜、貴族が平民と仲良くできるわけねぇだろうが、貴族にはプライドが高いやつが多いし、一緒に食事なんてしてみろ、不敬罪とか因縁つけて食事どころじゃなくなるぞ」
「そんなぁ〜、まぁ今は人数制限があるから大丈夫でしょうけど」
「下手をすると、貴族がお前に屋敷で料理を作れと言ってきたりするかもしれん」
「あ、それは大丈夫です。料理は店舗出店した場所じゃないと料理は作れないので」
「場所があると言って無理やり作れていくかもしれんぞ?貴族の屋敷は無駄にでかいからなぁ」
すんごい脅してくるじゃん…ギルド長、なんか貴族と揉めたりしてるのかな?
「貴族となんかあったんですか?」
「なんもねぇよ、ただ、俺は貴族ってのが嫌いなんだ」
フェレナさんがこっそり耳打ちしてくる…
「貴族はギルドにも意見を言えるほどの発言権があるから、依頼とか無理矢理ねじ込んでくるときがたまにあるのよ、断ることもできないからギルド長は嫌ってるのよ」と教えてくれた。
何もなくないじゃん!めちゃくちゃ個人的な理由で嫌ってるじゃん…。
話が逸れたな…「とにかく値段です、金貨1枚は平民の人だとどうです?」
「平民ですとなかなか手が出せる値段ではないですわね、銅貨5枚でギリギリってとこでしょうか…」
銅貨5枚は 日本円だと500円になる。金貨1枚は1000円かぁ…町へ入るのに銅貸1枚掛かるんだよな、1泊するのに鉄貸8枚と考えると値段適正を間違えると詰んでしまう。
4人であーでもない、こうーでもないと話し合い取り敢えず値段設定が決まった。
モーニングセット(パンorライス付き 銅貸1枚
フライドポテト 鉄貸5枚
粗挽きソーセージ 鉄貸5枚
MIKAZUKIカレー 銅貸1枚
月見ハンバーグ 銅貸5枚
月見ハンバーグは安いと貴族の耳に入るのが早いかもしれないということで、ジュリエナさんの値段を参考にしたが、本人曰く、銅貸5枚でも安すぎるとのこと。でも、これ以上値段を上げても、普通の人が食べれないんじゃやっていく意味が無くなるので、銅貸5枚で納得してもらったわけだ…。
こうして値段設定も終わり、フェレナさんに注意事項を教えたりして、日が暮れてきたのでみんなで帰ることにした。
明日から本格的に営業することになるけど、どんな明日が待ってるか楽しみで仕方がない。今日は早めに休んで明日の営業に備えるのであった…。
★
アユム達が試食会をしているその一方で、ある村から一人の男がパナットの村へ向かって歩きだしていた。
「あの旅の商人はまだパナットに居るのだろうか…情報料の代わりに貰っておいた黄色い果実…初めて見る果実だったが、美味しかった…なんで追い出したんだと村のみんなから責め立てられたが、俺だけのせいじゃねぇ…なんとか場を抑えて切り抜けたが、俺が探しに出ることになった、まだいるかどうかもわからないが探すしかねぇ」
どうやら、アユムが最初に寄った村、ポッテ村の住人の男がバナナの美味しさにアユムを探しにパナットの町に歩きだしていた、男の名はパートン。不穏な影が迫っている事をアユムはまだ知らない…
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