白い恋人たち(スキーは楽し編)
白い恋人たち(スキーは楽し編)
昨日でペンションのアルバイトも終わり今日一日はスキー三昧の予定なの。本格的なスキーに少し気合が入る。
しかも、いつも起きるのが遅い奈緒子たちも今日はやたらと朝は早くから起きだしハイテンションなのだ。
奈緒子なんかアルバイトのときは化粧なんてし少ししかししなかったのに、今日は朝から鏡とにらめっこしている。
でも今日は天気がいいので雪焼けしないようにUVメイクだけはしっかりした。だってお義母さんに「明日からの撮影に影響がないように」ってくぎを刺されているの・・・。
食堂に降りてゆくと、もう上ノ内さん達が待っていた。「おはようございます」って挨拶すると「おはよう。今日のスキーの指導は任せて」って胸を叩いた。
上ノ内さん達はもうスキーウエアーに着替えていて、いつでも良いように準備していた。
「俺たちは、早朝スキーで体をほぐしてくるよ。君たちはゆっくりして着替えてて。又一時間後にここに来るからそれから始めよう」って外に行く準備を始めた。
私たちは「よろしくおねがいします」って頭を下げて、朝食を取るべくテーブルにすわった。
裕未や佐織が私に「良かったね。コーチが簡単に見つかって。しかも無料だし」ってVサインを出した。
奈緒子たちの彼氏達は今日の午後ぐらいにこちらに来れるらしい。それまでは全員一緒の行動だなのだ。「頂きまーす」って朝食に手をつけた。
朝食が終わりスキーウエアーに着替えた後スキー板を持ってペンションの前に出てゆくと。ウエーデルンでカッコよく数人が並んで滑降する人たちがいた。
裕未があの人たち「カッコイイね」って滑る姿を憧れの目で追っ手いた。
彼らは、きれいなシュプールを描いて私たちのすこし前に雪煙を上げて停止した。そしてすばやくスキー板をはずして私たちのほうに手を上げた。
私たちが、目を点にしていると彼らはゴーグルを外した。
佐織が「あ・・・かっこいいと思ったら上ノ内さんたちじゃないですか」って雪の上をおぼつかない足取りで駆け寄ると、もちろん私たちも後を追った。
彼らは、佐織の「かっこいい」って言葉に反応し全員が表情を崩し、私たちに「「やあ」」って手を上げた。
私たちは横一列に並んで「「今日はよろしくお願いします」」ってお願いした。
でも奈緒子が「コーチは2時半ごろまででお願いします。」って言うと。
「え?・・・なぜ」って聞く。
私を除く3人は今日の三時に彼氏が来ることになっているのだ。又都合よく奈緒子・佐織・裕未が「「「彼氏が来るの!」」」って声を合わせて言うと、お互い顔を合わせてはにかんだ。
男性陣が「あ・・・」っと最初に合った時にした話を思い出し頭を抱えて”しまった”って顔をした。
でも私一人だけ何も言わなかった為全員が私に向かって「君は来ないようだね」って言ってきた。
「あ・・でも私。明日の打ち合わせがあるから奈緒子たちも一緒に終わってほしいです」
上ノ内さんの横にいる人が「なに?・・なんの打ち合わせ」って聞いてきた。
「え~っと戸井さんでしたっけ」
「わ~ありがとう名前覚えていてくれてたんだね」ってニコニコ顔で一歩前に出と、慌てて左右にいる人がむんずと肩をつかみ元に戻した。
「わわわ!」戸井さんはバランスを崩しながら横並びになり左右の人を睨みつけた。
「すみません。明日から又撮影があるの」
「撮影?」
「はい。詳しいことは言えないんですけど・・・」
私は奈緒子たちを見ながら「今度は奈緒子たちもエキストラで出てほしいって、マネージャーさんが」って言いかけたところで慌てて口を手でふさいだ。
いけない!その話はまだ内証だった。
奈緒子たちが「「え~!!」」「そんな話聞いてないよ!」って困惑の顔をした。
「ごめんなさい。たぶん夕方には話があるはずなの、OKしてね」って両手を合わせて拝むように彼女たちにお願いをした。
これには男性陣も「あははは」って思わず笑う。奈緒子たちは思わずほほを膨らまして抗議した。
