第十三話 怒れるギルド長
長いお話を聞いたあと、ギルド長に相談することになった。
「アユム君の持ってるスキルがね、とんでもないのよ」
「とんでもないって、どうとんでもないんだ?」
「ほら、アユム君自分で説明して」
「わかりました。フェレナさんにも詳しく話してないこともありますし、二人を信じて全部話しますね」
俺のスキルの(レストラン)アイテムボックス(無)
鑑定(全)のことについて包み隠さず話をした…。
フェレナさんとギルド長はとても驚いた顔をしていたが、無理もないだろう、この世界の物と引き換えにしてレストランレベルをあげないといけないなんて誰もわからないだろう…。
「固有スキル(レストラン)とか初めて聞くスキルだな」
「そんなに珍しいんですか?」
「珍しいと思うぞ、アイテムボックス自体が貴重なスキルって言われてるぐらいだからな」
「そうなんですね…これからどうしたらいいんでしょう」
「それはまず自分が何がしたいかを決めないことには、どうにもならんだろう」
「アユム君はお店を開きたいんだよね?」
「はい、家族やおひとり様に癒やしを与えられるようなお店を開きたいと考えてます」
「癒やしね〜素敵じゃない」
「でも、スキルのレベルを上げるのに大金貸1枚程かかるんですよ」
「そりゃ、大変じゃねーか、高ランクの依頼を多数受けないとそうそう大金貨なんて稼げないぜ」
「ですよね…。だから何か稼ぐ手段を見つけないといけなくて」
「それならさ、あの鉄の箱を出してお金稼げば良くない?」
「馬鹿、それだとアユムのスキル丸出しでバレちまうじゃねぇか」
「あ、それもそうかぁ」
「いや、どのみち店舗出店しないとお店は開けないので、それもアリなんですけど、素材をチャージしないとレベルが上がらないので僕が稼がないといけないんです」
「その店舗出店ってやつはここでも出せるのか?」
「いや、ここで出したらこの部屋潰れます…」
「そんなにデカイのか?」
「うん、デカかったわよ、アユム君のスキルでフォレストリザード討伐してきたもん」
さらっと爆弾投下してしまうフェレナさん…それ言ったらまた怒られちゃうじゃん!
ギルド長を見るとまた顔に青筋が入って怒りモードに突入した。
「フェレナてめぇ、何一般人のスキル使って危険な依頼こなしてやがる!!」
「えー、また怒るの?もーーしょうがないじゃん!!」
「しょうがないじゃねぇ、お前昔から問題ばっかり起こしてるんだから、ちったぁ〜反省しやがれ!」
「反省はちゃんとしてるんだよ〜すぐ忘れるだけ」
フェレナさん…それじゃダメじゃん。
「はぁぁ〜もういい、それよりアユム、その店舗なんとかってスキルを俺に見せてくれ」
「わかりました。じゃ、人があんまり居ないスペースがある場所どこかありますか?」
「それなら、北地区辺りがいいかもな。フェレナ先に行ってろ、俺はちょっと用事を片付けてから向かうから」
「えー、ギルド長が見たいって言ったんじゃん。さっさと行こうよ」
駄々をこね始めたフェレナさん…ギルド長忙しいのにわざわざ時間作って話聞いてもらってるの忘れちゃってるのかな…トラ人族の人って忘れやすい性格なんだろうか?
