第十六話 メニュー試食会
第八話のモーニングセットの詳しい作り方を追加し変更しました。
商業ギルドで営業許可書を貰った後、ウキウキ、ワクワクした顔のギルド長が早速、北区で俺の作った美味しい料理を食べてみたいというので、急かされて北区まで来た。
なんで、可愛い子に食べさせるのならまだしも、眼帯スキンヘッドのオッサンに食べさせないといけないのか…なんだかモヤモヤする。
北区の空きスペースに付いたので、店舗出店を発動させる。時間的に午後の15時くらいの時間なので、子供達や歩いてる人たちもチラホラ見受けられるなか、いきなり空き地に建物が出現したので、歩くのをやめ目を丸くしている。
「さぁ、入ってください。レストランMIKAZUKIへようこそ」
「なんだ?そのミカヅキって」
「MIKAZUKIは陰暦の(3日)前後の細い月の事ですね」
「さっぱりわからん…。」
やっぱり異世界人には陰暦とか知らないよなぁ、月も2つ出てるわけだし。
「要するに、俺が大好きな店って事です」
「なるほどなぁ、アユムが好きな言葉って事なんだな」
好きな言葉ではないんけど、もうこれ以上説明しても理解されない為、それでいい事にした。
中に入ろうとしたときに、商業ギルドの副ギルド長をしている金髪縦ロールのジュリエナさんも来たようだ。
「あの…わたくしもご一緒してもよろしいでしょうか?」
まぁ、店を開くのに、商業ギルドの方が居てくれたほうが安心はすると言うことで、俺、フェレナさん、ギルド長、ジュリエナさんの4人で店の中に入った。
金貨3枚(3000円)をチャージして、今できるメニューを確認する。
レストランメニュー(最大メニュー数5)
モーニングセット
フライドポテト
粗挽きソーセージ
MIKAZUKIカレー
月見ハンバーグ
と表示されている。
もうお昼は過ぎているが、夕飯には少し早い時間なので、机の横に設置してある紙ナプキンに今出せるメニューを書こうとしたのだが、レストからメニュー表があるというので、メニュー表をアイテムボックスから取り出した。
(なにこれ、俺作ってないんですけど?)
「解」「メニュー作りは私の仕事ですので」と返事が来た。
(レストさんやはり君は優秀です)
「お褒め頂きありがとうございます」
と頭の中でやり取りをする。
ソファに座っている3人にメニュー表を見せる。
「この中から食べたい料理を注文してください」
「この中からか?」
「あ、これ、昨日あたしが食べたやつだよね?」
「興味深いですわ」
「夕飯には少し早い時間なので、何が食べたいのか選んでいただけるとありがたいです」
「取り敢えずだ、5品しかないんだから、全部頼めばいいんじゃねぇか?どんな料理か分からんしな」
まぁ、そうだよな。5品しか出せないんだから、3人で5品なら普通に食べ切れるか。
「かしこまりました。5品全部ですね。少々お待ちくださいませ」
転生前にMIKAZUKIに毎日通っていたのでバイトの子の接客を覚えてしまっていた、これから毎日俺が言うことになるのだから、これも練習と思ってやっていこう。
キッチンの中に入り、料理を作ろう。さて…何から作ろうか?
キッチンの中はそれほど大きくはないので俺一人で動くのがやっとのスペースしかない、冷蔵庫と冷凍庫、解凍庫、鉄板台とフライヤー、湯煎ポットしか置いてない。
レベルが上がれば、オーブンや電子レンジが追加されるのだろう。
モーニングセットは一度作ったので作れるが…そう考えているとレストから他の作り方を教えてもらった。
まずは湯煎ポットに解凍庫から取り出した真空パックされたカレーを入れて、キッチンタイマーで5分セットする。
鉄板に卵リングを2つ置き、目玉焼きを作る。そのそばでウインナーを焼き、解凍庫からハンバーグを取り出し、鉄板に置きハンバーグの中心を抑えてくぼみをつけさせたあと蓋をして2分待つ…
1つはモーニングセット用の目玉焼き。2つめは月見ハンバーグ用の目玉焼きだ。
モーニングセット用の大プレートに冷蔵庫から取り出したレタスとトマトシャトーを盛り付けドレッシングをかける、その間に…冷凍庫からフライドポテトを取り出し、フライヤーに投入し5分待つ…。
フライヤーにはポテト専用のカゴが設置しており、散らばることもなく揚げることができる。
冷蔵庫から取り出した粗挽きソーセージもフライヤーに入れ2分揚げる。
そうこうしてる間に、鉄板の蓋を開け、ハンバーグターナーを使ってひっくり返す。程よい焼き色がついてていい感じだ。
卵リングをトングを使って外し、目玉焼きをモーニングセット用の大プレートに乗せウインナーを添える。
モーニングセット完成!