「しかし 残念だね俺達今日で帰るんだ」「おう 何を撮るのかわからないけど見たかったな」って男性陣が悔しがった。
上の内さんが「まあそれは仕方がない。じゃパートナーを決めようかお互い丁度4対4だからさ」「女性陣の意見を尊重し君たちで指名してくれていいよ。全員が指導員の資格は持っているから教えるのに優劣はないよ。」
私たちは全く滑れない私と裕未・ある程度滑れる奈緒子初心者の域を出ない佐織って感じだ。
奈緒子が先頭を切って横に並んでいる右から二人目の人を指名した。それは戸井君だった。彼は少し苦笑しながらも「OK]って奈緒子に手を出した。
裕未と佐織が「「私は!」」ってそれぞれの人に向かって手を出す。そして最後に残った上の内さんが、小さく「ラッキー」って言って、にやってっ笑って私に手を差し出してきた。
奈緒子たちが「結衣は、ちゃんと好い人がいるんだから、わかってるわよね」って上の内さんにくぎを刺した。
上の内さんは「わかってるよ」って私の手を握って「じゃ。個人レッスンを開始しますか」って彼らに声をかけた。
「「おー」」っと掛け声ともに各パートナー同士手を握って各所へ移動した。
私は「おねがいします」ってほほを染めながら上の内さんの手を握った。彼は満面の笑みを浮かべ「じゃ。まず板の履き方から覚えようが」って私の立てかけてあったスキー板を持ってなるべく斜面の角度のないところへ移動した。少し近くには裕未も同様にしていた。
奈緒子と佐織はリフト乗り場に向かうみたいだ。
彼はスキー板を斜面に直角に置いて滑らないように手で支えてくれ「まずは履こうか」って私に催促した。
私はスキー板を借りたときに一度履いてみただけで全くの初心者なのだ。慌ててスキー板を履こうとするのだけど、ロックが掛からない。
「あはは。結衣ちゃん靴の裏の雪を落とさないときちんと履けないよ。僕の方に靴の裏を見せて」
「え?・・」「靴の裏にいっぱい雪がこべり付いて、ロックの邪魔をしてるんだよ。払ってあげるから靴の裏をこちらに向けて」
ストックで体を支えながら上の内さんに靴の裏を向けると彼のストックで靴の裏に付いている雪を払ってくれた。
スキーの金具に靴を合わせてググって踏み込むと、ガチャって音とともにスキー板と私の履いている靴が一体となった。
両足とも履き終えると、初めてスキーを履いて雪の上に立って俄然やり気が出てきた。
「行くわよ」って心で気合を入れたら「あ・・あ・・あああ」勝手に後ろに滑ってゆく。
なすすべくも無く、手をくるくる回して何とかバランスを取っていると、彼がすっとスキーの先を手でさえて止めてくれた。
その拍子に私は後ろに尻もちをついちゃった。なんとか彼の手とストックを使って起き上ると、スキーの先の方向を変えて後ろにはいかないようにしてくれた。
これからの行き先がすこし不安になっちゃた。
でも滑りだしたら結構うまく行っちゃって、次々といろんな滑り方や止まり方を教えてもらった。
「結衣ちゃん。運動神経好いね、教えるのが簡単でいいわ」って誉めてくれた。
「いいえ。そんなことないですよ」って言いながら、心では「よ~し。しっかり覚えてひろくんを見返してやるんだ!!」私はさらに気合をいれた。
斜面を脚をそろえながらゆっくり滑ってゆくと。裕未がへっぴり腰で滑っているのが見えた。「あぁ・・」って見てると裕未がおもっきし尻もちをついて転んだ。
裕未の近くまで滑って行き「裕未だいじょうぶ?」って声をかける。
「あはは。あんまり大丈夫でないよ」って苦笑すながら、頭をポリポリ掻くふりをする。裕未の顔にはかなり疲労が浮かんでいる。
上の内さんが裕未の指導相手の持田さんと声を掛け合って携帯をとりだし、どこかに掛けたようだ「お!俺だ。少し早いけどランチにしようか」「わかったペンションの裏口に集合な」って携帯をしまった。
「君たち今他の連中に連絡を取ったから、少し早いけどランチタイムにしよう泊ってたペンションの裏口までゆっくり滑ろうか」って話しかけた。
裕未はほっとした顔してから、私に「一緒に滑って」って言ってきた。もちろんランチ休憩のためだ。