「あのなぁ、俺は忙しいって最初に言ったぞ。もう忘れたのか?書類のほうが溜まってるから、少し片付けてから行くって言ってんだよ俺はよぉ〜」
やばい…またギルド長がキレかかってる…俺がフェレナさんを連れ出さなければ一向に話が進まない。
「フェレナさん、ほら行きますよ。北区は何処ですか?案内してください」
そう言ってフェレナさんの手を引きギルド長室を出たのだった…。
★
冒険者ギルドから出るときもぶつくさ言っていたフェレナさんを無視しながら、案内された北区は、人通りも少なく、貧民街とでも言うのだろうか、とても寂しく活気がない地区になっていた。
時折、ボロボロの布切れを着た子供達を見かけたり、酒を片手に座り込んで飲んでいる老人がいたりと格差社会が浮き彫りになっているような光景を目の当たりにして心が痛んだ。
「アユム君は北区に来たのは初めてよね?ここは中央と違って寂れてるから少し治安が悪いとこなのよ、強盗や殺人は当たり前に起きてる場所だし、一人で来たらダメだよ」
「一人で来る勇気はありませんね…なんでこんな町の中に寂れた所があるんですか?」
「この町は冒険者の町って言われてるのは分かるわよね?冒険者と言っても必ず成功を納められる人ばかりではないわ、依頼に失敗したり、酒に溺れて借金をしてしまった人なんてことも珍しい話ではないわ、あたしだって依頼を失敗することもあるかもしれない…そんな人が身を寄せ合って暮らしてる場所がここ北区なのよ」
「この町を管理している、領主様も知ってるんですよね?なんとかすることはできないんですか?」
「あたしは領主様じゃないし、この町の出身でもないからわからないわよ」
俺は日本で生まれて育ってきたせいか、日本の考えで物事を考えてしまうが、ここは日本じゃない異世界だ。俺にできることなんてない…そう思うと何もできない自分が情けない…そう考えていた時に「解」「その為に固有スキル(レストラン)があります」
急にレストから言われて俺の頭の中にレストのプランが流れ込んだ。
そのプランとは…
ここ、北区にレストランを開き、利用客に物々交換して貰いつつ料理を提供する。そうすることで少しずつレストランチャージ金額を貯めていきレベルアップを量るというもの。
うまく行くかはわからないけど…チャージする金額を貯めるには店舗出店していた方が貯まりやすいとレストから言われた。
「フェレナさん、この場所に店舗出店を出してもいいですか?」
「へ?ここに?ただ出すだけでしょ?」
「いや、ここに店舗出店して、営業しようかと思いまして」
「いやいやいや…ここ北区よ?治安悪いって言ったばかりじゃん」
「わかってます。だけど、ここを少しでも変えていきたいんです。この目でこの状況を見てしまったら、俺にできることは俺のスキルを使って癒しを少しでも与えてあげたいんです」
「熱く語ってるとこ悪いが…今は無理だぜ」
振り向くと俺の後ろにギルド長が立っていた。
「なんで無理なんですか?」
「なんでって、お前、商業ギルドで営業許可書取らないと営業できねぇぞ」
「あ…そうなんですね…。ちゃんとそういうのいるんですね」
「当たり前だ!営業許可のないやつが商売なんかしたら極刑だぞ。
落ち着いたか?もう日が暮れちまう、早くスキル見せろ」
「わかりました。いきます、店舗出店」
大きな鉄の箱店舗出店Lv1の倉庫タイプが目の前に現れた。
「ほぅ、すげぇじゃねぇか」
「でしょでしょ!アユム君って凄いのよ」
フェレナさんが褒めちぎる…なんでフェレナさんが自慢してるんだろう…俺が自慢するとこなのに…。
「中にも入れるんだろ?」
「入れますよ、どうぞ入ってみてください」
ギルド長と2回目のフェレナさんを店舗の中に入れる。
「ほぅ、良くできた部屋じゃねぇか、ここで料理を出すってわけか」
「そうそう、凄く美味しい料理だったわよ、また食べたいって思えるほどにね」
「味音痴のお前がそれほど褒めるたぁ〜俺も食べてみたいが、それだと営業違反になっちまうから、明日、商業ギルドに行って営業許可書を申請しないといけねぇな」
「商業ギルドも中央区にあるんですか?」
「ん?お前何も知らないのか?」
「はい…まだこの町に来て、まだ2日しか経っていないので、全然わかりません」
「おい!フェレナ、アユムにこの町の案内をするのが先だろうが!依頼受けてる場合じゃないだろう」
「ごめんって…そんなに怒ると禿げるよ?」
「これはハゲじゃねぇ、剃ってるんだよ馬鹿野郎!」
ギルド長のスキンヘッドは剃ってるという要らん情報を聞きつつ、三人で冒険者ギルドに戻り、アイテムボックスの中身を出し、予想外の量にまた怒られ…疲れた1日になったのであった…。
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