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クリスマスイブの夜(その1)

クリスマスイブの夜(その1)


今日はイブなんだけど、ひろくんは朝から仕事があるんだって、だいぶ前から決められていたらしく2時ぐらいまで掛かるらしい。こっちにとっては好都合だった。


ひろくんが出かけた後、慌てて、ケーキ作りに取り掛かる。薫から教授を受けたレシピを見ながら作業を進める。


薫の家で一度作ったので、何とか午前中にはケーキを作り終えた。そして少し早めに昼食をして、タクシーを奮発して予約してあるホテルへと向かった。


ホテル内に入って、受付に向かう途中に横から「葵さん」って声を掛けられる。「え?」横を向くと、見覚えがある人が立っていた。


そして「葵さん。今日はどうしてここに?」って聞いてきた。「え~っと、鳳 高志朗さんですよね。」って確認する。


「光栄だね。ちゃんと名前を覚えてもらっていて」って、微笑んだ。


「今日は、ここに予約を入れたのですけど、食事の後にこれを出すようにお願いがあって・・・」ってリボンに包んだ白い四角い箱を見せた。


鳳さんは「それ何?」って言ったので、真っ赤になりながら「手作りケーキです」って答えた。


「ひろきくんが喜びそうだね」ってフロントに行って、マネージャーさんを呼び出した。


私は、マネージャーさんに厨房の入り口まで連れて行かれて、ここで待つように言われる。


少し待つと、中から高い帽子をかぶったカッコいい人が現われた。彼は私を見るなり「白鳥 葵ちゃんだね」って言われて、キョトンとしちゃった。


そして「本日のスペシャルは君だったんだ」だとも言った。私の頭の上で???が飛んでいる。


「ハハハ。眼鏡を掛けても判るよ。ジュジュのモデルさんだね。パーティーで一度見たよ。HIROと一緒だったね。」って言われる。私は、パッと赤くなってしまった。


「それかな?手作り品は」って、私の持っている箱を指した。私は「失礼なのはわかっていますがディナーの最後にこれをお願い出来ませんでしょうか」って、頭を下げる。


料理長さんは「マネージャーから聞いてるよ。中を見ていいかな」って言ったきた。「お見せできるできばえではないのですが・・・」って、とりあえず手渡す。


彼は、リボンを解いてふたを取る。にこっと笑って「いい出来じゃないですか、素人離れの出来ですよ」って褒めてくれた。


「大事に預かります」って再びリボンをすると、私のケーキを持って厨房に戻って行った。私は「お願いします」って頭を下げた。


マネージャさんに今一度ディナー後の約束をお願いして、一度マンションに戻ることにした。私は鳳さんとマネージャーさんに見送られて、帰路についた。


マンションに帰ると、私はひろくんと私の一泊分の用意を整え、ひろくんからの連絡を待つことにした。


そして三時前にひろくんより携帯が入った。「結衣。終わったよ、何処で待ち合わせする?」って聞いてきた。


「駅前のロータリーで」って答えると、「了解。着いたら連絡するよ。それまでは必ずマンションに居るように」って強く念を押された。


私は、待ち合わせではいつも早めに着いて、待ち合わせでナンパされちゃうから、「必ず相手を待たせるようにしろ」ってこの前のナンパ事件でひろくんからお達しは出ちゃった。


私は、素直にひろくんからの連絡を待つことにした。




ひろきサイド


今日はクリスマスイブだ。今回は結衣が仕切ってくれているんだ。俺は午前中は事務所に用事があるのでマンションを早めに出た。


結衣の文化祭以来、芸能活動は完全に休止状態になっている。今日は活動をどうするかの打ち合わせでマネージャーと社長のお話し合いだ。


マネージャーの白石さんは「HIRO。あんまり活動が少ないから、私が新人を引き受けなければならなくなっちゃたじゃない」って愚痴を言う。


でも社長は、お袋とのつながりがあるのである程度は無理を言っても、目をつぶってくれる。


結局は俺が結衣への心配で、もうしばらくは休止することにした。「白石さん。申し訳ない」って頭を下げた。


白石さんは、呆れ顔で「わかったわ」って、苦笑いをした。


帰り際に社長から「春休みぐらいに奥さんと、もう一回CM取りをしたいが、考えておいてくれ」って言われ、「わかりました」って答えると、「奥さんの説得は任せる」って、手を合わせるまねをしてから、「よいクリスマスを」って言われて事務所を出た。


