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白い恋人たち(アルバイト本番編 その1 )

白い恋人たち(アルバイト本番編 その1 )


ピピピ目覚まし時計の音がする。私は手を伸ばしてスイッチを切ると、いつもの背中に人肌の暖かさがない。


もぞもぞと布団の中を探り、手を握る。「あれ?」感覚が違う、いつものガッチリした手でなく、私と同じくらいだ。


思わず手を離し、慌ててその方向を見ると、奈緒子が寝ていた。


「ああ・・・そういえば、奈緒子たちと志賀高原のペンションにアルバイトに来たんだ」って心でつぶやき、ゆっくりと布団の中から出た。


パジャマを着替えて、顔を洗いにいこうとすると、奈緒子が目を覚ました。「おはよう・・」寝ぼけ眼で奈緒子が挨拶した。


「おはよう。六時だよ。どうする?・・・佐織たちともう少し寝る?それとも皆を起こす?」って聞いた。


「あんたが戻ってくるまでは寝るわ。戻ってきたら全員を起こしてね」って言って、布団をかぶった。「わかったわ」って小声で答えて洗面所に向かった。


冷たい水で顔を洗っていると、しっかり目が覚める。後ろから「あら、結衣ちゃん早いわね」って声をかけられた。


振り向くと、オーナー夫人の佳代子さんが立っていた。「おはようございます」って挨拶すると「おはよう。奈緒子たちは?」って聞いてきた。


「奈緒子は私が戻ったら起こしてねって言って二度寝してます」って言うと「あいも変わらずね」って少し笑った。


私は「奈緒子たちを起こしたら、朝食のお手伝いします」って言うと「悪いわね、奈緒子とは大違いだわ」って笑いながら「じゃ、下に下りてきて」って言って佳代子さんは階段を下りていった。


さっそく奈緒子たちを起こすと「私は、先に行くね」って部屋を出て厨房に向かった。


奈緒子たちは、「え・・・」寝ぼけ眼で結衣を見送った。裕未が「さあ起きよう」って掛け声をかけて、でものろのろと布団から這い出した。


厨房に着くと、宿泊者の朝食の準備でバタバタしていた。「おはようございます」って声をかけると皆さんが口々に「おはよう」って挨拶してきた。


「すみません、私は何をやればいいのでしょうか」って尋ねると、おやじさんが「あれ?朝食手伝ってくれるの?」って言う。


「もちろんです。何からはじめます?」って言うと、「ごめん、まずテーブルを拭いてから、宿泊者の看板を置いてくれるかな。場所と看板は、そこの事務机の上に置いてあるから」って、指示してくれた。


「はい。わかりました」って、私は早速、テーブルを拭くべく準備を始めた。


それが終わると、今度はテーブルに食器の準備を整える。そのころになったら、奈緒子たちが「おはよう」って言いながら降りてきた。


佳代子さんが「結衣ちゃん、先に奈緒子たちと朝食を済ませて、お手伝いをお願いね」って、私たちの朝食の用意をし始めた。


私が、運ぶのを手伝っていると、奈緒子たちも慌てて食事を運んでそして「いただきます」って朝食を食べ始めた。


食べている間に、佳代子さんが「奈緒子は一度売店やったことあったね。だから売店よろしく。結衣ちゃんはそのまま宿泊者の朝食の準備の後はレストランのモーニングのウエイトレスをお願い。裕未ちゃんと佐織ちゃんも同じくウエイトレスさんやって貰おうかな」って、てきぱき指示をした。


ここのレストランはゲレンデ内レストランはセルフタイプがほとんどだけど、ここは接客式なのです。なぜかって言うとオーナーのこだわだそうだ。


私は宿泊者の朝食の準備が終わると、ウエイトレス用の衣装に着替えるため裕未たちと一緒に衣裳部屋に行った。


佐織が「メイド服かな」って言うもので、私は文化祭を思い出してしまった。ロッカーを開けるとメイド服ほどないけど、可愛いウエイトレスさん用の衣装が入っていた。


どっちかというと、ファミレスの衣装に似てた。三人して着替えて「この服結構可愛いね」って皆で話しながら店に出て行った。


佳代子さんが私たちに「いいわね。皆似合って可愛いよ」って褒めてくれた。三人にウエイトレスの経験を聞かれた。


私は「文化祭で少しやったぐらいで、お店の経験は有りません」って答えた。


裕未は「私。一年生の夏休みと冬休みに**のファミレスでアルバイトしてました」って言うと。「よかった。経験者さんがいると説明が少なくてすむからね」って、「じゃ貴女はレジをメインにお願いね」ってレジを手で指した。


