白い恋人たち(イベント編 前半)
白い恋人たち(イベント編 前半)
次の朝、白石さんがホテルのドアをノックする。
十分に目覚めていた俺はドアを開けると白石さんの後ろにもう一人ワゴン車を持った人が立っていた。
「おはよう」って白石さんが部屋に入ると後ろの人も後を追って入ってきた。ワゴンには朝食が乗っていた。
「おはよう」って挨拶をすると、ワゴンを運んできた女の人が恥ずかしそうな顔をして「おはようございます」って、テーブルに朝食を並べてくれた。
「ごくろうさま」って言うと、顔を赤らめて「握手お願いできますか」って聞いてきたので、思わず苦笑し「いいよ」って手を出した。
おずおずと手を出した彼女の手を握ってあげると真っ赤な顔をしながら「ありがとうございます」って慌ててワゴン車を押して出て行った。
白石さんが「結衣ちゃんにいってやろ」って悪魔の微笑をする。思わず「ファンは大切にしなきゃ」って営業の顔をして言った。
朝食をとりながら、イベントの最終確認をする。「31日(大晦日)の今日は、10時半より12時までの一時間半と午後の2時より4時までの2時間だね」って白石さんの時間の確認をする。
「ええ・・・ですけどナイターでのお願いも、持ち上がっています。貴方しだいだけど追加をどうしますか?」って聞いてきた。
「う~ん」悩んでいると。「受けてもらえれば、彼女とカウントダウンできるように運んでもらえるようにするけど」って飴を出してきた。
さすがに伊達に俺のマネージャーをやってないな・・・
「・・・わかった。その話受けるよ。結衣の件頼んだよ」って返事をした。
「ありがとうね。10時に迎えに来ます」ってニコニコ顔で白石さんは部屋を出て行った。
多少のため息と、結衣と一緒に過ごせることがわかり、にやけながら朝食を取った。
開始の時間まではだいぶある、俺は結衣にメールすることにした。
”今何してる?昼ごろ会えないかな”簡単な内容で・・・送信。
しばらくすると結衣から返事が来る”むり!忙しすぎ ヘルプ ミー”内容を見て思わず苦笑する。
返信”了解。無理しないように。夜電話する”って送った。
ホテルの窓の外を見ながらまどろんでいると、ドアをノックする音が聞こえた。ノックの後「白石です」って声もする。
ドアを開けると「もうすぐ時間です。準備しましょう」って衣装を持って部屋に入ってきた。
衣装は最新のスキーウェアーだった。早速着替えて結衣のプレゼントの帽子をかぶりスキーサングラスをかけて部屋を出て行った。
イベント会場の控え室に着くと、佐橋さんが「おはようございます。ナイター追加の件ありがとうございました。よろしくおねがいします」って頭を下げる。
周りのスタッフ達も「おねがいします」って言ってきた。「いいえ、こちらこそ おねがいします」って挨拶しスタンバイに入る。
控え室で待っていると、外で司会のお姉さんが話す声が聞こえる。外はダイブ盛り上がっているようだ。
しばらくすると、司会者が俺を呼んだ。
ステージに上がると、大きな拍手に包まれた。ゲリラ的に開催しているにもかかわらず大勢のお客さんが詰め掛けていた。
「皆さん。今日は○○高原の年越しイベントに参加ありがとうございます。皆さんで盛り上がりましょう」って挨拶をした。
沢山の拍手に包まれてイベントが始まった。
お客さんとの触れ合いも多く思ったより盛り上がって楽しく午前の部が終わった。
昼食時は結衣がアルバイトしているペンションでとる事になっていた。
白石さん結構気を使ってかって頑張ってくれているようだ
ペンションの応接室で休憩しているとドアがノックされる。
「どうぞ」って返事をすると、食事を持って結衣が顔を出した。
ニコニコ微笑んで結衣は、開口一番「オーナー夫人が一緒にって言ってくれた」って言った。
びっくりして「夫人って俺達の関係を知ってるのかな?」って結衣に尋ねた。
「ううん。全部は知らないはずだよ、でも私がモデルやってることは、ばれちゃったけれど、たぶん知り合いだって程度だと思っているはず。」って答えてくれた。
「モデルの件は全員にばれちゃった?」って聞くと「ペンションの騒ぎで皆に問い詰められちゃって、仕方がなく・・・」口ごもって言う。
「いいよ、俺達が夫婦って事さえバラなきゃ」って苦笑しながら言った。
そして食事中に結衣が「今日はお客さんは少なめだったから昨日よりは助かったわ」ってホッとした顔で話してくれた。
そして二人で昼食を食べて結衣は俺にチュウをして「じゃ、今夜ね」って部屋を出て行った。
結衣とのデートを思い「よし!次は午後の部だ」って気合を入れた。
午後の部もスムーズに終わり、夜の部の前に夕食だけどさすがに今度は結衣とは無理だった様だ。
夕食は青年会の人たちととる事になっていて様で、宿泊しているホテルの宴会室へ案内された。
夕食はナイターの事もあり、打ち合わせを行いながら食事を進めた。
ある一部の人はカウントダウンもやりたがっていた様だが、代表の人を含め家族志向が強いようでほとんどの人が家族と一緒に年越しするって言った。
「家族の団欒っていいですね」」ってしみじみ思った。
青年団の一人が「そういえば、HIROさんのご家族は?この時期も仕事ですと家族や恋人にも合えませんよね」って言ってきた。
「いいえ、いつもは家族と居ますが今回は特別ですよ」って言った。その通りで俺はこの時期には必ず家族と一緒に過ごす習慣だった。
まあ、結衣と結婚してからは少しは変化があって、そして今年はこんなんだものなあ・・・って心で思った。
でもちゃんと今年も結衣と一緒に年越しできそうで、少しお母さんにありがとうと思った。
ナイターイベントも大きなトラブルなく進んで終わり、後は結衣を待つだけに成った。