車にエンジンをかけてから、結衣に電話を入れる。「結衣。終わったよ、何処で待ち合わせする?」って入れると、「駅前のロータリーで」って、答えた。


待ち合わせをするとすぐにナンパされるらしい。結衣が心配でたまらない。思わず「了解。着いたら連絡するよ。それまでは必ずマンションに居るように」って強く念を押した。


「さて行くか」って、レバーをDレンジに入れて、軽くアクセルを踏んだ。



ひろきサイド終わり





携帯電話が鳴り始める、携帯を見ると「ひろくん」だ。慌てて通話ボタンを押し「もしもし」って話しかける。


「もうすぐ、駅のロータリーに着く。来ていいぞ」って、ひろくんから電話が入った。


私は、ひろくんが初めての彼氏だし、すぐ同棲してあっという間に結婚しちゃったから、待ち合わせてのデートはしたことがなく、待ち合わせに憧れているんだ。


本当は、私が先にいて、ひろくんを見つけて手を振りたかったんだけど、「絶対に駄目」って却下されてしまった。


仕方がなく、私が待っている、ひろくんに駆け寄るって事であきらめることにした。


電話が掛かってきたので、戸締り確認と玄関に鍵をかけてマンションを出た。


ガラガラガラ、私は、泊まりの衣装を入れたウォーキングバックを引きずりながら、駅へと向かう。


今日は、お義母さんから貰った、ホワイトカラーのワンピースに白色のコートを羽織って、しかもめったにしないお化粧までした。もちろん眼鏡でなくコンタクトで髪も大人びた風に少し巻いてみた。


駅に近づくにつれ、なぜか視線が痛い、なにげに横を向くと男の人が慌てて視線をずらす。あれれ?「まあいいか」って、駅のロータリーで待つ、ひろくんの元に早足で進んだ。


駅のロータリーが見えるところまで来ると、車を降りて私を待つ、ひろくんの姿が見えた。


私が手を上げて、ひろくんに知らせようとする前に、私の前に同い年ぐらいの女の二人組みが行く手をさえぎって「あの・・・白鳥 葵さんですよね」って、聞かれた。


私は、一瞬ビク・・ってしたけど、「ええ」って答えた。すると彼女たちは「握手してください」って右手を出してきた。


戸惑いながらも、握手すると彼女たちは感激で目を潤ませて「これからも、頑張ってください」って励まされちゃった。


さらに少し進むと何人かの女の子たちに囲まれてしまった。全員に握手をすると、思わずため息が出た。


何気に、ひろくんの方を見ると、苦笑しているひろくんが見えた。慌てて「用事がありますので」って、ひろくんの元に駆け寄る。


ひろくんの元に駆け寄った私は言いたかった言葉(恋人を待たせたときに言う台詞)を言った。「ごめんなさい。待たせちゃって、ずいぶん待たせてごめんなさい」って、頭を下げた。


下を向いた私は、ニヤニヤしながら心の中で「これを言いたかったんだね」って思った。でも本当はひろくんを待って「ううん。そんなに待ってないよ」って言いたかったんだけど、それは諦める事にした。


