白い恋人たち(年越し編)
白い恋人たち(年越し編)
結衣が来るまでには、まだ時間がある。少し仮眠を取るべくベットに横になって目をつぶった・・・その時。
ドアをノックする音が聞こえる。白石さんかな?今日は打ち合わせなんか無い筈なのに・・・とりあえず「空いてるよ」って答えると、ドアがゆっくり開き、扉から中をのぞく顔が見える。
「結衣?」・・・なんと結衣が顔を覗かせていた。「誰も居ないよ。入っておいで」って声をかけると、きょろきょろしながら部屋に入ってきて「へへへ。少し早いけど来ちゃった」って言う。
確かに早い予定より1時間近く早い「こんなに早くて大丈夫かい?」って尋ねた。
「大丈夫。だって佳代子さんが少し早いけど・・・って言ってくれたもん」って答えた。
気を遣わしちゃったな、なんて心で佳代子さんにお礼を言った。「早く逢えて良かった。結衣が来るまでにつまらないから少し休憩するところだったよ」って答えると。
「私も早く逢いたかったよ。アルバイトが思ったより大変で・・・でも、ひろくんにあえると思ったら頑張れたんだよ」って結衣は微笑んだ。
結衣はあいも変わらず可愛い事を言ってくれる。俺は慌てて結衣を招き入れてからしっかりドアをロックして・・・
思わず抱きしめてキスをした。「ああん」色っぽい声を上げて俺にしがみついてくる。
そのまま抱き上げてベットまでって行動し様としたときにドアをノックする音がした。
無視して結衣をお姫様抱っこして運ぼうとすると、さらにノック音が大きくなる。結衣が気にして「ひろくん。出ないと」って俺の腕から逃れようとした。
俺は仕方がなく結衣を降ろしてドアに行った。どうせ白石さんだろうって扉のロックをはずすと、あっという間にドアが開けられてお袋が現れた。
第一声「結衣ちゃん元気?」だった。結衣は慌ててスカートの乱れを直しつつ「こんばんわ。お義母さん」って返事をした。
俺は頭を抱えて「お母さん。何しに来た?」ってお袋にたずねる。
「打ち合わせよ・打ち合わせ、打ち合わせに来たのよ。でもなんだかお邪魔だったんじゃないかな」って知れーって言う。
俺はぶっちょう面で、結衣は顔を真っ赤にして苦笑した。
「おかしいな・・・例の企画の打ち合わせは来年だったはずだけど、どんな魂胆で現れた?」ってお袋に尋ねた。
結衣は「えぇ そうなの?」って不思議な顔をする」
「ははは・・・御免ね、実は打ち合わせって言うのはうそよ。結衣ちゃんの顔を見たかっただけなの、大みそかに会えなくて寂しくって」って結衣に近づく。
結衣が「今回は私の都合でアルバイトなんかして、勝って言って御免なさい」って頭を下げた。
お袋はニコニコしながら「良いのよ。そのお陰でジュジュの企画も考えられたし、こうやって大晦日も一緒に居られるし」って上機嫌だ。
俺は折角結衣と二人きりで新年を迎えられるって思ったのに、お邪魔虫が現れて少し機嫌が悪くなってしまった。
でも結衣はおふくろの言葉に大喜びなので我慢することにした。「もう・・・お母さんには参った。三人で新年を迎えようか」って言うと・・・再び扉がノックされた。
怪訝な顔で結衣と二人でドアのほうを見ると、男の人が顔を見せた。結衣が「お義父さん」って声を上げた。
俺はあきれた顔をするしか無かった。思わずため息が出る「は~・・・」
結局四人しての年越しになってしまった。折角結衣と二人きりでいい事しようと思っていたのに、仕方が無く肩を落とした俺だった。
去年と同じで四人でTVを見て、カウントダウンを迎えた。俺が新年の花火が上がるよって、結衣を誘って窓からゲレンデを覗くと零時の鐘の音と同時に粉雪が舞うゲレンデに何発もの花火が上がった。
「わーきれい」結衣が目を輝かして花火を見つめた。
たしかに粉雪の舞う中の花火はすごく綺麗で思わす結衣の腰に手を当てて抱き寄せた。「あけましておめでとう今年もよろしく」って言って
そして・・・口付けをすると結衣が一瞬びっくりした表情を見せたけどすぐ抱きついてきた。
後で慌てて新年のあいさつをした。「あけましておめでとうこちらこそよろしくお願いします」って結衣が挨拶した。
幸せな気分だったけど両親を忘れていたために思わず振り向いたが、何故かいつの間にか両親が居なくなっていた。
どうも俺たちに気を使ってくれたらしい。結衣もびっくりしている。テーブルの上に手紙があった。
「あけましておめでとう!新年は二人でね はあと byお母さんより」 俺は手紙を見てニヤってほほ笑んだ。
しばらくの間花火を見て過ごし
さっと結衣をお姫様だっこしてベットまで連れてゆくと、結衣は真っ赤な顔で恥ずかしがった。
姫はじめで新年がスタートした。はあと。
そして朝早く、結衣は起きだし「皆の所に帰るわね」って名残惜しそうに帰って行った。
「あと少しでまた会えるから」って手を振って結衣を送り出した。
今年もよい年でありますようにって仮眠をとるように結衣のぬくもりが残っているベットに向かった。