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平和なひと時

平和なひと時


文化祭の大事件から三週間がたった。学園は平和を取り戻し、平凡に時が過ぎてゆく。


陸上大会への出場は今回の事件で、補欠だった私は出場を取りやめた。でも小澤姉妹はこんな事件の中、短距離で一位二位を独占し全国大会への出場を決めた。


やっぱり私のかなう人たちじゃなかったんだなんて思った。


変わったことは、毎日こぼれるくらいの手紙が私の靴箱に入っていることなんです。どうも里美が、有形無形に私に皆からのアプローチにブロックを掛けていたらしく、あまり気づかなかったが、里美が居なくなって一気に溢れて来た様で困惑しきりだ。


私が一人一人に断りの手紙を書いていると、後ろから声が「結衣はマメだね」って弘子が私が書く手紙を覗いて言った。


私は「だって、皆さん丁寧に書いてあるし、申し訳がないんだもん」って頬を膨らまして言う。


それを横目で見ていた薫が「それが、結衣の良い所だもんね」ってからかった。授業開始のベルとともに先生が教室に入ってきたので、私は慌てて手紙を机の下に閉まった。



今日は土曜日。いつもだと、ひろくんは陵の事務所に行くんだけど、今日と明日はお休みなんだって、久々にひろくんと長い間一緒に居られる。


私が昼食を何作ろうかと悩んでいると・・・。ひろくんが「お昼は外食しようか、それもたまには変わったところで」って私に言う。


「うん~・・・。」私は何気に、パッと閃く。「ひろくん。あのね、前に陸上大会の練習をやっていた時に行った食堂があるの、そこに行きたい」ってお願いした。


ひろくんは「それって、何処?」って聞いたので、以前行った食堂の話をする。「店の奥さんや旦那さんも親切でとっても旨い定食があるのよ」って言うと。


「そこって、たぶん十勝って言う店じゃないかな?旨いって聞いたことはあるけど一度も行ったことが無いんだ」って言ったので、私は「うん。そのお店だよ。ボリュウムがあって本当に旨いんだから」って言うと、ひろくんは「OK。昼はそこにしよう。おでかけの準備をして」って言ったので、私は慌てて準備を整えた。


私はラフなポロシャツにチェックのミニスカートにカーデガンって格好に着替えて、ひろくんの車で向かう。


私が「あの角を曲がるとすぐだよ」って、ひろくんに告げる。そして、お店の前に着くと駐車場が無い・・・。


私は「ひろくんちょっと待てて、私聞いてくる」って車を降りて店の中に入って行った。


「いらっしゃい」って、景気のいい掛け声で女将さんが挨拶した。私は「すみません。お店の駐車場ってありますか?」って尋ねる。


即座に「無いよ。内の店はは学生がメインだからね」って返事が返ってくる。私は、思わず「え~」って言ってしまう。


女将さんが「あれ?あんたは・・・結衣ちゃんだね」って言う。私は「はい。白鳥学園の葵 結衣です」って答えると。


女将さんは奥の厨房に向かって「あんた。家の所空いてるよね」って尋ねると、奥から「お!空いてるよ」って返事が返ってきた。


女将さんが「あんたは特別。この先に私んちがあるからそこの所にとめな」って言ってくれた。私は「すみません」ってひろくんの元に戻り駐車する場所を教えた。


駐車場に止めて二人で店の中に入ると、女将さんが、ひろくんを見て「いらっしゃい。あれ?結衣ちゃんの彼氏ってカッコいいね」って言われた。


私はもちろん、赤くなった。しかもその言葉に店のお客が反応し全員が私たちを見つめられ、さらに赤くなった。


女将さんが「そこの角が空いてるよ」って角の合い向き合いの席を示された。席に着くと女将さんがお茶を持ってきてくれて「なんにする?」って聞いてきた。


私は「十勝定食二つ。私はご飯少盛で」って言うと。女将さんが奥に向かって「十勝二つ。一つはご飯少で」って言うと、奥から「了解」って声が聞こえた。


出来上がりを待っていると、女将さんの大きな声が「加藤君!!あんた又たまねぎを出して」って声が聞こえた。


私は「あれれ・・・以前にも聞いたことがあるような・・・」そちら方を見ると、見覚えがある人が小さくなっていた。


ひろくんが思わず「くす」って笑った。そして「女将さんて体育会系だね」って私にこそっと言った。私は思わずうなずいた。


運ばれてきたお盆には以前と一緒でお茶の缶が載っていた。それは私とひろくん両方共だった。私が疑問の顔をすると、女将さんが「貴女には家の旦那から彼氏には私からだよ」って、ひろくんにウインクした。


ひろくんは「すみませんね。」って笑みを浮かべると、女将さんが「いい男は、微笑むとさらにいいね」ってさらっと言う。


十勝定食は以前と同様に美味しかった。もちろん、ひろくんも満足したらしい。「ごちそうさま」って店を出ようとすると、女将さんが「又来てね」って言われたので私は「又来ます」って店を出た。


ひろくんも「美味しかったよ。又来ようか」って言ってくれた。


この後、ショッピングモールへ行って色々買い物をして半日を過ごした。明日はテーマパークに連れて行ってくれるって言ってくれた。


テーマパークは思いのほか楽しく、ひろくんとのデートが楽しめた。


帰りに岩田君の居る病院にテーマパークのお土産を持って尋ねると、彼は順調に回復しているらしく、絵美が楽しそうに迎えたくれた。


彼らの両方の両親に付き合いを認められ、けなげ?に看病する絵美は「彼、大変な怪我をしたけど、そのおかげでお互いの両親にも付き合いも認められたし、彼を独占で来ちゃったし、怪我の功名?かな?」なんて思っていたより元気なので、私の胸のつかえがどんどん無くなってゆく。


彼は12月中旬には退院できそうで、絵美は「クリスマスに間に合う」って喜んでいた。クリスマスイブの夜は二人で過ごすんだって(しかも、お互いの両親の公認だって)、絵美は頬を染めて、教えてくれた。


月曜日が始まる。学園で靴箱を開けると又手紙の束が・・・いつもの平和な時間が過ぎてゆく・・・。





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