第十二話 口喧嘩と説教
グレイアスギルド長の家名追加しました。
フェレナさんが冒険者ギルドに行ってしまったので、俺は宿の部屋に入ってアイテムボックスを整理しようと中身を見ると、「ありゃ…魔物入れたまんまじゃん。」
そういえば…フェレナさん町に帰ってきたら魔物解体するからそのまま持っててって言ってたよな。
そう考えた時、部屋の扉がノックされた。
「アユム君、いる?」
フェレナさんが引き返して戻ってきたみたいだ、すぐに扉を開けて「アイテムボックスの魔物の件ですよね」
「そうそう、あたしもうっかり忘れててそのまま冒険者ギルドに向かうとこだったわ。悪いけど一緒に来てもらえる?」
「魔物を冒険者ギルドに見せるんですよね?でも、結構な数入ってますけど…流石に見られるのは不味いですよね…」
「うん、不味いどころか、注目されて領主様のところまで連行される恐れがあるわね」
いやいや…それは嫌だわ。まだこの町に来て2日しか経っていないし、町を歩き回ってもいないのに連行されるかもしれないってどんだけ危ない町なんだよ…
「できれば小出しして、バレないようにはできないんですか?」
「それも考えたんだけど…あたしさ、こうなったらギルド長を巻き込んでしまおうと思ってるのよ。」
「ギルド長を巻き込むですか…」
「うん、ギルド長は意外と話がわかる人だし、アユム君のスキルの事は話さなきゃならないんだけど、味方になってくれたら、強い後ろ盾を得られると思う」
「後ろ盾ですか…でも、どの道俺に選択する余地はなさそうですね」
「あはは、まぁ、そうなるかな」
「わかりました。フェレナさんを信じます」
「うんうん、任せなさい! それじゃ、冒険者ギルド行こうか」
ギルド長の事は少し気になるけど、フェレナさんに任せようと思うことにした俺はフェレナさんと二人で冒険者ギルドに向かったのだった…。
★
冒険者ギルドに着いた俺達はギルドの受付嬢の人にギルド長に会わせてもらえないか聞いてみた。
「いらっしゃいませ、本日はどの様な要件でしょうか」
事務的な会話をしてきた、メガネをかけた知的溢れるエルフの美人さんに俺は一瞬、見惚れてしまった…。
耳が尖っていて長いし、ファンタジー世界の定番のエルフ…初めて見たけど、可愛いというより、綺麗な顔をしていて、見惚れてしまうのも無理はないだろう。
「ゴホン…私の顔に何かついてますか?」
「あ、いえ…あまりにお綺麗な方だったので見惚れてしまいました」
「へぇ~、アユム君ってこういうのがタイプなんだ〜」
「いや、違いますよ、初めてエルフの方を見たんで見惚れてしまっただけですよ」
「あたしにはそんなこと言ったことないじゃん!」
フェレナさんに怒られてしまった…
「それはそれは、ありがとうございます。よく言われます」
よく言われるんだ……やっぱり綺麗な顔してるしな〜それにしても、この世界は顔面偏差値が異常に高いな…そこら辺を見渡しても、イケメン、イケジョがあちらこちらにいる。
「それで、ご用件をお伺い致します」
「あ、すいません…。ギルド長に会いたいのですが会うことができますか?」
「失礼ですが、冒険者カードの掲示をお願いできますか?」
「あたしは掲示できるけど、彼は冒険者登録していないから冒険者カード持っていないわ」
すると、知的美人エルフの顔つきが変わった。
「冒険者未登録の方がギルド長になんのようですか」
明らかに、不機嫌そうな顔をして俺の顔を睨んでくるメガネ美人エルフ。
「あたしが用があるのよ、彼は付き添い人だから、さっさとギルド長呼んできてよ」
俺のせいで、険悪な雰囲気になってきて申し訳ない気持ちになりながら、フェレナさんとメガネ美人エルフのやり取りを聞いていると…
「うるせーな!喧嘩なら他所でやれ!バカタレが」
ギルド受付奥の方から、スキンヘッドで片目に眼帯を付けた大柄の男が怒鳴ってきた。
「何だ、居るんじゃんギルド長」
「あぁ!何だフェレナか、何のようだ?」
「用があったからギルド長を呼んでもらおうと思ったらこの耳長エルフが絡んできやがったから言い合いしてただけよ」
「わかった、わかった話聞いてやる、部屋に来い。イザリナもムキになるな、知的美人が台無しになるぞ!」
「申し訳ございません…」
メガネ美人エルフさんはイザリナという名前みたいだな、受付けでひと悶着あったけど、ギルド長が出てきてくれたおかげで落ち着きを取り戻したみたいだ。
「お前は初めて見る顔だな、新人か?フェレナの連れみたいだが」
「その彼のことについて話がしたいんだよ」
「わかった、一緒に来い」
ギルド長に言われ受付奥にあるギルド長室に入った。
部屋に入ると様々な書類が山積みにされていて、ギルド長の仕事の大変さを知った気がした。
長机に置いてある書類を無造作に避けて場所を作ってくれたのでソファに座り話をすることにする。
「んで、話ってなんだ?俺は見ての通り忙しいんだぞ」
「まぁまぁ、忙しいのは知ってるけどさ、まず自己紹介からでしょ」
「俺がパナット町のギルド長をしているグレイアス・ヴェルナーだ、元Sランク冒険者で灼熱のグレイアスと異名も持ってる。よろしく!」
あ、自分で異名持ってるって言っちゃうんだ…異名って他の人が言うんじゃないのかな?
自己紹介をしてと目配せをしてきたので自己紹介をする「初めまして、アユムと申します。現在、フェレナさんの荷物持ちをしております。よろしくお願いします」
「荷物持ちだと…フェレナてめぇ、依頼に一般人連れて行ってねぇだろうな」
「あは…連れて行っちゃった…」
「馬鹿野郎!冒険者規約にもあるだろうが!冒険者の依頼は荷物持ちでも冒険者登録した者と行動しなければならないって」
「うっかりしてたのよ、あたしもソロでやってるのに限界が来てて…ちょうど仕事探してるってアユム君に出会ったからつい…ね」
「はぁ…お前、冒険者カード剥奪案件だぞ?」
「だから、こうして説明してるじゃない」
「お前、謝罪の言葉すら出てねぇじゃねぇか」
「悪かったって、もう、しませんから冒険者カード剥奪だけは勘弁してください」
必死のフェレナさんの謝罪が始まったのだが…あれ?俺、関係なくね?と思っていると。
「アユムだっけか、お前もお前だ、仕事なら冒険者登録して金を稼ぐ選択だってあったはずだ、冒険者にならなくても、働く場所はいくらでもあるのに……」
怒りの矛先がこちらにも向いた…えーーなんで俺も怒られるの…その後、たっぷり1時間程説教されて、ようやく本題の俺のスキルについての話をすることになったのだった…。
面白そう、続きが気になると思ってくれましたら星の評価をお願いします。