文化祭(一日目)
文化祭(一日目)
今日は土曜日。文化祭の一日目が始まる。もちろん一日目は学園関係者だけで行うことになっている。
この日の結果で次の日曜の一般公開に向けて備える計画を練り直すことをするんだ。
流行っていないクラスは修正を施して、次の日に備えて、流行っているクラスは商品の補充やお客さんの流れをスムーズにするように工夫を凝らす。
もちろん私たちのクラスも同様にするんだ。店が終わった後に全員で対策を考えるために反省会を行うんだけど・・・。
私たちは朝早くから準備を整える。男子生徒は女子生徒よりかなり早く登校して教室の擬装を行うんだ。でも中には女子の一部は早めに着て手伝いをする。
私たちは女子は男子が準備してくれた隣の教室でメイド服に着替えをする事になっているんだ。
もちろん窓には遮光カーテンを施し、入り口のドアは二重にして着替えを見られないようにしてある。
教室の中にはハンガー掛けが用意してあり、そのハンガーには全員分の衣装が掛けてある。
現在は前半の部の人でごった返している。でも衣装を製作したスクールの練習生の人が手伝いをしてくれるので凄く助かる。
練習生の人は、ほとんどの人が私たちのお姉さんぐらいの年齢で、皆、和気藹々と和みながら着替えをしている。
でも私だけは、なぜか仮縫いした一之瀬さん・林さん・吉川さんが専属で着替えを手伝ってくれる・・・っていうか、私はほとんど立っているだけ状態だけだった。
着替えた順に隣の喫茶店に擬装した教室へと帰ってゆくと、教室に戻ると男子生徒から感激の声が上がる。
実行委員の澤田君が「こら!お前ら早く準備をしないか」って怒る。
裏方担当の男子生徒は「ちぇ」って舌打ちしながら裏方の準備に戻っていった。
学園長が見守る中、白鳥学園の文化祭が始まる。やはり一番人気は、私たち二年A組のコスプレ喫茶が集客が多いって言うか・・・多すぎる。
教室の前の廊下がお客さんでごった返している。収拾が付きそうもない。学園長さんが頭を抱えてしまった。
今回、私は裏方は免除?になっているって言うか、料理を作るのはやらしてもらえないんだ。
皆に「貴女はは喫茶の看板娘だから出ずっぱりで宜しくね」って言われてしまい。私は前後半とも全部店に出ずっぱりとなってしまった。
「あ~ん、どこへもいけないよ~ん」って心で泣いた。「休憩時間に抜け出して絶対遊びに行ってやるんだ」ってもちろん心で誓った。
さらに今回の男性陣は料理上手が多く裏方は充実した状態で料理の不得意者が人員整理に当たるように配置した。
でも今回は人員整理が追いつかず、先生に相談して昼の少し前からは余裕のある運動部からのある程度の応援者をお願いして、何とか整理が付く状態になった。
もちろん運動部の人たちが人員整理の応援者を決めるのに熾烈な争いをしていたのは私の知るところではなかった。
でも大きな騒ぎはなかったのは、柔道部からに助っ人の用心棒さん二人がにらみを効かしてもらったおかげの様だった。
次の日も来てくれるらしい。しかも今日は無理らしいが明日の公開日はひろくんもほぼ一日中張り付いてくれるんだそうだ。
一日目なのに、あまりにも大勢の人が押し寄せたので、食材から写真用紙まで次の日の分まで食い込んでしまった。
慌てて明日の分の追加の手配しなければならなくって、実行委員の澤田君はてんやわんやになってしまった。
しかも彼は写真係りもやっていたので、慌てて明日の応援を頼んでいた写真部に急遽応援を依頼して急場をしのいだ。
メイド喫茶の内容は・・・。
まず廊下の長蛇の列に並んで順番を待つ、出口から人が出て行くとその分だけ入店が出来る。
店に入ると空いているメイドさんにせりふを言われる「お帰りなさい。ご主人様」って席に案内される。
メニューには飲み物と食べ物がありそれを注文してから好きな衣装を着たメイドさんと一緒に写真を撮ることができる。
もちろん個人を指名することは出来ない事にしてあるんだ。でないと特定の人に集中する恐れがあるので、ひいきができてすこししか選ばれない人が可愛そうだ。
その後飲食した後でプリントした写真を受け取って店を出る。これが一連の流れなのだけど、もちろん私が着ている衣装の人気が一番高いので長蛇の列になる。
私と同じ衣装を着た沙織なんかは写されるのが好きみたいで「私が、思った通りなのだわ。ラッキー」って喜んでいたけど。もう一人の佑香は逆でため息ばかり付いていた。
私たちの列が長すぎるのか、あきらめて他の衣装に変更する人もかなり発生した。
私は午前一回午後二回の休憩を取らしてもらった。お昼の休憩で制服に着替えて、こそっと抜けでしてよそのクラスを覗こうとしたら、私の周りに大勢が集まり身動きができなくなってしまった。もちろん澤田君に怒られたのは言うまでもない。
今回の衣装はすばらしい出来で、しかもどの衣装も評判が良く、どの衣装着た子も皆引っ張りだこで、ごった返した写真撮影となちゃた。特に私なんかは接待がほとんど出来ず、大半を写真撮影に費やす事になってしまった。
その為一日目が終了後。通常はクラス内だけで行う対策会議を、学園長やお手伝いしてくれた運動部などを交えた、緊急対策会を開いて、明日の一般公開の対策を練る事になってしまった。
澤田君が説明に「今日一日だけの来客は私の想定の3倍ぐらい来てしまいました。明日はどれくらいの集客なのか予想がつきません。」ってうな垂れた。
人員整理をしていた、横屋君が「現状では明日はたぶんお客さんの整理は不可能に近いと思います」って追い討ち話をする。
悩んでいた学園長が「場所を変更して体育館を使いましょう。ここならばかなりの集客が可能のはずです」って提案してくれた。
澤田君は「場所は良いですが・・・配置や擬装が難しく飾り付けのパーツや人員も足りなく思います」って悩みを告げる。
少しの沈黙の後、演劇部の部長さんが「飾り付けのパーツやパーテェーションは私たちが供給しましょう。学園長、学園の備品も供給お願いします。人員は運動部さんでお願いするのが良いのでは?」って提案してくれた。
運動部の人たちも「その案に賛成だね。時間がないからすぐに取り掛かろう。」って腰を上げた。
学園長が笑いながら「その案で行きましょう。園もバックアップします。」って学園長のGOサインで、拍手が起きる。
実行委員の澤田君が「皆さん。よろしくお願いします。」って頭を下げた。私たち女子生徒の大半はどんどん規模が大きくなる事でビックリし声が出ない。
弘子と薫が私を肘で突いて小声で「さすがに、白鳥 葵ちゃん効果だね」って冷やかす。私は苦笑するしかなかった。
学園長の「では、皆さん明日の公開に向けて頑張ってください」って会を締めくくった。
総動員で体育館をメイド喫茶にする様に作業を進めた。特に男子生徒の働きが凄い、後で御褒美があるらしい。
いつの間にか学年を超えて一杯人が集まり、夜遅くまで準備を行い。何とか体裁を整えることができた。
もちろん帰りはひろくんに送ってもらって帰った。途中の夕食をファミレスで取る、奥さんなのにこの所夕食が作れなくて申し訳ない。
でも、ひろくんに励まされて明日も頑張ろうと気合が入った。