もう1つの目玉焼きは取り出して置いておく、再び、蓋を閉めて、ハンバーグを3分焼く。
2分経ってるのでフライヤーから粗挽きソーセージを取り出し小プレートの上に乗せたら粗挽きソーセージの完成!
最初に入れた湯煎ポットからカレーを取り出し、ライスを大プレートによそい、カレーをかけてMIKAZUKIカレーの完成!
フライドポテトも揚がったので小プレートにのせてフライドポテト完成!
3分経ったので、鉄板の蓋を外してハンバーグの中心から肉汁が溢れているのを確認し、鉄板に火を点けて温める。鉄板に添え用コーンとポテトを乗せたあとにハンバーグを乗せデミグラスソースをかける。
ジュージューとソースが飛び、香りが食欲を刺激する。取り出しておいた目玉焼きをハンバーグの上に載せたら月見ハンバーグの完成だ!
かかった時間はおよそ15分くらいかな?初めてフルメニュー作ったので時間的には問題ないのかもしれないけど、問題は、俺一人で店を回せるのかと言う不安が生まれたことだった…。
キッチンで俺が作るのは問題ないとして、ウエイトレスがあと一人必要な気がする。自分が注文を聞いて、自分が作るとなるとどうしても人員が足りない気がするよなぁ〜、みんながいる事だし、それも相談しようと思いながら、できた料理をテーブルに運ぶのだった…。
★
「お待たせいたしました、モーニングセット、フライドポテト、粗挽きソーセージ、MIKAZUKIカレー、月見ハンバーグでございます」
「おぉ、待ってたぜ、厨房から美味そうな匂いがしてて腹がなるとこだったぜ」
「ほんとあたしもお腹空いたぁ〜」
「この香りは素晴らしいですね」
「フェレナさん、あなたはさっきギルド長室でお茶請け食べてたじゃないですか…」
「別腹よ〜別腹」
(なぁーにが別腹だよ。転生前にいたギャルみたいな言い方して)
あ、フェレナさんの年齢を考えるとあながちギャルでも間違いではないのではないか?
「よし、食べようぜ!ちと、量が足りないかもしれねぇが、味見だしな」
それぞれ手を伸ばし、料理を口にする。
「美味い!これはゴロ芋だろ?なんでこんなに美味いんだ」
「むふぅー、美味い、この粗挽きソーセージ肉汁が溢れて堪らない」
「あぁ、どうしましょ…このカレーなるものはあまりの美味しさに手が止まりませんわ、ピリッと後からくる刺激が堪りませんわ」
「うめぇー、どれもこれも最高の御馳走じゃねぇか」
「ゴロ芋の揚げたやつもホクホクとしてるとこや、カリッとなってるとこがあって両方美味しい」
「月見ハンバーグは肉汁とソースがよく絡んでいてわたくしが食べてきた中でダントツで美味しいですわ」
「それは良かったです。作ったかいがありました」
「アユム、お前この料理はまず間違いなく流行るぞ、お前一人では手に負えなくなる恐れがある。」
「うんうん、あたしだったら毎日通うわ」
「わたくしも毎日通うようになるでしょう」
「うん、わかります。皆さんの反応を見る限り俺一人では厳しい気がしてます…人員が欲しいですね」
「と、言ってもなぁ、食べたことがあるやつにしかわからないだろうから、人員がすぐに集まるとは思えないな」
「それだったら、あたしが従業員になるよ、賄い付きで給料も貰えるならあたしが働きたいわ」
「おめぇ、冒険者はどうすんだ?依頼受けないと、冒険者登録抹消されるぞ」
「別にいい、あたし金稼ぎの為に冒険者になっただけで、そこまで冒険者に執着はしてないから。それにあたしが居た方がボディガードしてやれるしね」
おやおや、フェレナさんが働いてくれるのは嬉しいけど本当に良いのだろうか?賄い付きに釣られてるだけのような気がするが…
「そうか、まぁ、俺がこの店のオーナーってことになってるわけだし、お前が居てくれる方が安心か」
「フェレナさん、いいんですか?」
「いいわよ、アユムくんのスキルの成長も見れるわけでしょ?なんの問題もないわよ」
「そーいうこった、アユム、フェレナをよろしく頼む」
「いやいや、こちらこそよろしくお願いします」
「わたくしはお客としてここに食事をしにきますわ、もし、フェレナさんの他に従業員が欲しい場合は相談に乗りますわ」
「ジュリエナさんもありがとうございます」
「取り敢えず、この北区で頑張ってみます」
「おう、しっかり頼むぜぇ」
こうして、冒険者だったフェレナさんはあっさり冒険者を引退して、ファミリーレストランMIKAZUKIの従業員になるのだった…。
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