「うん。ゆっくり滑ろうね」って声をかけて先に滑って行った。後を追いかけるように滑りだしたらしいけど「結衣!早いよ~もっと遅く」って後ろから大きな声で裕未が叫んだ。
止まって後ろを向くろ裕未がへっぴり腰でかなり離れた所から私に向かって滑ってくるのが見えた。私の所まで来ると、又尻もちをついてコケ止まった。
「裕未。先行で行ってよ」って言うと「え~・・・カッコ悪いの見られちゃう」って頬を膨らましながらも立ち上がり滑り始めた。
その横を彼らが見守りながら滑ってゆく。それに合わせて私も滑り始めた。裕未は時々「キャー」って声を上げながら尻もちをついて転ぶ。
それなりの時間をかけてペンションの裏口につくと、奈緒子たちはもう先に着いていた。
手を振りながら奈緒子の前に止まると「結衣。すごいじゃん本当に滑るの今日が初めて?」って疑いのまなざしを向ける。
「もちろんよ」って言うと横から「彼女も最初はあっという間にこけたよ」って上の内さんが答えた。
私は「こけた」の言葉に少しむくれて頬を膨らまし赤い顔をした。
でも私の横で裕未が止まれずにこけていた。もうスキー板を外していた佐織が裕未を助け起こしお尻についた雪を払った。
私たちはスキー板を外すと上の内さんたちが私たちのスキー板を立てかけて整理してくれた。
奈緒子が「中に入ろう」って先頭を切ってドアを開けて入って行った。私たちは食堂でなく3階の大広間に食事を用意してもらいワイワイ言いながら食事タイムを過ごした。
奈緒子が「午後からは皆で滑ろうよ」って言うと。佐織や男性陣はもろ手を挙げて賛成する。
一人浮かない顔が・・・裕未だった。「私は一人で過ごすよ。皆で滑っていいよ」って心なしか落ち込んでいる。
佐織が「裕未がいなきゃつまんないよ。一緒に行こうよ」って誘う。
「でも・・・私がいると足を引っ張っちゃうもん」って俯き加減で言う。
裕未のコーチをしていた持田って人が「最初はどうしようかと思ったけど裕未ちゃんものすごく上達したよ。今ぐらい上達したら、皆と一緒の方が上達も早いよ」ってフォローしてくれる。
皆の勧めもあり裕未の固い口から「足引っ張っちゃても文句言いっこなしよ」ってようやく折れてくれた。
でも午後からは全員で楽しく滑ることができた。裕未もさらに上手になったようでニコニコ顔だった。
彼らの帰宅時間が近づいてきたので、上の内さんが全員で今より上に行って解散しようかってゴンドラに向かって滑り始めた。
ゴンドラに乗ってかなり上まで行くことができた。
「わーすごくいい眺め」って裕未が感嘆の声を上げる。女性陣は皆同意見なのだ。うんうんとうなずく。
男性陣はスキーの上手い奈緒子と佐織に「俺たちは上級者コースで帰るけど、君たちは林間の初心者コースで帰ること。たぶん下に着いたころにはいい時間になっていると思うよ。」ってアドバイスをして男性陣は私たちに手を振りながら上級者コースを滑って帰って行った。
私たちは「ありがとう」って全員で手を振って彼らを見送った。
奈緒子が「じゃ私たちも降りましょうか」って林間コースに向かって滑り始めた。佐織も「こっちだよ」って手で示し「私は一番最後にするわ」って林間コースに私たちが進むのを確認して後を追ってくれた。
裕未もこのころはへっぴり腰ながら意外とスムーズに滑り長いコースを途中途中で休憩しながら滑って行った。
コースの都合でほかの上級者コースを横断する所で少しつまずき気味になっていると・・・。
「ねえ君たち何処から来たの。一緒に滑らない」って8人組の男性陣に声をかけられた。
奈緒子が彼氏がもうすぐ来ることが分かっているのか「いいです。私たちだけで滑ります。」って丁度こけてしまった私の腕を取り起こしながら「皆行こうか」って声をかける。
佐織が「Ok」って今度は先頭で滑り始めた。
私や裕未もそのあとを追う。
ゆっくり滑る私たちの周りをなぜか彼らが付きまとい、楽しいスキーが一転暗雲が立ち込める。私たちは無口になり黙々と林間コースを進んだ。