ひろくんは私の持ってきたウォーキングバックをトランクへ積み込むと、助手席のドアを開けてくれた。


「ありがとう」って言って、車に乗り込むと、ドアを閉めてすばやく運転席に乗り込み、車をスタートさせた。


そして「奥様。行き先は?」って、聞いてきた。私は、今日泊まるホテルの近くのテーマパークの名を告げた。


このテーマパークは恋人たちの為にあるようなテーマパークで一度行って見たかったんだ。


チケットを見せて、中に入ると大勢のカップルでにぎわっていた。私は、ひろくんの手を引っ張ってテーマパーク内を一杯回った。


あたりが暗くなる。時計を見ると17時を過ぎていた。「ひろくん。あのホテルを予約してあるの」って、クリスマスイルミネーションに輝くホテルを指差して言った。


「いいところが取れたみたいだね」って、ひろくんが微笑むと、体が火照って胸がキュンって締め付けられる思いをする。


「がんばって、電話したんだ」って、胸を張って言った。「行きましょう」って、ひろくんの手を握って出口に向かって歩き始めた。


ひろくんも私が握った手をしっかり握り返してきた。心臓がドキドキして思わず早歩きになっちゃった。


ホテルの玄関に付くと、ベルボーイさんが私たちの荷物を持ってフロントに案内された。


フロントに「予約していた、葵ですが」って告げると、「葵 夫妻さんですね。予約受けたまっております。この書類を記入ください」って言われ、書類に記入した。


マネージャーさんからカードキーを渡され「ディナーは19時です展望レストランへお越しください」って言われ、ベルボーイさんに部屋まで案内された。


私は、ビクビクでベルボーイさんの後を歩く。でも、ひろくんは余裕たっぷりにしていた。こんな高級ホテルは初めてでオドオドしちゃうけどひろくんは慣れているみたい。りんとしてカッコいい。


部屋に入ると、超豪華だった。予約を入れた部屋はロイヤルスイートでも一番いいスペシャルスイートの部屋だった。この部屋しか空いていなかったんだけどね。


私たちは、早速着替えて、展望レストランへと向かった。私は、お義母さんに「これにしなさい」って、言われた真っ赤なパーティードレスを着た。背中が大きく開いてかなり恥ずかしい・・・。必死で大人びるような化粧をした。(お義母さんに教わったように)


ひろくんは軽いジャケットを羽織っているだけだけど・・・かっこいい。HIROと先生の中間ぐらいの感じで、着替えて出てきたときはカッコよすぎてしばらく固まった。



ひろきサイド


俺が、着替えて待っていると、結衣が着替えて出てきた。結衣はなんと真っ赤な衣装を着て現われた。普段は子供っぽいが今回は少しは大人びた格好だった。


やばい・・・思わず抱きしめたくなってしまった。今日は結衣が仕切るんだ・・・おとなしくしよう。


「いきましょう」って言う、結衣をエスコートして展望レストランへと向かった。


ひろきサイド終わり



ひろくんに「いきましょう」って告げると「エスコートは夫の役目だからね」って、手を握って展望レストランまでエスコートしてくれた。


レストランに入り「葵です」って告げると、ウエイターさんが窓際の予約席に案内してくれた。


ウエイターさんが椅子を引いて、私たちが座ると「本日は当レストランをご利用いただきありがとうございます。お食事を用意いたしますがワインはどうなされますか」と聞いてきた。


思わずひろくんの顔を見ると、すこし笑って「私は、もらうが妻は飲めないので代わりの物を」って言ってくれた。


「解りました。しばらくお待ちください。今夜はピアニストの久保田さんがディナーに合わせてピアノを奏でますので、お楽しみにしていてください」ってウエイターさんは、頭を下げて戻っていった。


しばらくするとワインと私用のウーロン茶を持って来た。そして料理が運ばれて食事をはじめてからすこし経ってから、司会の人が挨拶をしてから久保田さんを紹介しクリスマスに合わせたメロディーを奏で始めた。


食事が終わり、ピアノの音を聞いていると最後の一曲が終わり、久保田さんが礼をしたので皆で拍手を送った。終わりの挨拶をした久保田さんは舞台を降りて、私達の方に歩いた来た。


開口一番「お久しぶりね。ひろきくんと結衣さん」って微笑みながら「すこしお邪魔していいかしら」って話しかけてきた。


「「お久しぶりです」」「問題ないです。お座りください」ってひろくんが告げると、「ありがとうね」って久保田さんがウエイターさんの引いた椅子に腰掛けた。


私は「前回は、急なお願いをありがとうございました」って、頭を下げた。「いいわよ、そんなこと。私は白鳥 葵のファンだからね」ってウインクした。


久保田さんとしばらくお話をした後、三人してレストランを後にした。出口で「では、また」ってお別れし、私たちは部屋に戻った。








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