佐織は「私はレストランじゃないけどお母さんの実家が喫茶店なので時々手伝ってます」って言う。


佳代子さんは「これまたびっくり。奈緒子っていいメンバーを集めていたのね」って笑った。


厨房とレストランの間で、お客さんの挨拶などを教わってから、三人でレストランの配置に着いた。


9時に開店すると、徐々にお客さんが入ってくる。「いらっしゃいませ」掛け声をかけて座ったところで、お水を持って行き注文をとる。


裕未や佐織は堂に入って動きもスムーズだ。私は経験がないので、おろおろ状態で挨拶や注文をとる。


しばらくすると、やたらと私によく指名がかかる。心で「え~・・・また」って思いながらも、顔は微笑を崩さず注文をとった。


おろおろの私を佐織がフォローしてくれる。あるテーブルに注文の品を持ってゆくと「名前何って言うの、君って高校生?」って質問するのが多くなる。


そんな時も、佐織が「彼女は彼氏がいますので、だめですよ」って私の左手を見せてけん制してくれる。


10時半に休憩を取ると、佳代子さんが「結衣ちゃん人気が有るわね。ナンパ野郎は大変だと思うけど、うまく断ってね」って苦笑していった。


でも心の中では「これで売り上げ倍増だわ」ってほくそ笑んだが、そんなのは序盤戦だけとは佳代子さんたちも予想できなかった。


お店に戻ると、裕未が寄ってきて「結衣。あんたの指名が多すぎ、そこらかしこで”あの子は?どうした”って聞かれ続けよ」ってため息をついた。


昼前からは地元の女子高生が来て私たちと交代した。地元の高校生たちは「今日は少し人が多いね。お正月休み言っても多すぎの気がする。去年はこんなじゃなかったもの」ってびっくりする。


でも昼ごろになると落ち着きを見せた。私たちは「早めに昼食を取ったら遊びに行っていいよ」って言われた。


大広間で昼食を取った私たちはスキーの準備をして、外に出た。


おじさんたちに貸しスキーを用意してもらい、意気揚々としてゲレンデに向かった。


リフトのフリーパスで滑りたい放題なんて思ったが、四人とも初心者の域を出ず尻餅の連続だった。


今年はよく冷えてゲレンデはパウダースノー状態で尻餅をついても痛くなく、四人でキャッキャいいながら楽しんだ。


四時過ぎて戻ると、女子高生たちが疲れた様子でため息をついていた。


昨日友達になった翔子ちゃんが理由を話してくれた。


「今日はね。いつもより大勢の人が訪れたんだけど、なぜか多くの人がキョロキョロしてたのよ。そしてね「午前中にいた髪の長い子はどうした」って、私たちに尋ねるのよ。私たちはあまり事情を知らないから「わかりません」って言うんだけど、注文を聞くたびにいろいろな人が言うので参っちゃった」ってお手上げのポーズをとる。


「まあ、私たちもナンパで声を掛けられるけどこんな経験は初めてよ」って溜息をついた。


「あっと」周りが暗い・・・私は度付きサングラスから丸めがねにかけ掛ける。


祥子の友人の明美さんが、私を見て「あんた。どこかで見たような・・・」って言うと、奈緒子が「長い髪は結構いるから間違えやすいよ」ってフォローしてくれた。


私が、ジュジュのモデルをしていることは奈緒子しか知らないし、皆に言わないでお願いしたから話を違う方向に振ろうとしてくれた。


でも、私が着ているウェアーを見て「これって、コウノジュンデザインじゃない。それも昨日発表したばかりのはずなのにどうしてあなたが着ているの?」って今度は違う疑問をなぜかけた。


「これはお義母さんに貰ったんだけど」って言うと。明美さんが「お母さん?・・・こんなのが手に入るってお仕事は?」って聞いてきた。


しまった・・・私は何も考えずお義母さんから受け取って着ていた。ゲレンデにいる時に周りから見られているのは少しは気づいたけど有名デザイナーのウェアーだとは、気づきもしなかった。


慌てて「衣料関係やってるので手に入ったんじゃないかな」って言うと。「そうなの?」って疑問を持ちながらも、なんとか納得したみたいだった。


彼女たちの仕事は上がりなので「後よろしくね」って、帰って行った。


ここはナイター設備もあるので宿泊客だけでなくナイターのお客さんも立ち寄るので裕未と佐織がレストランを手伝い、私は奈緒子に売店の仕事を教えてもらい、二人して接客にあたった。


ほとんどは明日帰る宿泊のお客さんたちで奈緒子のに教えてもらった、レジの扱いで詰まりながらも対応した。


こんな具合で、何とか一日目をクリアーした。


全員が結構疲れたため、テレビを見ることもなく、早々に眠りに入った。でも奈緒子だけは佳代子さんに呼び出されて下に下りて行った。


下では「奈緒ちゃん。彼女ってどういう人?明日から少し考えないといけないみたいだけど・・・」って結衣の事を奈緒子に尋ねる。


「佳代子おばさん。実は彼女は・・・」











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