沈黙に耐えかねて裕未がコースを外れ大きく転倒した。奈緒子が慌てて裕未のそばに行こうとすると男性陣の一人がそれを遮りさらにもう一人が転倒している裕未に近づき手を出してきた。
裕未がびくつき体をこわばらせた。残りのメンバーも私たちに張り付いて身動きが出来ないようにする。そして・・・。
とうとう裕未に魔の手が伸びる。「きゃー!」裕未が悲鳴を上げた。
佐織が自分の手を握っている男性の手を無理やりはがしスキー板をはずして裕未のもとへ、そして奈緒子もかな切り声をあげて行き先をふさいでいる人に道を開けようとするが・・・。
佐織はすぐ又腕を取られ、奈緒子も脇を通ろうとした時に捕まってしまった。私に張り付いている人もじりじりと向かって来た。
皆が悲鳴などを挙げながら抵抗していると。
「貴様ら嫌がる人相手に何をやってるんだ」って少し上から声が聞こえた。
声の方をちらっと見て一人なのを確認して「えへへちょっと遊んでるだけだよ」って手を緩めない。
「まったく・・・お前ら、どうしようもない連中だな」って私たちに近づく。慌てて残りのメンバーが助けに来た人に向かって威嚇しながらこちらに来れないようブロックにかかる。
「よお!お待たせ ははん 佐橋こいつらか連絡のあった連中っていうのは」って声がすると、次々と同じスキーウエアーを着た人が現れた。
私たちに絡んでいる中のリーダーと思わしき人が「げ・・・お前らゲレンデパトロールか」って慌てて逃げようとするが多くの人に囲まれて全員がおとなしくなった。
私たちは彼らと離れぱパトロール隊に守られほっとした。
最初に来た人が私たちの前に来てゴーグルを取って挨拶する「お嬢さん方少し遅れて申し訳なったね。こいつらナンパ恐喝強盗の常習犯らしいんだ。」
「えええ!」奈緒子が嫌な顔をして言う。
「少し前にこいつらを見かけたって連絡があったから、彼らを探していたところに丁度貴方達が絡まれていたのを見かけて慌てて駆け付けたけど、だいぶ絡まれちゃったみたいだね」
そう言いながら私たちの顔色をうかがい心配そうな顔をするも・・・「あれ?君って葵ちゃんだね」って私の顔をのぞいてきた。
「あ・・・会長さんですね。助けていただきありがとうございます」って頭を下げた。
奈緒子は「結衣。知り合い?」
「うん。ここの青年会の会長さん イベントの時に知り合いに」
そう話しているうちにナンパしてきた人たちは大勢に囲まれて捕まったみたい。
「彼らはどうなるんです」って佐織が尋ねた。
会長さんの横にいる人が「彼らはね、かなりひどいことをやったみたいで、じつは大勢の人から告訴されているんだ。申し訳ないが後で事情聴取をお願いするので何処に宿泊しているのかを教えてほしい」
会長さんが「彼女たちは大林さんのところのペンションでアルバイトしていた子たちだよ」って言ってくれた。
「あ。あそこか、なんか人がいっぱい来てすごかったらしいじゃないか。ん わかった後で寄らしてもらうよ」って慌てて連行されている人たちを追った。
会長さんと数人の人が残り「俺たちが下まで一緒に付いていってあげるよ」って同行をしてくれることになった。
「「すみません」」「「おねがいします」」
会長さんたちと一緒にゆっくり下へ滑り下りて行くことになった。
ペンション近くになってペンション方向をみると三人の人が私たちに手大きく振ってきた。
でした
奈緒子が笑顔になり大きく手を振ると裕未や佐織も負けじと手を振りながらペンションへと滑り降りて行った。
もちろん奈緒子と佐織はスーッと裕未は少しへっぴり腰ながらもあまりモタツキせずにだ。
やっぱり・・・三人は彼女たちの彼氏たちだった。
彼女たちは口々にさっきの出来事を彼氏に話している。やはり彼氏たちと一緒だと笑顔がいっぱいだ。
思わず私も笑顔が出た。
彼氏たちが一斉に私を見ると「君・・・葵ちゃん?」って彼氏たちが笑顔が満開になる。
「「「う・・・」」」当然彼女たちの肘鉄が彼らのわき腹に刺さったのはすごく当たり前のことだった。
わき腹を抑えて苦い顔をする彼らを見て苦笑する私だった。